第5話【side】その頃ギルドでは……
マリアが魔法通信網(ネット)でバズり散らかしていた頃。
マリアを追放したギルド、≪ブラックバインド≫の事務所では、ギルマスのエラソーが黒革の高級椅子に座ってニヤニヤと笑っていた。
「無能を追放したから、今日は妙にかすがすがしい気持ちだな」
そう言うエラソーの前には直立不動の部下。
隊長の役職にあるアーサーという男である。
「た、ただギルマス……マリアがいなくなると我々は少し困るといいますか……」
満足げなエラソーとは対照的に、アーサーは焦っていた。
マリアがいなくなれば、まず間違いなく仕事が回らなくなるからだ。
マリアはギルド内では“消防士”の異名を誇っていた。
エラソーが受注してくるクソ案件が炎上したときに、その尻ぬぐいをするのはいつも決まって彼女だけだったのだ。
けれど、部下を無能と決めつけているエラソーの耳にその言葉は届かない。
「ん? なにか言ったか」
「あ、あの……いえ、なんでもないです……」
「そうそう、リンダには派手な仕事をまかせてくれよ。彼女はうちのエースになるんだからな」
最近、エラソーは、お気に入りの美少女冒険者リンダに夢中になっていた。
彼女が有名配信者になることで、≪ブラックバインド≫がさらに発展すると信じて疑わなかったのである。
「……承知しました」
アーサーは無邪気なギルドマスターに、苦虫を嚙み潰したような表情で返答するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます