煙と残り香と天国の在処
文月 螢
〇
気温が三十六度を超えた帰り道
いつもより点滅が長い青信号
靴裏に張り付いた蝉の死骸の
半分を車道の真ん中に置き去って
ぽつりぽつりと歩道の端に続く
千切れた蝉の羽根を辿った先の
路地のなか。
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