第44話 終焉と介入者

「随分と、派手なことになっているなあ」

 俺達は、勢揃いで鬼と言って良いモンスターを切っていた。

 町中で。


 向こうには、燃え上がる八岐大蛇が暴れている。

 とっても、世紀末な風景。



 遡ること、二日前。


 ハンター登録者へ、一斉に通知が来て、新会長就任の挨拶が流れ、世界組織の長として、粉骨砕身職務に励みますと宣言があった。

 ハンター協会は設立して、そのトップをどうするかとなった時に、各国は主導権をとろうとしたが、自国のことさえ対応できず、結局日本から俺達を呼んでいた。

 状況のやばさを理解したトップ達は、日本にその面倒を押しつけた。


 その面倒を、会長は先輩権限と友人としての泣き落とし、居酒屋のおごりという超安値でごり押しをした。

 結果実績を残し、世界のトップを日本がすることになった。

 まさに薄氷の上につま先立ちの日本。薄氷の下は、断崖絶壁。


 で、それを知らない人たちは、実績だけで、利権を求めた。


 丁度その頃、日本に主導を奪われたが、最後まで我が国がとか民族がとか言っていた国々は、育ったダンジョンに手も足も出ず、その成長を許した。

 それが、近隣に数国。


 藤原前会長は、さすがに困れば、言ってくるだろうと思っていたようだが、言ってこず。階層がたぶん百階を越えたくらいで、異変が起こる。


 夜明け。その日は、とても静かで、穏やかな天気。

 皆が、その柔らかな光の中で、良い日が来ることを期待したその時。

 ユーラシア大陸の東側で、ドンという衝撃とともに、震度五程度の直下型の地震が発生。


 地震の発生とともに、地獄と繋がったかのような世界が出現。モンスターと魑魅魍魎が今までと違い、国境を越えて発生し始める。地震により何故か強度が無いビル群は崩され、町中に鬼達が跋扈をする。


 まさに、地獄のような光景に、さらに追加。

 この惨劇を、プロデュースしている者が居れば、さぞや楽しい世界だろう。

 逃げ惑い、罵倒しまくる人々。我先にと逃げ。他人を轢きながら車を暴走させる多くの人たち。


 そこに、ゆっくりと炎の固まりが、空間に出現。


 それも何体も。

 まるでその姿は、八岐大蛇。

 ただ、実体の無い炎は、近代兵器が効かず、人々を蹂躙をしていく。


 おバカな国は、効かないのが分かってからもミサイルを撃ち込み、背後のビルを壊しているようだが。


 そしてその現象は、ダンジョン管理をしていた国にまで波及をしていく。


 地球が、何かに寄生でもされて、身震いを起こすような地震。

 その後、地獄の門が開いたと、記録が残っている。


 そのような状態で、新生物ハンター協会の日本へ各国からの要請が集中する。

 だが、日本も同じ状態。

 ハンター達に、一斉に要請するが返信など無い。


 だが、日本の一部では、祭りが始まっていた。


 刀を携えた武士の一団が現れ、鬼を切り据え、そびえ立つ八岐大蛇すら一刀両断。


 だがそんな集団も、数は多くない。

 町中のため、フルパワーでの斬撃を放つ訳にもいかない。


 だが自衛隊に配られていた、モンスター用の特殊弾はわずかだが八岐大蛇に効く。

 それで何とか、押しとどめる。


 自衛隊の上部は、ここに来て、刀の購入を渋ったことを後悔する。

 テレビが、異様な集団をパニックの中、目ざとく見つけて、放送したからだ。


「君があんな物フェイクだと言って、購入を潰したのだったな。責任をとりたまえ」

「いや、あの時は、皆さん」

「皆さん。何だね?」

「いえ。何とか連絡をつけます」

「あれは買ってすぐ使えるのかね? 気とか言うよく分からない力が必要だったはずだが」

「あのビデオを作った、士官は使っていましたので、彼に何とか……」

「何とかなったら、昇格が必要かな」

「はっ」

 あわてて、かわいそうな中間管理職らしき士官は部屋を出ていく。


 そして当然。

 こんな混乱のさなか、連絡は、どこにも付かない。


 やがて、東京にも、八岐大蛇がやってくる。



「だぁー。駄目だ、さすがにこの数を全部対応などできない。一志の道場に皆の家族を集めて守るようにしよう」

 いくらでも湧いてくる、モンスター達。


「主様、凪海様とともに小作りを。早急にお願いいたします」

 てんちゃんがそんな事を言ってくる。

 さすがに凪海もびっくりだ。


 いや、くねくねして、まんざらでもなさそうか?


「我らの眷属を、お早く。凪海様に力を渡して、今ならもう素材など無くとも願いだけで眷属を生み出せるはず」

 そう言われて、やっと理解できた。

 モンスターの襲ってくるこの状況で、世を儚んだように子どもを作るのかと思った。


「やっと理解した。凪海料理だ。てんちゃん達の仲間を創れ。力を分ける。行くぞ」

 凪海の背中側から抱きつき、意識を集中。凪海へ向けて力を流す。

 二人の間に金色の光があふれ出す。


 神使(しんし)神の使いと呼ばれる者達が、凪海の前に現れ始める。

 先ずは鳥獣類から始まり阿吽の虎や天狗達どんどんと力ある者達が出てくる。


 やたちゃんとてんちゃんの仲間達も現れて、こちら側の軍団がどんどん大きくなる。

 そして、それらを率いて、八方に走り出す。


 ゴブリンや鬼を、鶏がたかり殲滅する。

 実物の狛犬がモンスターを退治する。烏が、犬が、狐が。


 疲れたり傷を負った者達は、金色の光となって霧散し、その時に周りを浄化する。

 まるで忍者の最後。


 そして、そんな状況の時、光とともに、凪海達の前にそいつがやって来た。

「ごめんね。こんな所にまで、逃げていたとは知らなかったんだ。あっ僕、新藤 改(しんどう あらた)宇宙の管理者。こっちは太郎君と次郎君」

 変な人が、天使を連れて現れた。

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