巨乳女騎士を添えて~船爆撃の影響、もあるよっ!
◇ ◇ ◇
魔王の城の周りにはそれを囲むように深い森があり、様々な魔物が潜んでいる。木、大木、小川、洞窟、崖、岸壁、沼、それぞれに適応したそれぞれの魔物が自生しており、それはいくら強力な魔族であっても油断のならない、そこに入り出ること自体が、一種の修行となるような、そんな危険な森を、一匹の黒く、色艶のいい毛皮をもった半獣半魔の獣魔が、ものすごいスピードで駆け抜けていた。
木や大木、大きくせり出した根っこを、凄まじいスピードと身のこなしで潜り抜け、小川に自生している、最も危険な閻魔オオサンショウウオを一瞬で蹴散らし、十メートル以上ある崖を、簡単な沈み込みで放たれた跳躍で難なく飛び越えると、死の泥沼と言われた底なし沼を脚力だけで渡り切る。
「はあ、はあ、はあ、――どこ? どこなの?」
辺りをキョロキョロと見まわし、一人の魔族を探す。
裏切り者。
先程、魔王の玉座の間にて、魔王を出し抜き、人間の大群をも簡単に壊滅させた、この難攻不落の魔王城からまんまと逃げ出した、下っ端の、魔族。
「はあ、はあ、ジン君…いったいどこに」
その飛ぶように走り抜ける健脚も、空から降ってきた――、一隻の船を見上げると、思わず、足を止めた。
「…………え? 何これ、どういうこと!? キャッ!!」
理解の追いつくよりも先に、その落ちてくる巨大帆船の、空中分解したであろうマストが、目の前の地面に、唸りをあげて激突する、激しく揺れ、跳ねる体と衝撃による風圧で一メートルほど後退すると、今度は落ちて来たマストから二十メートルほど先に、巨大帆船ごと落下し、木々は波打ち、かまいたちにも似た風が吹き荒れたと思った、瞬間、その帆船は爆音とともに破裂し、辺りの樹木を勢いよく焼いた。
パチパチと辺りの燃える木々を眺め、あっけに取られたのもつかの間、今度は後方から叫び声と、先程と同じような爆音が轟き、ヴォックスを正気に引き戻す。
後ろを確認すると、高台に建設された魔王城の上にも、今まさに、帆船が落ちた瞬間だった。魔王城の一部に覆いかぶさる帆船は、ぐらっとバランスを崩し、こちらから見て奥へと倒れこむ、露出した魔王城の一部は、側面こそ無事だったが、屋根は大きく崩れ、痛ましい姿を見せた。
「――シュガーちゃんっ!」
ヴォックスは通信機を取り出し魔力を籠める。
ザザッ…ザザァア……、城の内部で使った時よりも、だいぶ不安定なノイズを発しながら通信機は、一人の可愛らしく、幼さの残った、だがハキハキとした声を拾う。
『ザザッ…ヴォックス…さまっ』
「シュガーちゃん! 良かった! 大丈夫?」
『…はい、ザザッ…私は大丈夫…です……ヴォックス様は…ザザァア……大丈夫でしょうか?』
「うん、少し驚いたけどね」
『お気を…付けください……魔王城は…既に、ザザッ…修復されましたが……そちらは…そうもいきませんから』
そういうと、ヴォックスは木々の隙間から辺り空を見上げる、そこには先程と同程度か、それ以上の大艦隊が、空高くから、こちらに向かって落下してきている。
視線を少し下に下げ、見ると、先程大きく崩れた筈の魔王城の屋根が、いつの間にか元通りになっていた。
「ありがと、シュガーちゃんも、あまり城を過信し過ぎないようにね、屋根からは離れて、サウロンさんに守ってもらってね、じゃあね」
そういうと早々と通信を切り上げ、先程向かおうとしていた道に戻る。
が、二、三歩すすむと、歩みを止め、後ろを、来た道を振り返る。魔王城の近くの森はところどころから赤い光と煙を立ち昇らせている、何故か、その近くの魔王城から、多くの魔物が一斉に飛び出しており、ココからでも聞こえる雄たけびをあげていた。
「うーん、魔王様だね、あれは…」
そちらに向き直ると、足に力を籠め、勢いよく跳躍する、地面を大きく凹ませ、辺りの木を揺らすほどの風を発生させ、ヴォックスは百メートルはゆうに超える跳躍を見せると、再び森に着地し、その勢いのまま魔王城の近くの森へと駆け出していく。
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