第209話 いい宿ありますか?
大人になったラナの大変な一週間も終わりを迎えたが、期間中の体調不良と緑色の宝珠が回収された事で、すこぶる機嫌が悪かったが、こまめな
ラナも初めての体験だから、痛みと不安に押しつぶされそうになったんだろう。
その感情を紛らわすために、緑色の宝珠の件もあって俺に八つ当たりしてた感じか。
うん、俺とばっちりだな。
癇癪を起こした訳じゃ無いし、全く口答えをしなかった頃に比べたら、多少の我儘を言うようになって、むしろ成長したと言える変化だろう。
人間味が増してきて、良い傾向だと俺は思う。
緑色の宝珠はここのダンジョンの利用者に対する取り組みだし、他の階層の宝珠まで取られるとは思わなかったけど、ダンジョンを利用する上で仕方の無い事だと思って受け入れて欲しい。
魔物肉を取りに行くみたいに、緑色の宝珠はまた取りに行けばいいだろう。
取り合えず、夢に見るほど倒してたから、しばらくグリフォンは見たくないし、一定期間を空けてからの再チャレンジでお願いします。
ラナも一週間ずっと寝込んでた訳じゃ無く、最初の2、3日は体調不良が続き、ピーク時は起きるのも億劫だったみたいだが、それ以降はすこぶる元気で、コーデリアさんの休みに合わせて買い物に出かけてたな。
もちろん大人の女性に必要な装備の事だね。
俺はラナに
朝から冒険者ギルドの解体場に直行してにラッシュブルを解体に出し、また緑の宝珠を目当てにグリフォン狩りに籠る事が確定してるから、市場で屋台や食材を買い漁り、レナートさんにアイアンゴーレムをお土産に渡したりと度々出掛けてた。
だが、その移動先に行った後、必ず宿に戻ってラナに
アイテムボックスに魔物が大量に溜まってるから、冒険者ギルドの解体は外せないけど、外出すると何度も往復する事になるから、出掛けるのがだんだん億劫になると、厨房に籠って料理作りをしてたりもした。
もちろん、ズワルトにも料理作りをさせたけどねっ!
ただ、作業の邪魔になるような事をしてた訳じゃ無いよ。
ピザの日にはオーブン/レンジの魔道具を貸し出して、ピザ窯の火の番を必要としないお手軽調理をさせて、手の空いたところで俺達の料理を作ってもらってた。
その後、ズワルトから物欲しそうな視線が、ちくりちくりと背中に刺さって痛かったけどね。
ピザ窯の管理が大変だから、週に一度のピザの日を作ったんだしね。
この魔道具があれば、いつでも手軽にピザを提供できるようになるもんね。
だがオーブン/レンジの魔道具はやらん!
多分、ベルナデットのお菓子とマヨネーズの店を出したら、そこに置く事になるだろうしね。
欲しいなら自分で買いなさい!俺達も売り上げに貢献してるし、お金は十分稼いでいるでしょ!
そんな事もありながら、学院の長期休暇がまだ残っているし、目的を領主占有ダンジョンし、とりあえず王都から南に向かう事にした。
「ねえエル、
「それはダンジョンの規則で没収されたよ。取りに行くにしてもまた今度ね」
グリフォンの階層で緑の宝珠が出たけど、ダンジョンを出たところで没収されたから、
あれだけトロンに執着してたラナが、新たな相棒として諦めきれない気持ちになるのは、十分すぎるほど理解できる。
でも、ラナが一人で行くには難しい場所だし、マジックバッグがあったとしても時間経過するから食料問題もあるし、生活魔法が苦手な面もあって、適性が低いのかラナは水すら出せない。
野営コンテナとかの必要な道具は俺が持ってるし、魔力量からも継戦能力に難があるから、俺が行かないと言えばラナは引かざるを得ないのだ。
「分かったー。南のダンジョン行くけど
グリフォンのテイムを約束させられてしまった。
没収される分と俺とラナの分となると、緑色の宝珠を3個もグリフォンの階層で探さなきゃいけないのか……
1週間で1個の宝珠が出たから、3個出すなら1か月は籠らないと駄目そうで、いまから憂鬱になりそう。
それを考慮して南に向かわないと、ダンジョンに籠ってる間に学院の長期休暇が明けて、ラナをさぼらせる事にならないよう気を付けないとね。
翌朝からさっそく南街道を進み、その先にある港を目指して出発した。
「街の外を歩くと、景色が良くて気持ちがいいねーっ」
