夏の蒸した夜の中に、

僕はわざと忘れました。


燻っていた焦燥感、

醜い嫉妬と憧憬、

意味も脈絡もない遺書と、

それを模した原稿、

本当は泣きたい気持ちと、

ベランダで叩き割った風鈴、

怠惰と惰性で続ける深呼吸、

見たこともない魔女の妄想と、

現実から逃げるためのUSB。


秋の足早な日暮れが

そのすべてに気がついて、

薄ら寒い夜風に乗せて、

そっと、

僕に叩きつける。


舞った枯葉が頬を掠めて、

また、泣きたくなった。



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