第6話 五龍の中華圏 ② 黄龍と黒龍の中原

 紀元前11世紀、殷王朝時代末期、中岳嵩山黄龍観、北岳恒山黒龍観、西岳華山白龍観、東岳泰山青龍観そして南岳衡山赤龍観の直上に黄龍、黒龍、白龍、青龍、赤龍が降臨。献納信者と一般信者に対して、五龍がお告げを知らせた。


 中岳嵩山黄龍観黄龍観直上、黄龍が降臨。

 黄龍は、お告げを知らせた。

 けれど献納信者や一般信者には黄龍のお告げは聞こえない。

 しかし、鄭邑黄龍鄭邑分観にいた鄭氏吾と葵には、黄龍のお告げは聞こえていた。


 黄龍のお告げ

「我ら五龍は天、地、海の神より東方中華圏の水循環の司る任務を与えられた、霊  獣である。

 我ら五龍を崇敬する者達よ、三つの大きな河(黄河、淮河、長江)、北方恒山、南方衡山、東方泰山、西方華山そして中華圏中央嵩山。

 これらに治山治水を行い、労力と知恵を提供せよ!

さすれば五穀豊穣が期待できょう…」


 五岳直上に降臨した五龍はお告げをらせると姿を消した。


 中原の中岳嵩山黄龍観で開催されていた秋の農耕祭。黄龍観献納信者たちには、黄龍のお告げは聞こえない。

 彼らは、黄龍霊廟に集められた。

 そこに黄龍観主土黄どおうと導師寿黄がやって来た。2人の導師は、背中に五龍観の「五つ巴の紋章」を背負った黄色い道服を身にまとっています。


 「黄龍様のお告げです」

 と観主土黄が語り始めた。

 「我々黄龍観と信者の皆様には使命が授けられました。殷の治山治水事業が頓挫した現状において、中原周辺の黄河下流域や洛河らくが漳河しょうが流域、中岳嵩山周辺山々に治山治水を実行することです」⒈⒉⒊

 「黄龍観と信者の皆様が知恵と労力を提供し、黄河下流域や山岳地帯の植生を保つことが重要です。黄龍様から期限や治山治水の具体的方法についてのお告げはありませんでした」

 「黄龍観と信者の皆様が、知恵と労力を提供する事」  

 「つまり全員の力を結集し、黄河下流域とその支流の治水と、中岳嵩山付近の植生を失った山に、治山を実行し使命を果たすこと」              

 「どうすればいいのか?」

 ある信者が聞きました。

 「そのことは、三河川治水治山職工集団大頭の寿黄導師から話があります」

 寿黄導師が語り始めた。

 信者たちは、具体的な方法を求めています。

 

 導師寿黄がそれに答えました。

「皆さんには、治水治山で使用する護岸や土留め、農業灌漑用水路の岩や煉瓦を献納していただきたい。そして中原治水治山職工集団棟梁鄭の指示に従ってほしいのです。そのようにすることで、黄龍様のお告げの使命を実行したことになりま」


 龍観主土黄が付け加え。

「黄龍様のお告げの使命を実行するために、我が黄龍観の学問所に出家し、治山治水学を学び技術指導を志す若者を受け入れます」


「学問所を大きくして、食堂や寄宿舎の機能を大きくしましょうか」

 長距離交易商人中原梁氏が発言しまた。

「それはありがたいです」

 観主土黄が言った。


 梁氏は、黄龍廟の外へ出た。

 最後に黄龍観主土黄は、こう言った。

「鄭邑、鄭氏吾と葵は、春分の祭典の終り頃に黄龍観の学問所に出家させよと。

 黄龍様がお望みです」


 吾の父は驚いた、しかし。

「えっ!…よかろう…」

 鄭邑の領主鄭氏開は、肩を落としている。開は、黄龍観に息子を3人も出家させる事にショックを受けた。


 そして、五龍のお告げによって、最も商売を有利した者がいた。

 商機が来た!商機が来た!

 と梁氏は心の中で叫んでいた。

 長距離交易商人中原梁家の現当主は、沸き上がる強欲を必死でこらえて、黄龍観の山門まで下りて来た。


 山門の屋根には、黄龍と麒麟の木像が一対で祀ってあります。そこにキリン君が座っている。


「父上!我らは黄河、長江、淮河の物流を掌握しました!」

 梁氏はそう叫んだ。

 梁氏の取扱品目は絹織物、生糸、漆器、刻漆器、陶磁器、お茶、穀物、塩、鉄器、鉱物(金、銀、銅)などそして武器も取り扱っている。

 それら全て黄河、長江、淮河流域沿いの、五龍観の信者が生産した交易品や産物です。梁氏は、五龍観の信者の生産力を利用して梁氏は黄河、長江、淮河流域の物流をコントロールしようと考えた。

