第15話 エロ系美男子VS彫刻級美男子のマウント

 フィンが来てから5日が経った頃、今日は休診日なので、ミュリエルが午後からポーション作りに精を出していたら、フィンが店のドアを叩いた。


「どうされましたか?」


「ポーションを作るんでしょう?見てみたくて。普通に生活してたら、魔力なんて感じることないし、マジックワンドなんて使ったことないから、どうやって魔力を注ぐんだろうって興味があるんです。見学してもいいですか?」


 純粋に奇跡のポーションを、どうやって作っているのか知りたいと思っていたが、モーリスという監視塔無しで、ミュリエルと話したいという下心もあった。


「構いませんよ。どうぞ入ってください。でも、楽しいものではありませんよ」


「それでも、薬店の従業員として、どんな風に作るのか知っておいて損はないでしょう?」

「そうですね。熱心に仕事に取り組んでくれて嬉しいですよ」


「この仕事が気に入りましたからね、条件はいいし、ジゼルさんの美味しい昼ご飯までついてきますから、クビになるわけにはいかないんですよ」


「せっかく来たのですから、お手伝いしていただきましょうか」ミュリエルはフィンにエプロンを渡した。


「了解です。2人で作業してたら、俺はモーリスさんに殺されるかもしれませんね」


 もちろん抜かりはない。モーリスは近所の釣り仲間連中と、朝から出かけていることは既に調査済みだ。でも、なんとなく胸騒ぎがする。万が一バレた時の上手い言い訳を、考えておいた方がよさそうだとフィンは考えた。


「なぜですか?」


「俺がミュリエルさんに手を出さないよう、モーリスさんは目を光らせてますから」


「そんな気もないでしょうに」ミュリエルは呆れて言った。


「ええー。ミュリエルさんって自分が絶世の美女だって気がついてないでしょう。男なら絶対ほっとけないと思うけどな」


「冗談はそのくらいにして、ポーションを作りますよ。これからの季節、風邪を引く人が増えますから、まずは解熱鎮痛薬から作りましょう。作業は簡単です。この大釜に材料を入れ煮出し、魔力を注ぐだけなのですが、薬師によって材料が違うのです。この材料選びは重要で、ポーションの出来を左右します」


「ミュリエルさんは何を入れるのですか?」


「私はこれだけの物を入れます。発汗作用のあるエルダーフラワー、免疫力を高めてくれて抗ウイルス効果のあるローズヒップやエキナセア、抗炎症作用のあるカモミール、鼻詰まりや喉の痛みを和らげてくれるユーカリ」