「わふっ」「にゃー」「ココッ」
俺がラナに返事しなくても、フェロウ達が相槌を打ってくれてるな。
ウエルネイス伯爵家の騎士メダルを所持してる俺達は、貴族側の検問を利用して手早く南門を抜け、朝日も大分昇っているが街道をのんびり歩いていた。
南に向かって伸びる街道の先に目を向けると、遥か遠くに朝早く出発したと思しき商人のキャラバンが見える。
冒険者としてはあり得ない姿かも知れないが、護衛依頼を受けていないから気を使う必要が一切無く、気楽な旅を楽しんでいる。
「この先何日か歩けば、ベッテンドルフ伯爵領のビンケートの街があるよ。さらに先の港町も保有しているから、貿易で潤ってるらしいよ」
「そうなんだー。
その話は昨日もしたでしょ、ラナおばあちゃん。
ベッテンドルフ伯爵といえば、トシュテンと一緒に襲撃してきた貴族の中に居たな。
どんな関係性で襲撃に参加してたのか分からないけど、貴族の柵とか寄り親寄り子の関係とか、多分、貴族社会の厄介事だろう。
貿易港を保有していて外貨を稼いでいるなら、令息の捕虜返還費用も簡単に支払ったに違いない。
王都周辺は騎士団が街道を定期的に巡回でもしているのか、盗賊や魔物に一切遭遇せず、3日かけて次の街に到着した。
「ビンケートの街に着いたけど、ダンジョンの無い町らしいから食事なしの宿に泊まろうか?」
「ウルフ肉でる?」
「多分ね」
そう返すと、途端に眉をしかめ一気に不機嫌な表情を浮かべていた。
俺も嫌だけど、ラナも分かり易いな。
舌が贅沢になったのか、完全なウルフ肉恐怖症だな!
いつものように徒歩だけど貴族の検問の列に並び、伯爵家の騎士メダルと女神カードを提示し、アイテムボックスを隠蔽するための検問用のリュックを渡し検査を受ける。
俺達の荷物を確認した門番は『行っていいぞ』と荷物を返した。
「商人さんが泊まりそうなそこそこいい場所で、テイムモンスターも泊まれる宿はありますか?」
「少し値が張るが、大通りの中心にある宿なら、どこを選んでも良いと思うぞ。テイムモンスターが泊まれるかは直接聞いてくれ」
街の中心と言えば上流階級が集まってそうだ。
伯爵家の騎士メダルを所持している事を把握しているから、子供だからと考えず、安全な高級宿を紹介したみたいだね。
「おじさんありがとう、行ってみるよ!」
「ありがとーっ」「わふっ」「にゃー」「ココッ」
「おじさ……」
鎧に隠れて見えてないが、そのゴツイ顔は小父さんと呼ぶに相応しいだろっ。
中心街で外観から適当に選んだ宿は、掃除の行き届いた清潔感のある部屋で、何とお風呂まで付いていた。
といっても部屋ごとでは無いが、大浴場といわれる風呂があり、別料金だったがゆったりと足を延ばせる大きな湯船は、心地よさと共に金額以上の満足感があった。
「ふう~、生き返る~」
王都に来てからずっとクリーンで済ませてたから、湯船に浸かるのなんて何か月ぶりだろう?
湯気の上がる温かいお湯に包まれて、程よい水圧とお湯の刺激が身体を弛緩させ、疲れた心もリラックスさせるようだ。
気持ちよくて長湯しそうだから、のぼせないように気を付けないと。
あ、女湯と別れているから、ラナの裸は見えないぞ。
二人一部屋食事なしで、宿泊が10万、魔物代が3万、風呂代が二人で2万と計15万ゴルドのお支払いだ。
王都と港を結ぶ交易の中継点として宿泊客も多そうで、さまざまな交易品が流通して街は物凄く潤ってそうで、それに伴い物価も上昇しているのかもしれない。
王都の角猛牛亭の2食付き1万5千ゴルドと比べて、なかなかのお値段だしね。
宿の客は恰幅の良い商人さんや、その関係者と思しき側近や護衛の人達ばかりで、俺達のような大人目前の子供の姿は全く見ない。
これだけ成功してそうな商人さんが利用しているのなら、比較的安全な宿だと思われる。
寝具も良い物が使われてるのか、干したばかりのような香りと暖かく柔らかな感触だった。
でも、この世界では一般的な掛布団は綿だから、重さで温かさを逃さないヤツだった。
ミスティオで作った羽毛布団に慣れると、この布団はちょっと寝苦しいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます