五龍の導師 シルクロード戦記 第1部 五龍と中華圏 ユーラシア大陸東方中華圏では
水守悟(みずもりさとる)
第2話 黄龍の導き 鄭氏吾と葵の物語
紀元前11世紀初頭、殷王朝時代末期、殷王朝の国力は衰退し、治山治水の公共事業を興す事が出来ないでいた。そのため中華圏の中心地中原は、洪水が頻発する危機にある。そして、災害対策に対して無策の殷王朝の権威は失墜していった。
中華圏の中心地中原、『
鄭邑の現領主鄭氏
豫州は『黄河下流域とその支流、淮河とその支流域』が入り込んだ水害を受け易い地域でもある。⒊⒋
鄭邑の領主鄭氏は、中華圏中央を守護する『
同じ中原の黄龍観の献納信者である豫州 陶磁器工房工匠
彼らは、殷王朝の王族や貴族支配層向けに絹織物また青銅器と鉄器そして陶磁器の製造販売を行っている。
彼らは、豫洲で代々生業を引き継いで来た、それを自分達の代で途絶えさせてはいけないという思いの方か上回る。
毎年のように起きる河川の氾濫で、黄河南岸邑群の領民が苦しんでいるにも関わらず彼ら献納信者は利欲を優先させた。
つまり治山治水工事を推進する資金を融通するのではなく彼ら献納信者は、自分達の子どもを治水現場に派遣する見せかけを行う事に決めた。
そうするとやる事が大ざっぱになる。彼ら献納信者たちの三男や四男を黄河流域『中原治水治山職工集団』の棟梁に預けた。⒍
これに怒った棟梁は、領主の鄭氏に怒鳴りこんで来た。
「工事経験も無いまだ子どもを私に押し付けて、どうしろと言うのだ!」
もっともな言葉です。
「いきなり喧嘩腰か棟梁」
「あなたの子どもたちはよくできた子供たちです
南岸邑群の領民のために働きますと言ったよ」
「ほ~そうか良かったではないか」
棟梁は、子どもたちをみんな黄龍観の学問所へ3年間出家させ知識を学ばせてから現場に戻すと、棟梁は領主に提案した。
息子を黄龍観に出家させるつもりの無い領主の思惑と少し違っていた。鄭邑の領主と棟梁との話し合いは平行線となった。
さてここは豫洲中岳嵩山、中華圏中央を守護する黄龍を祀る黄龍観がある。⒌
黄龍観の黄龍廟に導師が向かっています。
導師は、黄龍廟の黄龍の木像に向かい話かけた。
「黄龍様、近頃は利他より利欲が上回り弟子たちが思う様に
治山治水が推進できないと嘆いております」
すると黄龍の木像は、まるで生命が宿ったように寿黄の問いかけに答えた。
「そうであるか
「それでどうするのです?」
「まずは信者たちの様子を見ようではないか」
寿黄導師は『夏王朝の始祖
寿黄導師は、黄龍と会話でき黄龍の導きを受け、不老不死の身体を与えられた導師で一千年近く生きている。
寿黄導師は、黄龍から五つ徳目を説かれ寿黄が解釈した五つ徳目とは。
『他者への思いやりや礼儀、利欲から離れること、利他の精神で知識を学び実践すること、他者から信頼される人間になること、中華圏発展のために尽力する』⒏
これは寿黄と黄龍の倫理観ですこの価値観を寿黄は弟子たちに伝え続けきたのです。
紀元前11世紀初頭殷王朝時代末期、寿黄はようやく『三河川治水治山技術集団』構築することができた。⒐
しかし私利私欲で動く中原の領主、富裕層彼らの権力や財力を利用しなければ治山治水事業推進できない。寿黄と三河川治水治山職工集団の棟梁たちは葛藤(ジレンマ)に陥った。
さてここは黄河下流域南岸邑群、黄龍は黄龍分観の木像に
『邑は周囲を城壁で囲いその周りに氏族共同の耕作地が広がっている』。⒑
黄龍は、南岸邑群の人々の生活を観察しています。色んな人々が黄龍木像に、手を合わせたり供物を置いたりして通り過ぎて行く。
ある日の事、少年が毎日やって来て、黄龍鄭邑分観の周囲を掃き清め黄龍の木像のホコリを掃う事を日課にしている事に、黄龍は気が付いた。
黄河南岸邑群の黄龍分観で、掃除を日課にしている者はこの少年だけだ。
その少年は、眉毛が太く福耳の特徴的な容姿をしています。またその少年の背中には小さな
黄龍は、この少年に声を掛ける事にした。
「毎日ご苦労である」黄龍の木像から声が聞こえてきました。
「誰?」驚く少年、誰かのいたずらか?と思う。
「我は黄龍である」
「ウソ!じゃぁなんで毎年毎年雨を降らせるか答えてよ」
「難しい事を聞く子どもだ!可愛くない」
「答えられないの?」
「それは天と地と海は水で繋がっている。天と地と海の水循環の約束なのだ」
