第2話 悪魔のささやき

「みなさん、今夜は、生まれ変わりたいと願ってる男女4人にお集まりいただきました。ようこそ。辛いこと、悲しいこと、変えようと思っても変えられないこと、いろいろありますよね。皆さんの辛い気持ち、よくわかります。私も、昔はそうでした。」


 部屋を見渡すと、うなだれて、人生を悲観した4人が集まっていた。そして、おじさんは、4人と違い、自信ありげに意気揚々と話し、みんなの人生を変えてあげると語っている。


「人によっては自殺しようと考えてる人もいることはわかってます。でも、皆さんはラッキーでした。今日、私と会えたのですから。」


 そう、4人とも、道を歩いているときに、このおじさんに声をかけられた。大きな悩みを抱えてますねって。そして、その悩みを解決してあげましょうって言われ、少しでも良くなればと思って、この部屋にきたんだ。


 この部屋は、おじさんが話してる内容とは似つかない感じだ。壁は真っ白で、蛍光灯は白く、強い光をテーブルに当てている。まぶしいぐらいだ。魔法のように、暗く、怪しげな部屋だと思っていたが、爽やかな雰囲気は、おじさんの話しとのギャップが浮き立っている。


「人生を変えるかどうかは、皆さんが判断してください。今までの生活でいいと思う方は帰っていただいて結構です。でも、人生を変えたいという方は、今日は、そのチャンスを与えましょう。ただ、一回、人生を変えると、もう元に戻ることはできません。よく考えて見てください。」


 そんな都合のいい話しなんてあるわけないだろう。何かの詐欺かもしれない。でも、もう失うものもないし、試すだけ試してもいいんじゃないかと思い、このおじさんについてきた。何も変わらなければ、帰ればいいし、問題が起これば、このおじさんを訴えることもできる。


 その話しを聞いて、女性1人は帰ると言ってきた。他の3人はどうするか悩んでいたが、いずれも、このおじさんの力を借りて人生をやり直せるなら、やり直したいということになった。


「まず、そのままお帰りいただく方には記憶を消させていただきます。この青い薬を飲むと、道を歩いているうちに記憶がなくなり、ふと自分に気づくという感じになります。では、お飲みいただき、退出してください。で、残りの3人は、この赤い薬を飲んでください。眠くなりますが、すぐに目が覚めます。そしたら、新しい人生に生まれ変わってます。」

「本当なのかな?」

「やばい薬じゃないんですか?」

「大丈夫です。さあ、信じて、飲んでみてください。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る