「薬草ではない物もあるんですね、この粉末は何ですか?」


「解熱作用のあるミミズです」


「は?今何か聞き間違えた気がします。ミミズと言いました?」


「はい、ミミズと言いました」口をあんぐりと開けているフィンを、ミュリエルは可笑しそうに見た。


「ミミズって虫の事ですよね、何かの隠語とかじゃないですよね」


「ポーションの中身が何か——なんて知らない方が良かったでしょう?」


「……俺が飲んだやつは?」


「血行促進の効果があるネトルや、血管を強くし新陳代謝を促進してくれるローズマリー、細胞の働きを活発にしてくれるジンセンです。それと滋養強壮の蟻です」


 フィンは愕然としてテーブルに突っ伏した。「俺は蟻を飲んだのか?」


「お陰で回復が早かったですね。通常ならば、ギプスが外れるのに最低でも1ヶ月ほどはかかりますし、完全回復には3ヶ月ほどかかります」


 フィンは力無くテーブルから顔を上げた。「普通はそんなにかかるんですか⁉︎蟻のおかげなんですね」蟻の凄さにフィンは感心した。


「蟻様様ですね」実際は、ポーションに込めた魔力がポーションの効果を高め、骨を早く癒合させたのだが、ミュリエルは蟻に栄誉を押し付けた。


「それでもやっぱり、蟻だったんだって思うと、身体中がゾワゾワする。蟻が体を這ってるみたいだ」フィンは体をくねらせた。


 ミュリエルの口角が少し上がった。


「あ!今俺を笑ったでしょう。ミュリエルさんが人を虐めて面白がるような人だったなんて俺はショックですよ」フィンは腕を組んでそっぽを向いた。


「虐めてなどいません。無駄に蟻を飲ませたわけではありませんし、必要な処方でした。それに、悶えるあなたが、少し面白いなと思っただけで、笑ってもいません」


「それを世間では虐めて面白がるというんです!」


 ミュリエルはまた口角を上げた。


「——綺麗だ。あなたは笑うと、とっても綺麗だ。どうしようもなく心がざわめいて落ち着かなくなる。まるで雲の上を歩いているかのように不安定で、いつか落ちてしまいそうだ」フィンはミュリエルに近づき、頬に手を触れ、耳にかかる髪の毛に触った。


 薬店のドアを叩く音が聞こえた。


「誰か来たようです。見てきます」


 いい感じの雰囲気だったにも関わらず、恥ずかしがることも、戸惑うこともなく、来客を確認しに行くミュリエルに、フィンは自信をなくした。


(今のは絶対いい感じだった、なのにケロッとしてるし、俺の魅力が全然伝わってない、普通なら今頃、口づけくらいはしているはず。だからといって、ミュリエルを口説くつもりはないんだから、落ち込むこともないか)


「……アンドレ王子殿下、エクトル卿、こんにちは。まさか、ここでお会いできるとは思っておらず驚きました。ようこそ、ミュリエル薬店へ」


「君の噂を聞いて、どうしているのかと気になって来てみたんだ。とてもいい店じゃないか」


 誰が訪ねて来たのか気がついたミュリエルが、目を丸くして驚いている姿を可愛いと思い、驚かせることに成功したアンドレは、満足そうに笑った。


「ありがとうございます。皆に支えられ充実した毎日を過ごしております」


 工房からフィンが顔を出した。「ミュリエルさん、急患ですか?」


「いいえ、以前お世話になった方が、店の噂を聞きつけ訪ねてくださったのです。アンドレ様とエクトル様です」


 フィンがアンドレに会うのは、この一度きりだろうし、アンドレが王子だとフィンが知る必要はない。フィンは感が良いから、アンドレたちが、商人の格好をしていたとしても、高貴な身分だとすぐに気が付くだろう。それに、お忍びで来ているのだから、黙っておいたほうがいいだろうと、ミュリエルは判断した。


「初めまして。ここで働いています、フィンです」


「初めまして、アンドレです。ミュリエルとは昔馴染みでね、どうしているのか気になって来てみたのですよ。だが、今日は休診日のはずなのに、どうして従業員がいるのかな」アンドレはフィンが差し出した手を取って握手した。


 アンドレはフィンの存在を知っていた。ミュリエルの店で数日前から若い男が働き出したと、エクトルから報告を受けた後で、いてもたってもいられず、訪ねてきたのだ。


 休診日を狙って来たのは、ミュリエルとゆっくり話がしたかったからだ。


「今日はポーションの作り方を教わりに来たんです。薬店で働いているんだから、そのくらいのことは、知っておかなければならないだろうと思ったんです」


「向上心があるとはいいことですね。人は向上心がなければ成長しませんから、いい従業員だなミュリエル」心なしか従業員という言葉に、力が入ってしまったとアンドレは思った。


「アンドレ様、今日は、どのようなご用件でお越しになられたのですか?まさか、ご病気を患っておられるのですか?」


「いいや、私は元気だ。でも、ミュリエルが私を心配してくれるとは嬉しいな。来た甲斐があった。本当にただ、君の顔が見たくて来ただけなんだ」


 さっきから、このアンドレという男——ミュリエルの態度から察するに、貴族なんだろう。ミュリエルは日頃から誰に対しても、子供のギャビーにも、正しいフランクール語を使うが、アンドレに対しては、殊更に気を遣っているようだ、まるで彼の立場を重んじているかのように。