「何の事?分からないよ!じゃあね黄龍!」
「我の名を呼び捨てにするな」
「分かった!黄龍様またね~」
「またな!少年」
この少年の名は鄭氏
父から初めてもらった仕事は、黄龍鄭邑分観の毎日の掃除と節分祭典(立春、立夏、立秋、収穫祭・重陽節、立冬)の飾りつけです。
また吾は父の命令で、黄河下流域南岸堤防工事現場の工夫小屋の雑用係として参加している。
こうして黄龍と吾の不思議な交流が始まりました。少年吾は、黄龍と会話できる天性のセンス『才気』ある子どもである事を知らずに。⒒
吾は、朝と夜は幼いきようだい世話、昼は大人の中に入り工夫小屋の雑用係。
吾は、全く子どもらしくない日々を送っている。吾が子どもに戻るのは、黄龍との会話だけです。
今日も黄龍の木造に吾はうみについて質問しています。
「ねえ黄龍様うみってどこにあるの?」
「海とは四方にあり深くて広い海水はしょっぱい」
吾にはやっぱりうみは解りません。
「
吾は一番広い湖を思い出します。
「海は解池よりはるかに広大だ」
「ウチの邑そこから塩を購入しているよ」
「そうであるか、どうやってだ」
「夏に塩工夫さんが、解池に集まって来て塩を採るの。
梁さんという商人が、買い付けた塩を購入しているの」
「梁は我の信者である」
「ふ~ん…掃除できたよ!」
「ご苦労である」
「ねぇ今度友達を連れて来ていい?」
吾は少し遠慮して黄龍に聞きました。
「あまり我のことを言い広めてはいけないぞ」
「分かった、またね~」否定しない黄龍に良かった!と思う吾
「またな吾!気を付けるのだぞ」
「ウン、ありがとう黄龍様」
吾は黄河南岸堤防工事の工夫小屋に向かった。
次の日、吾は葵を連れて分観にやって来た。鄭氏葵、年齢は12歳、吾より2歳年上です。葵の父は、中原治水治山技術集団の棟梁鄭氏です。2人は、同姓ですか血の繋がりは無い。
葵は、見慣れた鄭邑分観の黄龍の木像と会話できるという、吾の言葉が信じられません。でも吾は、その黄龍の木造に挨拶をした。
すると黄龍の木像は、吾が女の子を連れて来たことに驚きます。
少女葵は、背中に小さな『光背』が輝いているのを黄龍は見つけた。
吾と葵は、天性のセンス才気ある子どもです。⒔
「僕の幼馴染の葵だよ。葵はね立派な現場頭だよ」
「それは立派な徳を持つ二人だ」
「徳って何?」2人は黄龍に聞きました。
「仁義礼智信の徳があり仁とは…」
「また難しいこと言って」
「黄龍様は姿を見せないの?」 葵は好奇心で言った。
「いいとも見せてあげよう!」 すると小型犬の小さな黄龍が降臨。
「われは黄龍だよ。あれ?小さくなりすぎた様だ」
黄龍は子どもだから配慮したつもり。
「わ~かわいい!手乗り龍だぁ!」 2人は大はしゃぎです。
黄龍は、怖いとか恐ろしいと言われ続けてきたが「かわいい」は初めてだった。
だから黄龍は、少し照れて黄色鱗が薄っすら赤くなりました。
しかし
「頭をなでるのではない!」
「しっぽに触るのではない!」
「髭を引っ張るのではない!」
「我をおもちゃにするのではない!」
黄龍は、少し怒って大型犬位のサイズになった。黄龍は、子どもだから配慮したつもりでした。しかし葵と吾は、
「ここは何?」2人は黄龍に聞きました。
「
「ふ~ん…そうなのかぁ…大人気ない黄龍様」
「すまん…」 黄龍は返す言葉が有りませんでした。
「じゃあまたね!黄龍様」
「吾、葵また会おう、気を付けるのだぞ!」
「ありがとう」
二人は黄河下流域の治水現場に向かった。
信者たちが、子どもに苛酷な労働をさせて何を考えておるのだと、黄龍は憤慨しました。黄龍は黒龍、白龍、青龍、赤龍と相談してある計画を実行しようとしています。
その計画とは…
吾と葵は、いずれ嵩山黄龍観の駐在修行者となります。中華圏の交易品シルク絹織物の生産地中原豫洲。絹織物の安定生産を目指すために、生糸の原料である生糸を生産する養蚕農家が蚕餌桑畑を拡大し、耕作地を保全することが必要なでのす。
果たして吾と葵は、シルクを通じて出会う異国の文化や人々とどう関わるのか?
吾と葵の冒険物語が始まります。
第3話 黒龍の導き 魯氏英と智の物語 つづく
本文の『』は引用
文末の数字は解説と引用
第2話解説と引用を参照
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