 「フフフ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」梁氏は笑い転げた。

 梁氏の様子を、山門の屋根からキリン君が、不思議そうに見つめていた。


 そして、鄭邑黄龍鄭邑分観にいた鄭氏吾と葵は黄龍のお告げを聞いていた。   

「黄龍様、僕と葵は春分の祭典の終り頃に黄、龍観の学問所に

 出家すればいいの?」

「そうだ」

「来年の春かぁ、現場の引継ぎ大変だなぁ…」と葵が言いました。

「吾、葵、我は待っておるぞ」

「お兄様、来年の春分に出家するの?」 

「ごめん詩…」 

「葵さんまで…淋しくなります…」

「詩、僕が出家したら根を詰めなくていいいよ、適当でいいからね」 

「兄上様…ありがとう」

 兄思に励ましの言葉を吾は、詩にも贈った。          


 北方恒山黒龍観でも秋の農耕祭が開催されていた。黒龍観献納信者たちは、北岳恒山こうざん黒龍観直上に響く、黒龍のお告げは聞こえません。

 彼らは黒龍廟に集められた、そこに黒龍観主辰星しんせいと中原 治水治山職工集団棟梁 鄭氏がやって来た。

 観主辰星は、背中に黒龍観の「一つ巴の紋章」を背負った黒い道服を身にまとっています。


「黒龍様のお告げです」

 観主辰星が語り始めました。

「黒龍様は我々黒龍観と信者の皆様に、使命が授けられました」

「殷の治山治水事業が頓挫した現状において、黄河中、下流域その支流汾河ふんが流域、清漳河流域の治水と、北岳恒山付近、また太行たいこう山脈付近の植生を失った山々に、治山を実行し使命を果たすこと」⒋⒊⒌

「我々と信者の皆様が、知恵と労力を提供する事。つまりここの全員の力を結集し        黄河中、下流域その支流に治山治水を実行し、使命を果たすことです。」

「また黒龍様から期限や治山治水の方法ついてのお告げは有りません」


「どうすればいいのか?」

 ある信者が聞きました。

 観主辰星が

「そのことは中原治水治山職工集団棟梁鄭から話があります」


 棟梁 鄭氏が話を始めた。

「冀州黄河北岸邑群の領主の皆さま、中華圏の交易品シルク絹織物の生産の安定生 産を目指すためには、原料である生糸を生産する養蚕農家が蚕餌桑畑を拡大し、耕作地を保全することが必要なでのす」

「皆さんに個別にお願いしている治水治山で使用する護岸や土留め、そして農業灌漑用水路の岩や煉瓦を献納してもらいたい」

「そうする事は、善を重ねて徳を積むことになります。そうすれば黒龍様のお告げの使命を実行したことになります」


「黄土高原はどうするのですか?」⒍

 漆器、刻漆器工房工匠現当主諸氏と陶磁器工房工匠現当主朱氏が問いかけた。

 彼らは、黄土高原の荒廃を止めるために、植林事業の苗木を黄龍観、黒龍観、白龍観に献納している。

「諸氏と朱氏は苗木を献納お願いしていますありがとうございます。我々五龍観が植林を行います」


 黒龍観主辰星が付け加えた。

「黒龍様のお告げの使命を実行するために人手が必要です。黄龍観の学問所に出家し治山治水学を学び技術指導を志す若者を受け入れます」


 そして最後に黒龍観主の辰星は言った。

「冀州魯邑の魯氏智と畢氏満と月は、春分の祭典の終り頃に黄龍観の学問所に出家させよと黒龍様がお望みです」

 「分かりました」

 冀州絹織物工房縫工匠現当主畢氏と文様工房門の工匠現当主魯氏創が

 答えました。

 魯邑領主魯氏は、息子の智に愛情が感じていないのでしょうか。


 冀州魯邑では魯氏英と智、畢氏満と月そしは、黒龍魯邑分観で黒龍のお告げを聞いていました。

「黒龍様、僕と満と月との3人は春分の祭典の終り頃に黄龍観の学問所に

 出家すればいいの?」

「そうだ」

「智、満、月の3人はこの魯邑の誇りだ」

 英がいいました。

 「兄上…」

「僕は、黄河北岸の治水現場で冀州がどういう状況にあるか見た。いずれ僕は、この魯邑を継ぐ。その時、魯邑人々や叔父上、工匠の親方たちのために尽力するよ。みんな!それぞれやり方でこの冀州のために力を尽くそうな!」

 「ハイ兄上!」

 「ハイ兄上様!」


 冀州黄河北岸魯邑子どもたちはみんな頼もしい。

 その様子を黒龍と玄武は見ていました。


「玄武、この子どもたちに黒龍観の将来を任せよう」

「4人共に英知が優れています」

「今すぐでも良いぞ」

「困ります!黒龍様」

「すまんすまん」


 第7話 五龍のお告げと中華圏 白龍と周国 つづく


 本文の『』は引用

 文末の数字は解説と引用

 第6話解説と引用を参照

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