第55話 3ー31 冬休みの帰省 その三
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少し長い<前書き>です。
先日お米を買いにお店に参りましたなら、いつもお米が並んでいる棚に張り紙が御座いました。
何とお米が売り切れ、在庫がなくなって、入荷もこの先未定という事なのです。
やむなく他の買い物だけ済ませてネットを調べましたなら、都市部では完全にお米の在庫が無くなっていることが分かりました。
これはあれですよね。
気象庁が発表した南海トラフ地震臨時情報の
発表当日、防災グッヅや水などが大量に売れているという話は聞いていましたけれど、その後の続報を見逃していたようです。
お米は保存がききますからね。
既に一部では買い占めも始まっているというような風評も・・・。
風評被害?ではなくとも、噂が飛び交うと色々と問題も起きてしまいます。
ネット販売もア〇ゾンでは、米が物凄く高くなっていました。
2024年8月23日の時点で「魚沼産こしひかり10キロ」で1万円を超しているのもありました。
これはちょっと行き過ぎじゃないのかなぁと思いますけれどねぇ。
最近はコメの生産量のみならず消費量も落ちてきているとは聞いていましたが、これほど顕著に品薄状態が起きるとは予想もしていませんでした。
因みに、レンチンで食べられるライスパックもスーパーの棚が空でしたね。
地震に関する臨時情報は、人々の警戒感を高めるのは役に立ちましたが、物価高をより進める結果になっているのかもしれません。
一般の方の買いだめだけなら問題はございませんが、買い占めも起きているとかですとちょっと問題ですよね。
地震臨時情報に対する安全保障体制(?)が未だにできていない証拠ではないでしょうか。
私は、防災用のリュックに少しずつ蓄えたモノが御座いましたので、少々の地震が有っても当座一週間は大丈夫と思っていましたのに、考えが甘かったようです。
場合によっては、その前に干乾しになる可能性を考えていませんでした。
前置きが長くなりましたが、今回は特別にお米の話を中心にしたいと考えています。
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ヴィオラでございまぁす。
ロデアル到着後、領主館の敷地境界のすぐ脇に工房兼宿舎を新築し、そこで農業の実験栽培を始めました。
農場で使う土は、勿論ロデアルの土壌を使うのですよ。
候補は、ロデアル領内の8カ所の土壌で、そのうち四カ所は湿地帯から選びました。
選択した土壌を地下農場の地下に運び入れて、敷地別に区切りを設けて、現時点では一番有望そうな米の改良品種二種類を育てます。
王都の実験工房と違い、此処の工房は、内部の時間を早めたりはしませんので、その生育には普通に時間がかかります。
お米ですと収穫まで概ね88日がかかり、その間に百の作業をこなすことから米作りをする人はその昔「
農作物も手間暇がかかるものなのですよね。
早速、アルノルドとフルヴィアが米作りを始めました。
一般に種蒔きから田んぼに苗として植えられるまでには20日から40日ほどかかるようです。
私(ヴィオラ)の造った王都の地下農場は、人口環境なので気温や湿度、日照率などを調整できますから、今のところ最短で22日までに短縮はできるのですけれど、苗づくりも含めてロデアルで完結しなければいけないことを考えると、ロデアルの気候に即した形での生育が必要なんです。
そのために外気を観測し、できるだけその状態に合わせて生育環境を調整しています。
その中で如何に米を作ることができるかが、農業スキルを持った二人の見習い職人の腕の見せ所なわけです。
残念ながらこの分野での先達はいません。
麦ならば多少の経験者は居ますけれど、麦にしても例えばパン作りに適した小麦、麺類に適した小麦、ビール等のアルコール飲料に適した麦などを見出すのは大変地道な作業なんですよ。
一応それに近い品種を育てるところまでは、王都の工房の地下実験農場でゴーレムにさせていますけれど、実際の環境に合わせた生育方法を探るのが彼らの仕事なのです。
私(ヴィオラ)としては、十年先、二十年先の業績になるだろうと予想してはいますけれど、できればロデアルの特産物の為に早く成果を出してほしいですよね。
一年が480日のこの世界ですが、自然の状態では二毛作が限度かなと思っています。
王都の実験工房では、環境調整をしていますので四季に関わりなく五毛作が可能で、当初農場の時間を300倍に早めた結果、この一年間に1600回余りの品種改良が可能でした。
従って、二人の見習い職人に託した品種は、取り敢えず現段階では一番食用に適していると思われる「12―1501番」と「16―1488番」の二種類なのです。
私(ヴィオラ)が王都を出る際には、コメの品種改良の進度をさらに押し進めるために、現状の約三倍に当たる千倍の時間に早めてきました。
但し、これ以上時間を早めることはしません。
万が一にでも、病原菌などが
予想外のバイオ事故を引き起こさないためにも十分な注意が必要なのです。
このために、王都の実験農場の一部については、ある意味で隔離施設になっており、完全にレベルⅣのバイオ研究所の仕様に作り換えました。
<この超速の施設でも、以前お話したことのある「17-8677号」を見出すまでに、更に一年半もの時がかかったのです。
そうして、これを「ヴィオヒカリ1号」と称して、私の特別工房で限定生産をしています。
王都の地下農場での生産量は、年間で500キロ程度にとどめるのですよ。
この量は、前世の五人家族が米中心での食卓で一年間食べるには少し不足するほどなのですが、私が食べ、あるいは家族や友人に時々食べてもらうだけの量としては十分な量なんです。
