第45話礼を言う癖
兄貴の威力は絶大だ。
> つばさの兄貴はもっと怖いんだろうな・・・。
> ぼんやりと考えていたらリヤトランクから刃渡り30センチ級の刃物の着い
た木製の台を抱えて持って来たのは高倉茂だ。重そうだった。
> 「磨いて置きましたからよく切れますよ。」青褪めた。
> 余計な事をしやがってと怒鳴ったが声に為らなかった!
> 口にタオルを入れられていたからだ!
> 丸坊主が刃物を90度まで上げた!ランドクルーザーの薄暗い所作は車外か
ら観ても何も分からないだろう・・・。全ガラスに真っ黒なプライベートフィル
ムが貼られていたからだ。絶望的な亮一はこれから起こる事態を想像出来たが、
結末は想像出来なかった。
> 亮一の五本の指を揃えて切断器に合わせる。
> 四本の指を真っ直ぐにして揃え親指だけ掌中へ折り曲げ入れられた。
> 「親指は助けたる。」重低音が優しく響いた。
> 「ありがとうゴザイマふ。」タオルを突っ込まれた口腔は発音は判然としなか
ったが、歯を食い縛って礼を言う。丸坊主の眼を見た。眼を見開き感情が伝わる
様に相手を観た。
> 営業双子中亮一の癖だった。
> 「イエイエ、どういたしまして。」顔を赤らめた丸坊主がコクリと頭を下げた。
照れていた。
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