 彼の言葉の端々に嫌味を感じる気がしていたが、気のせいではないらしい。最初は貴族特有の傲慢さの現れかと思ったが、どうやらアンドレは、ミュリエルを好いているようだ。ミュリエルを見つめる目が、そう語っている。


 ただの従業員が、休日にミュリエルと2人きりで店内にいたんだ、嫉妬しているといったところだろう。


 これはモーリスに報告したいところだが、そうなると、自分も窮地に立たされる。休診日にミュリエルと2人っきりで、何をしていたんだと責められてしまうから、黙っている方が身のためか?まあ、そのうちアンドレも、モーリスと鉢合わせすることになるだろう、熊のような大男のモーリスから、尻尾を巻いて逃げ出すアンドレは、見ものだなとフィンは意地悪く思った。


「アンドレ様のお心遣いに感謝いたします。私は元気にやっております。アンドレ様も、お変わりないようで、安心いたしました」


 顔が見たいというのは、どういう意味だろうかとミュリエルは考えた。今までアンドレはミュリエルの顔など、見ようともしなかったはずなのに。


「よかったら私にも、調合の様子を見せてもらえないか」


「もちろん歓迎いたします。どうぞ狭いところですが」


 なるほど、毒薬でも作っているのではないかと、偵察に来たといったところだろうとミュリエルは思った。アンドレはミュリエルが本気で、マドゥレーヌに毒を盛るとでも思っているのだろうか。


 ミュリエルはアンドレとエクトルを工房に案内した。大人の男が3人も入ると、少し窮屈に感じた。


「ここで調合しているのか、君の作るポーションはどんな病や怪我でも治してしまうと噂になっていると聞いた」アンドレは工房を見渡して言った。


「ミュリエルさんは凄いんですよ。俺の骨折した腕も、1週間で治してしまいましたからね。ミュリエルさんの才能に惚れ込んだ俺は、役に立ちたくて、頼み込んで働かせてもらってるんです」


「骨折?喧嘩でもしたのですか」アンドレは鼻で笑った。


「いいえ、仕事中に家具が上から落ちてきて、それでポキッとね。ミュリエルさんが、人々から天使のようだと言われている理由が分かりましたよ」


「ミュリエルは美しいからな、天使と言われてもおかしくはない」


「確かに最初は美しいから、そう言われていたんですけど、実は美しいからだけじゃないんです。優しいからなんです。誰に対しても、分け隔てなく接するその姿勢が、まるで慈愛の天使のようだと言われているんです」


 フィンはミュリエルを自慢するように言った。モーリスやジゼルのミュリエル自慢が、自分にも移ってしまったかもしれないと、面白く思った。


「フィンさんは大袈裟なのです」ミュリエルは照れくさくて、瞳を伏せた。


「大袈裟なんかじゃありませんよ、俺が骨折した時だって、懇切丁寧に説明してくれて、手厚く看病してくれたじゃないですか。どんな馬鹿な質問にも笑ったりしないで真摯に答えてくれる。ミュリエルさんのそういうところが、みんな大好きなんですよ。自覚してないでしょうけど、ミュリエルさんを狙ってる男はいっぱいいるんですよ」フィンはミュリエルの肩に、自分の肩をトンとぶつけた。


 アンドレはミュリエルの腕を取って少し自分の方に引き寄せた。「ミュリエルを狙うなんて、身の程知らずもいいところだ。気をつけるんだぞ、ミュリエル。市井には、いい人間ばかりじゃない、おかしな奴もいっぱいいるんだからな」


 お前のことだと言わんばかりの視線を向けられたフィンは、口の端がぴくぴくと痙攣した。


「そういえば、アンドレさんとミュリエルさんは、どういうお知り合いなんですか?」


 ミュリエルとアンドレの間に、気軽さは無く、打ち解けた雰囲気は感じられない。ちょっとした知り合いってところだろうと思ったフィンは、自分の方が、ミュリエルと仲良しだと見せつけてやろうと策を練った。


