第49話 エルフたちの初仕事

エルフの家が建ったあと、内見&いったん休憩という事で俺は、室内の居間に通されていた。

 

「お寛ぎくださいませ。ご実家と比べたら、狭いかもしれませんが……」


「いやいや、そんなことありませんよ!」


 それこそ、エルフの開拓団全員を入れても全然スペースがあるくらいには広いのだ。

 貴族の邸宅と比べるのがおかしいのだし、とんでもない速度で建てられた家だと考えると、すごいの言葉しか出てこない。


「結構意匠が凝ってるわねー」


 シアがきょろきょろしながら言っているが、確かに普通の家とは言えないくらい、扉や柱の装飾がしっかりしている。

 丸太を一本丸々で使っているところなどには、何か彫り物をしたような模様もあるし。

 

 設備的にも、暖炉や煙突など、自分ひとりでは作れなかったものが、普通にある。

 

「突貫で作った家とはいえ、エルフの工芸品でもありますから。速度と居住性重視とはいえ、こだわるべきところはこだわっております。アルト様を招くことは必然だとも思いましたから。恥ずかしくないように、快適に過ごせるように、と」


「突貫でここまで出来るのは凄いですよ。……しかし、暖炉はいいなあ。今度作り方を教えてください。俺が作った小屋にも取り入れたいので」


「勿論です。というか、宜しければもう一軒、アルト様用の家を建てますよ」


 デュランタはそう言った後で、

 

「……ただ、先に作物を作らねばなりません。冬が近い、というのは、私たちにとっても死活問題ですから」


 暖炉の横にある棚から袋を一つ取り出した。

 

「こちら今も他のエルフの皆々が撒いている、我々がメインの食料としている作りたい『霊鈴菜(フォース・ターニップ)』の種です。今種まきをして、ギリギリ食用に適する大きさになる、というものですね」


「新しい作物ですね! 見せてもらっても?!」


「どうぞ」


 窓の外で、エルフの皆が土に何かしらを突っ込んでいる姿が見えるが、これを植えているらしい。


 見た目はカブの種に近い。一つ一つが胡椒一粒と同じくらいの大きさで、オレンジ色をしている。

 近所の農家で分けてもらったカブの種とも、そこまで変わらないが、


「へえ、魔力の加工をしてあるのね」


 シアがそんなことを言ってきた。

 それにデュランタは目を見開きながら頷いた。

 

「一目で見抜かれますか。流石はシア様。……お察しの通り、加工を施してありまして、特徴としては、食用部が栄養豊富で、比較的寒さに強く、秋の中月である現在に撒いても、枯れずに育つ、というものです」


 エルフの里がこの国にあるからか、エルフと俺たちが使っている暦は同じだ。

 春夏秋冬があり、それぞれに上月、中月、下月の3か月がある。そして季節ごとに植える作物は変わっていくのだが、


「この『霊鈴菜』はカブに似た作物で。さすがに雪の降る冬には育ちませんが。2か月ほどで収穫できるので、冬の上月までにはどうにか食べれる程度には成熟してくれるかな、という感じです」


「えっと、どのくらい作りたいとかあります? 土地は広いので、お貸しするのは全然大丈夫ですが」



 アルトに言われたデュランタは、里で計算してきたことを思い返しながら、伝える。

 

「そうですね。まず我々だけでは満足に耕せないことが分かったので。アルト様から提供して頂いた畑で進めることになりましたが、種の量と我々十数人で面倒を見切れる範囲で育てることを考えると……里の食糧庫の一角を埋められば、というところでしょうか」


 気候は、ほぼ同じだという話を聞いているから、恐らく育ちはするだろう。


 ただ、この魔王城跡地、土地は広いが、モンスターは出てくるし、土も硬い。

 

 アルトや、彼の召喚獣が手伝ってくれるとは言うものの、おんぶに抱っこになるわけにもいかないし、モンスターの対処は出来る限り自分たちで行うべきだ。

 彼にも彼の仕事がある。

 すでに土地を借りているのに、手を煩わせては、筋が通らない。

 

 だからこそ、この仮拠点前の畑を守る事を重点的に考えた結果、収穫量はそれくらいと見積もった。


「里の民すべてが毎日満腹に食えて、冬を越し、春の種植えを迎えられる量……というのが望ましいのですが。……難しいでしょうから、せめてどうにか冬を越せる量として、そのくらいは確保したいですね」


 少なくとも、食糧庫の一角を埋めるくらいの収穫ができて、節約をすれば冬は持つ。そして、


「エルフのトマトを売って手に入れた資金も少ないですが、それとため込んだ食糧でどうにか食いつなげるとは思います」


 まずは、近づいてくる冬の季節を切り抜けること。それが最重要だ。


 エルフの里とこの地の気候が近いというならば、冬は雪が降る寒さが来るだろう。


「冬の月になると作物は育たないでしょうし。問題も多いですが。まずは、使わせていただく土地で、これらすべてを植えて、どれだけ成るかが勝負になりそうです」


 そう思って、アルトに言うと、彼は、何やら考えていて、


「えっと……あの、エルフの里の皆さんって100人以上いましたっけ?」


「いえ、そこまでは」


 旅に出ている者たちもいるし。現在の里だと、そこまでの人数はいない。そう言うと、アルトは頷き


「だとすると、ウチの畑でやるなら多分ですが。皆さん、冬の間、このカブをお腹いっぱい食べることは、可能だと思いますよ」


「え……?」


「新種の作物なので、育ててみないと分からないんですが……まずは一旦、やってみましょうか」


 そして――約半月後

 

 そこには、


「こ、こんな大量の霊鈴菜が出来上がるなんて……」


「まだ一か月もたっていませんよ!? しかも一つ一つが見たことないくらいに大きい……!」


「品質も凄えぞ! こっちなんか倍以上の大きさしてるのに、味の濃さはウチの里のを超えてやがる!」


 収穫したカブの山を見て、驚愕しているエルフたちの姿があったのだ。


――――――――

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