巨乳女騎士を添えて~新たな異能力あるよっ!


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』



 ヴォックスから放たれる、音の壁とも錯覚しそうな大音量の絶叫に、建物はミシミシと細かく振動し、足元の小石は床をホバリングしているかのように跳ねまわる、俺の体は毛が逆立ち全身から嫌な脂汗が吹き出すと、脳みそは冷え切り、ストレスによる頭痛が絶え間なく危険信号を発し続け、その声は地獄から這い出る悪魔を連想するような、生命の危機を感じさせる不快な周波数を垂れ流していた。

 耳を両手で塞いでいるにも関わらず自身の平衡感覚が奪われ、視界がぐにゃりと歪む…...。

そこでプツリと意識を手放し、目の前は真っ黒に染まった。


 ちゅんちゅん、ピロピロ、ピーヒョロロロロ。

 目の前には花畑が広がり、白馬に乗った王子がこちらに近づいてくる。

 ハハハ! ハハハハハァ!! ハハハハハハ姫さ――――。



「ッはあ!!!!」


 気が付くとヴォックスは叫び終わったようで、腰に付けていた淡い光を放つリングから骨付き肉を取り出すと骨ごと一心不乱に食べ始めた。

 クソッまたあの不快メルヘンな夢だ。

 乳山の方を見ると床に伏して完全にトんでいた。俺は乳山の体を仰向けにし、みぞおちを足で踏みぬく。


「グッ!? ヴッ、ヴェロロロロロロゲハァッ! はぁぁはぁな、何を…」


 汚ねえなあ。

 乳山は吐き終えると、震える足で剣を構えるが、その重みに耐えかねたのか、ふらふらと定まらない重心に足の踏ん張りが効いていないようだった。


「くそっ、大丈夫か!平衡感覚をやられたか…なんて卑劣な攻撃」

「ヴォエッ、い、いや、ほとんどお前のせ――」

「うちの乳山に何てことすんだ! サイテーだな!!」

「ええ!?」


 ヴォックスは何故か腑に落ちない表情でこちらを見てきたが、酷いことをしておいてそれはないと思う。


「あ、あの、ごめんね? でも君たちが行こうとするから…」

「だったら何をしても良いんですかあ? 乳山こんなになっちゃったよ!? 見てェ! 生まれたての小鹿みたいッ!」

「い、いや、でもそれはジン君がおなかを踏んづけたからで…」

「はいー!? この期に及んでいいわけですかァ! よォーござんすねえ! よォーござんすなあ!!」

「あ、あのあの…ごめんなさ――」

「止めんか」


 乳山は俺の頭に本日二度目のはたきを見せた。

 ふつうに接している、乳山は分かっていない、アイツ、俺たちに<攻撃>してきたんだ。

 攻撃。

 アイツは俺たちに事を攻撃してきた、今だけじゃねー、この部屋に入った瞬間、あの淫夢はアイツの攻撃だ、魅惑の獣姫バラック・ヴォックス、能力は、前後不覚になるくらいの大声で強制的に気絶させ、気絶させた相手に淫夢を見せ精神世界に閉じ込める、最強最悪な初見殺しの合わせ技。それは獣人族と淫魔のハーフであるアイツにしか出来ないチート能力、アイツはこれで四天王まで上り詰めたといっても過言じゃない、それくらい低確率レアな組み合わせの能力ということだ。

 難攻不落の魔王城の中、そんな魔王軍最高幹部の四天王は、俺たちに今、攻撃を仕掛けて来ていた。


「そうだよねー臭いよねー」

「夏場になると特にな」


 何の話してんだこいつら…。

 こいつらの下らない談笑も、今では歪んで見える、俺たちが出ていこうとした瞬間、ヴォックスは攻撃を仕掛けて来た、それは明確に、この場所から俺たちを行かせないという意思の表れだろう。


「おい、どうしたんだ? そんな怖い顔して」

「……ヴォックス、お前、俺たちを殺す気だな」

「…………」

「なっ何!?」

「……残った人間を始末するのも私の役目だね」


 事態の雰囲気を察したのか、乳山はゴクリと生唾を飲み込むとゆっくり剣を構え体制を整える。


「だけどヤッパリ殺したく無いかな、ジン君、なんでそっち側に居るの? 裏切者が出たとは聞いてたけどジン君だとは思わなかったよ、最初ここに入ってきたとき人間の気配がするからとりあえず攻撃してみたけど、なぜか君も一緒に居るんだもの…」

「それは乳山のチチを触らせてもらうためですッ!」

「触らせねーよ」

「それッ! 私のじゃダメなの!?」

「ええ!?」


 突然の提案に困惑する乳山。


「いやあーお前のは形は良いが大きさはそこまでじゃねえし、毛皮に包まれてるし…つーか触ったことあるし」

「おい最低な断り方だな、というか断るなよお前ごときが」

「うう、そこまで人間さんのお〇ぱいが魅力的なんだね…わたし淫魔なのに魅力で負けるなんて…ちょっと自信なくすな」

「コイツに気に入られるのなんて一ミリもうれしくないことだと思うぞ、元気出だせ」


 おい、失礼なこと言うな。

 だが、ヴォックスはめげずに俺に問いかける。なぜそんなに食い下がるのか、分かってる、ヴォックスはそういうやつだ。


「ねえジン君、本当にいいの? 今ならまだわたしが何とかしてあげるからさ、四天王の私が言うんだもの、処刑は何とか免れるように手助けしてあげるからさ」

「――それ、手助けってどのくらいやってくれんの?」

「おい! なんか心引かれてないか!? 四天王の目の前で裏切るとかやめてくれよ!?」

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