腹ペコアーケード
夏休高校のアポイントメントまでの時間はまだ有る為
何処かで食事でもしようと思った穴口。
「飲食店がねぇ・・・気の利いた喫茶店やらラーメン屋は無いのか?」
探していてもアーケードには飲食店は無い。
じゃあ肉屋でコロッケやメンチカツでも、 と思ったが
「ねぇの? コロッケ?」
「無いねーごめんねー」
恰幅の良い中年女性がにこやかに答える。
「じゃあ何か飯食えるところ無いですか?」
「アーケード戻ってちょっと歩くとコンビニが有るよ」
「コンビニぃ? 折角ここまで来たのに・・・」
「仕事で来たのかい?」
「まぁね・・・」
穴口が商品を見る。
ここも他の店と同じく割引している。
「割引の店を見たけど、 祭りか何か?」
「いやいや、 ちょっと良い事が有ったから商店街の皆でお祝いしてるのさ」
「良い事?」
「厄介事が片付いたんだよ」
「?」
少し首を傾げる穴口。
「うん? 店にフライヤーが有るじゃないか」
穴口が指摘する。
「今はやって無いのよぉ、 まぁ今度からまた始めるかもしれないけど・・・
おにぎりだったらあるけど食べる?」
「そこまでは良い、 会ったら直ぐに飯食いに行くわ」
「会う? デートかい?」
「仕事だよ、 ちょっと会わないといけないんだ」
「そう、 お気をつけてね」
「あぁ」
穴口は去っていった。
「この商店街、 飲食店は無いけど八百屋とか魚屋とかあるんだよなぁ」
歩きながら見渡す穴口。
良くある歩道に商品が出るなんて事は無い様で歩き易い。
飲食店は無いが塗装屋や電器屋、 楽器屋、 個人運営の病院も幾つかあった。
「せめて喫茶店でも作っておけよ・・・」
そんな事を言いながら歩いているとアーケードを出た。
そこから5,6分の距離に夏休高校は有った。
立派な校舎である。
大きいスーパーマーケット位は有るだろうか?
校門で警備員に事情を話して校舎に入れて貰った。
校舎内は廊下にまでクーラーが効いておりとても静かだった。
「夏期講習とか無いんですか?」
「え?」
警備員に尋ねる穴口。
「とても静かなので」
「あぁ、 校舎内は殆ど防音何ですよ
外の五月蠅さから守る為に」
「そうですか・・・」
よく見ると窓は内側から開かない様になっている。
穴口は唯の高校では無いなと感じ始めた。
この様は寧ろ監獄か? 思えば外で鳴いていたセミの声も聞こえない。
恐らくこの校舎全体が防音なのか?
背筋の冷たさはクーラーの冷たさでは無いだろう。
そして穴口は校長室に通されたのだった。
「どうも校長の宗川です」
禿げ頭の校長は穴口に頭を下げた。
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