「元婚約者です」アンドレは僅かに顎をしゃくり、虚勢を張るように言った。


「ええ⁉︎元婚約者!それは想定外の答えだったな。なぜ婚約が続けられなくなってしまったんですか?」


「薬師になりたくて、アンドレ様から婚約を破棄してもらったのです」ミュリエルが言った。


「なるほど、結婚より薬師になることを選んだというわけですか」


 元とはいえ、婚約者という切り札を出されては、敗北を認めるしかないと思っていたのに、ミュリエルから婚約解消を持ち出したとなれば、事情は変わってくる。


 選ばれなかった男と、今後選ばれるかもしれない男。

 墜落したかと思ったが、再び浮上だ!とフィンは心の中で意気込んだ。


「そうですね。貴族でいることに疲れたといのもあります」ミュリエルは釜に薬草を入れ、かき混ぜた。


「ミュリエルさんは貴族っぽくないですからね」


(選ばれなかった男はショックで声も出ないようだ。ここは2人だけの空間を作ることに専念しよう。割って入ることはできないと思わせるんだ)


「そうでしょうか?」


「だって傲慢さの欠片もないじゃないですか、いいところのお嬢さんって感じです。そういう、ちょっと世間知らずなところが、また、男心をくすぐるんですよ。守ってあげたくなるようなね」


 ミュリエルは、ほんのり頬を染めた。「またそんな心にもないことを、フィンさんは調子の良いことばかり言うのです」


(やばい、これは可愛らしすぎる。美人の頬染め!幸甚の至り!俺はモーリスさんと戦う準備をした方がいいかもしれない。自分のものにしたくなってきた)


「ミュリエルさんの赤くなった顔を見れたので、良い日になりました。アンドレさんが羨ましいな、元婚約者ってことは、ミュリエルさんのこういう無防備な顔を、たくさん知ってるんでしょうね」

「——まあ、そうですね、10年以上婚約してましたから」仲はあまりよくなかったと気づいたフィンの嫌味だと、アンドレは気が付いた。


 頬を染めたミュリエルから、アンドレは目が離せなかった。


 どうしてもっと早くに、こんな表情を見せてくれなかったのかと思ったが、結局のところ、自分に見せてくれた表情ではない、フィンに見せた顔だ。


 自分は今まで、ミュリエルを傷つけることしかしてこなかった。ミュリエルが打ち解けてくれなかったのも当然だ。


「この界隈の男たちは、皆アンドレさんに嫉妬しますね。それで、アンドレさんもミュリエルさんを忘れられず、口説きに来たってところですか?」


(ここから一気に畳みかけるぞ、ミュリエルの心を掴もうなんて空想をするのも烏滸おこがましいと思うほどに、こっぴどく振られるがいい)


「あり得ませんよ、アンドレ様には心に決めた恋人がいるのです」ミュリエルはマジックワンドを取り出し、ポーションに魔力を注いだ。


 彼らはポーション作りの見学がしたいと言って来たのに、なぜポーションそっちのけで話をしているのだろうかと、ミュリエルは首を捻った。


「え!じゃあミュリエルさんは、身を引いたってことですか?」


(何と何と、婚約者がいながら恋人を作り、両方手に入れたいだと、こんな不埒な奴は許しておけない!)


