【短期連載】穴口探偵の事件簿:消えた不良のボンボン

@asashinjam

不自然な依頼

穴口探偵はとあるビルの一室に事務所を開いている探偵である。

そのビルは日本有数の大企業が経営するビルであり

店子も有名な企業の出張所や事務所である。

家賃を支払うだけでも一財産必要な立地なのに

穴口探偵は平然と借りている。


穴口探偵は20年程前にビルの持ち主の企業の会長が巻き込まれた殺人事件を解決し

会長に気に入られてこのビルの一部屋をタダ同然の金額で借りている。

更に定期的に調査が必要な場合も穴口探偵に依頼し仕事を供給している。


穴口探偵はその事件の際に一緒に居た彼女と別れてしまい

散々な目に遭ったと思ったが世の中どう転ぶか分からないな、 と思った。



穴口探偵が仕事を終えて帰宅しようとすると一人の男が現れた。

マスクにサングラスという分かり易い不審者である。

即座に警察に連絡をしようとするとその不審者は一枚の紹介状を手渡した

大企業の会長からの紹介状である。

如何やら依頼人らしい、 会長にも念の為に確認を取ったが如何やら間違い無いらしい。


穴口は不審者と向かい合った。


「・・・・・珈琲は要りますか?」

「いえ、 結構」


不審者は如何やらマスクを取りたく無いらしい。

マスクで声がくぐもって年齢を判別出来ないが男だろうか?

体付きは良い方だ。


「依頼は人探しです」


不審者は構わずに言う。

懐からブロックの様な札束を取り出す。


「経費と前金として30万、 見つけた場合は1000万です」

「やけに気前がいいですね、 犯罪絡みですか?」

「分かりません、 が、 しかし醜聞なのは間違い無いです」

「醜聞?」

「探し出すのは・・・そうですね、 高い地位に居る御方の御子息の高校生です

彼が1週間前から居なくなってしまった」

「家出?」

「3日、 4日、 居なくなっても可笑しくない位には素行の悪い少年ですが

1週間居なくなるのは何かの事件に巻き込まれてしまったのかもしれません」

「その少年と貴方の関係は?」

「友人です」


便利な言葉だ、 友人、 免許も資格も証明書も無いのに名乗れる立場。


「ではこちらに書類にサインを」

「持って来てあります」


調査に必要な契約書と説明書と同意書にサインをして持って来てある。

恐らくは会長から貰ったのだろう。

名義は会長が極秘の調査をする時に使う名義の一つだ。


「あと、 これ」


携帯電話を手渡される穴口。


「連絡の際はこの携帯のアドレスに入っている電話番号にお願いします」

「はい、 分かりました、 それで探す人物は」

「それも携帯電話に」

「・・・・・」


可笑しな奴だが用意周到な奴だと思った。


携帯の情報を調べてみると探す人物は小学こがく 南生なんせい

警視庁のお偉いさんの息子で夏休かきゅう高等学校の生徒だと言う。


「・・・・・二駅の距離だな、 面倒だな・・・」


穴口は一人愚痴た。

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