第4話 白龍と少女
中原治水治山職工集団の棟梁に預けられていた、鄭氏三男
吾は、歳の近い二人の兄と仲が良く、讃と思の二人の兄を見送りに、黄河沿いの街道に来ていました。
「讃兄上、思兄上お気を付けてお元気で」
吾は、泣きそうになったが我慢しています。
「吾、いいかい根をつめるといけない適当でいいからね」
思は、吾に家事や幼いきょうだいを託すのは心苦しいので、吾を励ますつもりでした。
しかし「思兄上~」
吾は、兄の思にしがみ付き泣いた。
「ごめん吾を励ますつもりだったのに…」
吾は、顔を上げて満面の笑みで明るく
「僕も来年には出家します!」
二人の兄は「吾は頼もしいよ!」
兄の讃が吾に言いました。
「このままだと黄河下流の南岸邑は荒廃していくだけだ、だから僕たちは、
出家し治水治山学を勉強する」
また兄の思が
「父上も黄河南岸邑のお金持ちたちも、利己で動いている。それではダメだ。
もっと大きな視点で物事を判断しなければいけなないと僕は思う」
と吾に伝えた。
さらに思は
「僕たちは、黄河南岸邑のため、中原ため、何が出来るかを嵩山黄龍観の学問所
で勉強して来る」
そして吾は
「僕も黄河南岸の治水現場で何かを学びます兄上!」
よし吾!黄龍観で来年また会おう!
「ハイ!兄上様!行ってらっしゃい!」
二人の兄は、嵩山黄龍観へつづく『黄河南岸街道』を西に向かって行った。⒈
二人の兄の背中に、小さな光背が既に光っています。
そして吾は、黄河南岸の治水現場へ向かった。
紀元前11世紀初頭、殷王朝時代末期、ここは『黄河上流域』。⒉
『
葛邑の葛氏族は、隴西地域で薬草と生薬の研究する、『隴西生薬工房
領主葛氏は、『西岳華山白龍観』の献納信者で、葛邑に白龍観隴西分観を
領主葛氏の娘、
山桃は、薬草と生薬を研究し『
山桃は、「呪術では病人を治療できない」父領主の考えを引き継ぎ、薬草と生薬の研究を続けている。
そして山桃の夢は、病人のための生薬療養所を設立すること。
そのためには山桃は、中原の黄龍観の学問所に出家し、治山学や植物学を学びたいと思っている。
葛氏は、薬草取りに山に分け入る。その時の猛獣対策として葛氏は『狩猟民族』の
山桃も父と一緒に山に入る様になり、沢は山桃を恋するようになった。
沢の身長は1m70cm、目鼻口が大きく中央アジア系の顔です。
沢は、仕留めた虎の毛皮を着ていて、弓矢そして「虎の脊椎切り」と呼んでいる大鉈を持っている。
沢の頭部に、オリエント風の鉄兜をかぶり、両足と手首に鉄板入りの
そして皮の靴を履いていて靴底には、滑り止めの鋲を打ち込んでいる、それも武器になる。沢と野蒜は、山での動きは俊敏で名ハンター。
さて、7日に一度の頻度で山桃と父の葛氏は、薬草取りに山に分け入る。
ある日の事、いつもの様に野蒜の家を訪ねると…
流行感染症で沢一家は全滅していた。
沢の父母は、息を引き取っていた。しかし沢は、まだ息がある。
葛氏は、沢の父母に『悪鬼の
山桃と父は、沢を担架に乗せて、葛氏生薬生成所の薬草保存庫まで運んで、使っていない小さな倉庫に運び込んだ。
そして父と山桃は、まだ息がある沢の衣服を脱がし、衣服が悪鬼の祟りを払うため燃やしました。
山桃は、沢の汗を拭いて,暖かくして解熱効果の生薬を飲ませてやりました。
「苦い…」
「苦くても飲んで楽になるから」
これが沢と山桃の初めての会話です。
山桃は、沢の看病を続けて10日あまり沢は、回復に向かった。
けれど、沢はフラフラです。沢は、水以外何も食べていなかったが、それでも動こうとしていました。
「ダメ寝てなさい」
「お嬢さん…」
「何?」
山桃の手を握り
「ありがとう…好きです…」
沢は、山桃に感謝の気持ちと,
山桃に対する自分の思いを告白した。
山桃は、初めて人を癒した事に素直に感動しました。
そして山桃は、沢の告白を受け入れた。
「何か食べたい?」
「肉を食いたい…」
「だめよ!
