巨乳女騎士を添えて~出航準備もあるよっ!



 現在俺たちは波止場に止めてあった一隻、ひと際大型で豪華な帆船を拝借し、出航の準備を整えているところだった。

 船の後方、舵輪に手をかけ、腰に手を置き、胸を張る。

 今にも大海原が見えてきそうな爽快感だ。

 まあ、目の前の島では悲鳴や断末魔が轟いているが、――そんなことを考えていると甲板で俺の様子を見つめ、ポツンと突っ立っている乳山が視界に入った。


 …………。

 何してるんだ?


 俺は先程、出航の準備を整えている、と言ったが、俺には、船舶の知識なんて全くと言っていいほどなく、実質、曲がりなりにも、船でここまで来たという乳山に任せていたのだが…。

 なんだろう。

 すごく嫌な予感がする。


「……。」

「……。」


 あーー、嫌だなあ。

 目が合っているにも関わらず、全く、お互いに喋ろうとしない。

 これ、俺が聞かなきゃ駄目か? あ、ほら、アイツもなんか察してる風だもん、あの表情、なんだか心なしか顔がひきつっている感じがする。


「ねえ、ダーリン♡ この船ったらいつ出航するのかしら、私、船なんて初めてだから、何だかとてもわくわくするの♡」

「「……。」」


 ああ、さっきまでの俺も、何だかとてもわくわくしていたが、今はざわざわって感じだ。

 ――なんでいつもこんなことになるのだろうか。





「お˝い˝巨乳! 動力室は見つかったか!?」

「ない! というか、どれが動力室に繫がる階段なのか分からん!!」

「ねえダーリン♡ 甲板の方から何だがすごい音が聞こえるのだけれど、もしかして敵なんじゃないかしら♡」

「グラアアア!! どこ行きやがった出てこんかいワレエエエエエエエ!!!!」


 そんな分かり切ったことを報告するルウに、コイツだけ甲板に放り出して、足止めとして使ってやろうかと、そんな邪なことを本気で考える。

 なぜこんなことになっているかと言うと、端的に言えば、<誰も船の動かし方を知らなかったのだ。>こんなバカな話あるわけがないと思いたいが、実際にそうなのだから仕方がない、今は、船をひとまず島から離すため、動力源と思われる魔力炉を動かそうと、動力室を探している。

 魔力炉というのは、内燃機関で、平たく言えばエンジンである。魔力を動力源とし、魔術の力で船全体に結界魔術を掛ける、まあ、構造はどちらかというとバフ魔法に近いのだが、俺も詳しくは知らない。


「オラアアア! こんなことしてただで済むと思ってんのか! きっちり、落とし前付けさせたるからなァ!」


 パリイイインと、窓ガラスの割れる音がする。敵がすぐそこまで来ているらしい。

 今来ているヤクザみたいな魔族は、羽の生えた、あるいは、飛行能力を備えた魔族で、空から船に乗り込んだのだろう。

 この船に乗るまでの道は徹底的に壊し、陸にいる、船爆撃(フネばくげき)を生き延びた魔族たちは、躍起になって現在進行形で乗り込む方法を探っている最中だろう。


「ちがう、ちがう、これも違うクソッ!」


 客室、客室、船員室、無線室、医務室、備蓄室、備蓄室、便所。

 俺は乳山と手分けして、この、巨大な帆船の甲板下、いくつもの部屋がネームプレートで書かれ並べられた廊下を、走りながら順に見ていく。


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