「利害が一致したのです。私は薬師になりたかった、アンドレ様は、その恋人と結婚したかった。だから、お互いのために、婚約を解消したのです。そういえば、マドゥレーヌ嬢はお元気ですか」


「——ああ、元気にしている」


 マドゥレーヌにあれほど心惹かれていたというのに、今は心が揺れている。ミュリエルが気になって仕方がない。


 毎週、顔を合わせていたときは、鬱陶しいとさえ思っていたのに、ミュリエルに会えなくなってからは、今頃何をしているだろうかと、ことあるごとに考えてしまう。


「婚約の発表がないので心配しておりました。マドゥレーヌ嬢の身分が、影響しているのでしょうか?」


「そうだな、周囲から反対の声が出ている」


 子爵令嬢であるマドゥレーヌを、快く思わない声が、少なからずあるだろうことは、想定していた。

 だから、正式に婚約を発表する前に、何かしら手を打たなければならないと考えていたが、そう考えると、アンドレはいつも憂鬱になった。

 僅かに微笑んだミュリエルの顔が、頭に浮かんで離れなくなってしまうからだ。


「お辛いでしょうね、アンドレ様もマドゥレーヌ嬢も。お二方が結ばれることを、心から祈っております」


 好きな人に言われてショックな言葉ナンバーワン!他の人と幸せになることを祈っているなんて、残酷極まりない。しかもミュリエルが悪気なく、本心からそう思っているというところが、アンドレの心をえぐったなと、敵ながらフィンは同情した。


「悲恋ってやつですね、俺も応援しますよ」


「——それはどうもありがとう」勝ち誇ったフィンの顔面に、アンドレは一発拳をお見舞いしてやりたくなった。


「そろそろお戻りになりませんと」エクトルがアンドレに耳打ちした。

「そうだな、そろそろいとまするとしよう。フィンさんも、そろそろ帰った方がいいのではないでしょうか?ミュリエルの仕事の邪魔になってしまうでしょう」


「いえいえ、俺はまだ見習いなので、1日でも早く即戦力になれるよう、勉強しなければなりませんからね、もう少しここにいますよ」


 アンドレは、上機嫌そうに見えるフィンを、本格的に殴り倒したくなったが、ここで乱闘騒ぎを起こせば、ミュリエルに迷惑がかかってしまうと思い、どうにか堪えた。気を取り直して、ミュリエルに伝家の宝刀、王子様スマイルで笑いかけた。


「ミュリエル、今日は色々と話せてよかった。また時間を見つけて、様子を見に来させてもらう」


「遠くまで足をお運びくださり、ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください。エクトル様、今度いらした時は、お茶を淹れますので、立ち寄ってください。ケクラン様にも、よろしくお伝えください」


 フィンはおや?と思った。ミュリエルはアンドレに対して畏まった対応をしていたが、エクトルに対しては、友人のような態度で接している。というのも、物理的にアンドレとの距離よりエクトルとの距離の方が近い。


「次に来たときは、お茶をご馳走になります」どうやら、アンドレの命令で、こっそりと様子を伺っていたことが、バレているようだと、エクトルは推察した。


 十分に注意したつもりだったが、それを上回る人物が彼女にはついているらしい、自分はまだまだだなと、未熟さを思い知った。


 エクトルが敵わないのも当然だ。ミュリエルに情報を渡していたのは、ミュリエルが使役している鳥や鼠たちだからだ。その事実をエクトルが知ることはない。


 アンドレとエクトルは馬車に乗り込み、王城へと向かった。


「ミュリエルはフィンと打ち解けているのだな。いつもより、よく喋っていたし、笑ってもいた」


「そうですか?」


「そういえば、お前とは普通に話していたのだったか」


「僕は話す機会が多かったですからね、城門から執務室までの間に、よく会話をしていましたよ。質問すれば必ず答えてくれる方ですから」


「打ち解けていないのは私だけか——マドゥレーヌとも話をするのか?」


「いいえ、マドゥレーヌ嬢と言葉を交わしたことはありません」


「なぜだ?」


「話しかけても無視されるからです。僕は嫌われているようです」


「嫌われる理由は?」


「分かりません。私は何もしていませんよ」


 エクトルは控えめで、女と揉めるようなタイプではない。なぜマドゥレーヌがエクトルを嫌うのか、アンドレには見当もつかなかった。

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