「肉入れてください…」
「ダメだって!何も食べてないのにいきなり肉は」
「はい、お嬢様…」
山桃には従順な野生児沢です。
20日後、沢は山桃の看病のおかげで回復。
葛氏は、沢を生薬生成所の従者として雇いました。
沢は、亡くなった両親の墓に山桃と共に訪れた。
「だんな様とお嬢様には感謝しています」両親の墓に手を合わせる沢。
そして沢は、葛氏生薬生成所小さな倉庫に住む事を許された。
そこに度々通い夜を二人で過す山桃。
ある日の月夜、二人は満月を見ていました。
山桃は沢にこう切り出しました。
「私はね沢、薬草と生薬を研究して、将来は生薬療養所を設立することなの。
それで中原の黄龍観の学問所に出家し、治山学や植物学を学びたいと、
思っているの。どう思う沢?」
「あの~お嬢様…お嬢様の言う事は…
俺には、正直いつも解からないことばかりです…」
「そうなの?」
「けれど…病人の生薬療養所を設立する…のですか?それはすごい事だと
俺は思います。俺は、お嬢様の夢を応援したいと思います」
「じゃあ一緒に、中原の黄龍観に出家しようよ!沢!」
「中原の黄龍観って…何処ですか?」隴西しか知らない野生児沢。
「とお~い、ところよ!」
「はぁ…俺はお嬢様と一緒なら、どこでもついて行きお守りしますよ」
「沢ありがとう!」
山桃は、父に沢と一緒に出家する事を懇願した。父は渋々許可した。
山桃と沢は、3日に一度山に分け入り薬草取りに出かます。
二人は、生薬の研究を行う前や山に入る前に、必ず白龍観隴西分観で掃除を行い清め、白龍の木像のほこりを掃い清める事を習慣にしている。
山桃と沢の様子を、白龍木像に憑依した白龍が見つめています。
「白虎よ、我の木像の元に来るのだ!」⒑
白虎が降臨。
「仁愛ある山桃と狩猟民の男を守るのだ!」⒒
「仰せのままに致します白龍様!」
白龍は、白虎に二人を守るように命じた。
山桃と沢は、『トウキ』を採りに山奥に分け入ります。⒓
沢は、先ほどから獣の気配を感じ取っている。
それに突き刺す様な眼光を感じ取っている。
沢は、警戒し山桃を守ろうとしている。
「お嬢様、俺の後ろに居て下さい」
「どうしたの?」
「いいから絶対に動かないで下さい」
沢は、気配を感じる茂みの方向に矢を一本放った。
すると、鋭い眼光の持ち主が茂みよりゆっくりと姿を現す。
「現れたなトラだ」
若いトラが沢と山桃を狙っている。
怯える山桃
「お嬢様、俺の背中に乘って絶対に離れないで!しっかり掴まって下さい!」
「うん!」
山桃は、沢の背中にしがみ付く様に乗った。
「さあ来い!」
沢は、虎の脊椎切りの大鉈を抜いた。
沢とトラの睨み合い、緊張状態が暫く続いた。沢は、相手が動くまで待った。
その緊張状態を破ったのが、トラの方で沢と山桃目がけて突進して来た。
「もらった!」
沢は、トラの『正中線』に入り、トラの脊椎を目がけ大鉈を振り下ろそうとした。⒔
その瞬間「やめないか!」
その声と同時に、沢の動きが止まり、トラも動きが止まりました。
「どういう事だ!!」
沢は、何が起きたか理解出来ません。
巨大な白虎が降臨。
白虎は、トラと沢を霊力によって動きを止めた。
若トラを白虎は青い瞳で睨みました。
白虎にの怯える若トラ。
そして沢と山桃に白虎は
「この若トラは、縄張りを間違えた様だ」
すると、白く輝く光球と共に純白の白龍が降臨。
「白龍様です」
白虎は若トラを連れ何処かへ去った。
白龍が山桃に、こう伝えます。
「薬草と生薬を研究続け病人のための生薬療養所を設立する。
そのような仁愛を持つ者はいない」
「山桃よ。そなたに不老不死の身体を与える我と共に永遠の時を生きるのだ」
山桃は、生薬療養所の夢は叶わないものだと思っています。しかし白龍にその夢を褒められた事に喜びを感じた。
しかし山桃は「沢と一緒でなければ嫌です!」
山桃は拒否します。
「分かった山桃よ。その男もいつか不老不死の身体を与える。しかしその男は、
もう少し五つ徳を会得しなければいけない」
「白龍様、約束ですよ!」
「約束しょう。
狩猟民沢、仁愛ある山桃を守りそして山桃から五つ徳を学ぶの だ」
「えっ…はぁ…?」
沢は、白龍のいいつけが、よく分かりません。
こうして山桃は、白龍から不老不死の身体を与えられた。
白龍と山桃と沢との交流が始まる。
白龍は、ある計画を黄龍、黒龍、青龍そして赤龍と相談して実行しようとしています。その計画とは…
山桃と沢は、いずれ西岳華山白龍観の駐在修行者となります。
シルクロード出発点である雍州。山桃と沢は、シルクロードを通じて出会う異国の文化や人々とどう関わるのか?
山桃と沢の冒険物語が始まります。
第5話 五龍の中華圏 秋の農耕祭 つづく
本文の『』は引用
文末の数字は解説と引用
第4話解説と引用を参照
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