第7話 王都旅行後半
ー 5日目
朝から団体行動だ、王城の見学のようだ。
一際立派な城に着いた後、兵士に先導されて城内にその後はメイドに案内されて大まかな王城の見学だ。
よほど辺境伯は頼みにされているにだろう、引率のサファイアを見かけると城内の兵士などが頭を下げている。
王の謁見の間までが見学コースのようでその後は昼食後解散だ。
広い食堂に案内されて王城の料理を堪能する。
「美味い、さすがここの料理はうまいな。」
と僕がぼやくと
「当たり前でしょ。でもここの料理より私はあなたの料理の方が美味しく感じるわ。」
とカレンが呟いた。
僕はこっそりとエンジェルの配下を城に配置する。
ー 午後
僕はシャルとエースそれとホークを召喚する。
「その子達を呼び出してどうするの?」
カレンがそう言うのに僕は
「王都といえど治安がいいとは言い切れないだろ、僕達のボディーガードさ。」
と答えながら、カレンにはシャル、チカにはエース、カミュにはホークを貸し出して王都見学に戻る。
僕はと言えば認識阻害で気づかれずに着いてきたエンジェルを肩に乗せている。
次に行くところはオークション会場だ、本日開催れることは事前に確認している。
入り口でメダルを見せて中に入る、こんな所でも威力を見せつ辺境伯のメダル。
目的の品はいくつか有る
・ より良い武器
・ より良い装備
・ 奴隷
である。
この世界でも奴隷は存在すると言うか普通に市民の5人に1人ほどが奴隷と言える。
奴隷のメリットは、裏切らないことだ。
ただし主人のために命まで賭けるかはそれまでの待遇次第だろう。
ーー オークションと奴隷商
席に着き事前に紹介されている商品に目を通す、
「コレ良いんじゃない」
チカが剣と鎧を数点チェックしながら意見を求める。
「そうね、武器はあなたの目利きが一番だし・・・この杖どうかしら?」
カレンも気になる品が見つかったようだ。
カミュは僕と同じで奴隷が目当てだ、僕と違うのは商売の手伝いをさせる奴隷を探しているくらいか。
「僕は5番と12番を狙うよ、シャドー君は決まっているの?」
「ああ、決まった。願ってもないのがいたよ。」
と答える僕。
競が始まった。
次々に商品が競りにかけられ、落札されていく。
その中で奴隷の1人が売れ残っている、呪い持ちのようだ。
競も終わりに近づき売れ残りの奴隷と商品が片付けられそうになる、すると商人に僕は声をかける。
「残りは僕が全て買い取るよ。いくらだい?」
商人は疑いの目を向けるがメダルを見て態度を急に変える。
「ありがとうございます、全部で金貨50枚で如何でしょうか?」
「処分を待つ商品を買い上げようと言う僕の足元を見るのかい、今後の商売に関わるよ。」
と言うと
「勿論先程のは、初めの売値。そうですね金貨10枚でお願いしたいのですが。」
「良いだろう、金貨11枚で買い上げよう。彼女の服を一揃い用意してくれ。」
と金を差し出しながら言い、僕は受取所で待つ。
仲間もそこで思い思いの商品を手に入れていたようだ。
「カレンお嬢様、僕は野暮用ができました単独行動をお許しください。」
と願い出ると
「あの子を買ったのね、良いわ時間はどのくらい必要?」
「そうですね、3時間と言うとこでしょうか。」
「なら、5時に冒険者ギルドで待ち合わせしましょう。」
と話が決まり別行動に。
ー 買い取った奴隷
僕の目の前に真新しい服を着た少女が立っている。
青い髪、オッドアイの瞳、白い肌、整った顔立ち、スタイルの良い手足、歳は10歳くらいだろうか。
普通なあ美少女だが顔色は悪く覇気もない、重い呪いを受け立っているのがやっとのようだ。
引き渡しが終わり僕は彼女に声をかける。
「今日から君はブルーだ、僕はシャドー君の主人だ。」
と名付けを終えて彼女を連れ出す、外に待たせた馬車に乗り込み近くの宿に向かわせる。
宿に着き「休憩で借りる」と言いながら銀貨5枚を渡す。
鍵を手に部屋に入ると、ベッドにブルーを寝かせ服を剥ぎ取り治療を始める。
「呪いが呪いだけに少しキツイと思うが我慢してくれよ。」
と声をかけて解呪を行う。
彼女に掛かっているのはこの世界では解呪不能と言われるレベル5の呪い、しかし僕は既に解呪全を取得しているので問題ない。
解呪しながら治療魔法と回復魔法を合わせてかける、時より苦しそうな顔をするが声を出そうとはしない。
かなり意志が強い、掘り出し物のようだ。
1時間後解呪と回復が済み精神的な疲れからか寝込んでいるブルーを見ながらコレからのことを考える。
僕は彼女をパーティーの後衛として育てるつもりだ。
彼女の種族は魔族と人のハーフ、魔族領を追放される際に呪いを掛けられたようだ。