まぁ、必要に応じてもっと増産もできるでしょうけれど、ロデアルでの成果を進める方が優先なのです。>
一方で、麹類の開発も進んでおり、また、醸造の実験も進めています。
本来、アマリスは、料理のスキル持ちなので、必ずしも醸造部門のスキルが得意と言う訳ではないのですけれど、醸造スキルを持つ者が見つかるまでは彼女に推し進めてもらっています。
既に味噌は、食用にできそうなものができているのですが、ロデアルの環境にそれを移さなければならないわけで、そのための試行錯誤を行っています。
ロデアルの気候に合わせた環境で、湿度や温度それに発酵に用いる器具の素材の吟味なども行っていますが、結構大変な作業なのですよ。
素材だって珍しいものを使うわけには行かないのです。
少なくともロデアル周辺で得られる素材を使って、
米麹の場合、蒸したお米を棚に広げで冷却しつつ、
その際に使う棚の木材にどのようなものが適しているのか。
また、蒸したお米を直に木材に触れさせずに、さらしなど布を広げてその上に置くのですけれど、どんな布が良いのかも試行錯誤で選びます。
更には、「混ぜ返し」の手法や、一定時間経過後の「切り返し」の手法など、9歳の女の子ではきついほどの労働もあるのです。
ですから彼女には、身体強化を覚えてもらい、体力を付けてもらっているんですよ。
彼女の場合、12個の麹菌培養室を管理して、実験を続けてもらっています。
麹菌の育成だけでなく、その後に続く味噌や醤油の製造もしなければなりませんから、本当に大変な仕事なのです。
その作業の大半は、うろ覚えの私が教えました。
だって、この世界に先達が居ないのですから仕方がありませんよね。
米作りにせよ、味噌・醤油造りにしろ、彼らが成果を上げた時点でマイスターの称号を与えるつもりです。
見習いから職人へのステップアップですね。
三人ともきっとマイスターになれると信じています。
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私は、フルヴィア。
ヴィオラお嬢様の工房見習いで農業に従事しています。
自分ではわからなかったけれど、私には農業スキルが有るのだそうです。
単純に言って、農作物を育てるのが上手なんです。
私は、農業って、麦や野菜などの作物をつくるだけと思っていたのだけれど、お嬢様に言われました。
羊や牛、鳥などの家畜を育てる仕事も農業スキルでできるのだそうです。
羊は確かに飼っている人を見たことが有りますけれど、鳥って空を飛ぶアレ?
あんなの飼ってどうするのだろう。
それに牛って?
お嬢様曰く、鳥は魔物のシェラトリス、牛は同じく魔物のグランド・ブルのことですよと教えられました。
シェラトリスもグランド・ブルも孤児院にあった魔物図鑑で見たことがある狂暴で大きな魔物です。
そんなモノ、とても怖くて飼えそうにもないんですけれど・・・。
いずれ挑戦してもらうことになるかもねと簡単に言われてしまいました。
今は、お嬢様の指示でアルノルドと一緒に米作りに四苦八苦しているところなんです。
ロデアルの領主エルグンド伯爵の館のすく傍に、お嬢様は新たに工房を造って、私達を住まわせてくれた。
ちゃんと私達の世話をしてくれる人たちがついているので、食事の心配もありません。
その工房兼宿舎の地下に秘密の農場があるんです。
王都の工房にも地下農場はあったけれど、私達が入れる場所は限定的でした。
でも、このロデアルでは、地下農場は地下16階層までの全てが、私達の自由に出入りできる場所なんです。
あ、そのうち一階層は、アマリスの担当区域で、彼女はお嬢様から与えられた乾燥
将来的には、ミソ?、ショウユ?、何だかよくわからないけれど、食品の調味料になるような代物を造ってもらうのが仕事なんだそうだ。
アマリスは料理スキルを持っているから、私達が試行錯誤しながら作っている米の味見と米に会う料理も研究してもらっている。
アマリスは可愛い子だからね。
アルノルドは、ある意味で彼女の気を引こうと頑張っているみたい。
とにかく、毎日が楽しい。
米作りって手間暇がかかるけれど、私にとっては天職だから、やればやるほど、のめりこんでいる自分が分かる。
アルノルドも同じだね、
私には「12―1501番」の育成と品種改良の仕事、アルノルドには「16―1488番」の育成と品種改良の仕事が割り振られた。
基本の作業についてはお嬢様から教えてもらっているから、概ね何をすればよいのかは分かっているんだけれど、その中でどういう風に育てればよいのかを色々試してみるのが私達の仕事なんだ。
無駄とも思えるような繰り返しの中で、アルノルドとは問題点を突き合わせながら相談しつつやっている。
お嬢様から出された課題は、美味しい米をどうしたら作れるかということ。
また、稲穂にたくさんの実がつくように品種改良をして行くこと。
「タンイメンセキアタリノシュウカクリョウ」を増やすことも言われたけれど・・・。
要は美味しい米をたくさん採れるようにするにはどうした良いのかを色々試せという事みたい。
時々お嬢様は難しいことを言うので困るんだけれど、そんな時に頼りになるのがアマリスなの。
彼女が難しい言葉を分かりやすく教えてくれる。
但し、
孤児院度育ちの私が王都に行き、いろいろ学んで、またロデアルに戻って来たけれど、今はとっても幸せですよ。
今日も一生懸命米作りに頑張ります。
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8月31日、「ゲルメド」を「アルノルド」へ、「サファロ」を「フルヴィア」へ修正しました。
アルノルドは男子ですが、フルヴィアは女子なので所要の修正を行っています。
By @Sakura-shougen
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