多分彼女は呪いが解呪されたとは思っていないだろう。
そうこの世界では魔族と人はその生存圏を争っているのだ、魔族の王が魔王だ。
2時間後目覚めた彼女を連れて冒険者ギルドに向かう、彼女はここまで一言も言葉を発していない。
ー 冒険者ギルド
「意外と早かったわね。」
カレンがギルド内の食堂で果実酒を飲んで待っていた、この世界では8歳からはお酒が許される。
「ああ、上手くいったよ。皆に紹介するよ、ブルーだ。今はまだ心を閉じてるけど帰る頃には何とかなっているだろう。」
と紹介する、カミュの買った奴隷は別便で辺境伯領に送ったようだ。
そこにギルド職員が声をかけてきた
「シャドー様達ですね。買い取りの準備が整いましたこちらにお越しください。」
と別室に案内する、どうも高額の買取は別室で行うようだ。
ソファーに座った僕らの前に大きな袋を置いて
「総額白金貨2枚、大金貨30枚、金貨123枚ですご確認ねがいます。」
と袋を差し出す、中身を確認して
「問題ない」
と答える僕の言葉に、「はーっ」と息を吐いた職員は
「これ程の取引は初めてでした。」
と言いながら席を外した。
「シャドー君、結局幾らなの?」
チカが訪ねた、僕の代わりにカミュが
「大金貨1枚はは金貨100枚分、白金貨1枚は大金貨100枚分だ。合計で金貨で言えば2万3千123枚だよ。」
「2万!・・3千枚以上・・凄すぎ!」
思わず絶句するチカ。当然で有る普通の庶民なら数100年遊んで暮らせる額だ。
「おいおい、君たちが今日落札した品もそこそこしたんだろ。」
と僕が言えば
「そうね、私のワイドが金貨200枚、チカの武器と装備が金貨300枚でカミュのは幾らだったの?」
「僕のは2人分で金貨150枚だったよ。」
そう金貨数100枚の買い物を8歳の子供がしているのだ。
ーー 6日目
昨夜はカレンたちに頼んでブルーを風呂に入れて洗ってもらった、服だけは新しいが長く風呂に入っていないようだった。
朝磨かれたブルーを見て目を見張った、予想以上の美少女に変わっていた。
髪が丁寧に漉かれ磨かれた肌はより白く艶やかだった。
いまだ言葉を発していないがだいぶ変化が見える。
今日の予定は屋敷を一つ購入すること、ここ王都に拠点を持つことだ。
メダルの力を十分に使いそこそこ大きな屋敷を即金で購入した足で商業ギルドに向かう。
「シャドー君、家宰とメイド2名と庭師兼御者で良いのかい?」
交渉担当のカミュが確認する
「ああそれで良い、給金用の口座も作ってくれよな。」
と追加の要望を言って僕は購入した屋敷に戻り
「リペア」「浄化」「強化」「状態保存」
と次々に魔法を唱えて屋敷を新築以上の状態に変えていく。
流石に庭は草刈り程度しかできないが建物や道具はピカピカだ。
その様子を力ない目で見ていたブルーの瞳が見開かれていた。
驚いたようだ、お金では驚かなかったのに魔法には反応するんだ。
「まさか・・あの歳で・・・魔王でもない人が・・信じられない・・・。」
小さな声であったがその声は僕の耳に届いていた。
「ブルーは自分の呪いがどうなったか気づいているのかい?」
と言うと
「私の呪いは一生消えない・・・え!まさか。・・呪いが消えている。何故、どうやって?」
「どうやってて、昨日僕が解呪しただろう。」
「え、昨日のは回復だったはず・・本当に?・・・。」
突然、ブルーが膝をつき涙を流しながら僕を見つめ
「ご主人様ありがとうございます。このご恩は生涯を通じてお返しします。」
と僕の手を取り誓ったのだった。
ここで初めて気を許すことのできる仲間を手に入れた僕だった。
ーー 7日目(出発の日)
20人分の荷物などが積み込まれ、生徒が乗り込むと馬車は辺境伯領に向けて出発した。
荷物用の馬車が3台ほど増えている、皆ずいぶん買い込んだようだ。
僕も家族へのお土産を買い込んだが全て収納の中だそのため僕らの馬車は余裕がある、そこにブルーが新たに座っている。
表情も明るく一見したところでは奴隷に見えない。
カレンやチカとも仲良くなったようで、帰りの馬車の中では楽しそうに話をしていた。
普通の奴隷ならばこうはならないが、ブルーは僕と命を掛け合う仲間なのだ。
必要な場所でない限り普段は仲間として接することを僕は皆に頼んだのだ。
ーー 復路の行程
行きと同じ場所で宿泊し特に問題もなく僕らは辺境伯に戻った。
学校で解散し10日ほどのお休みだ、各々自宅に帰ってお土産を渡すのだろう。
僕はブルーと2人で馬車に乗り故郷の村に向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます