第38話 vsヘイエイ
「ヘイエイ、お待たせ。私はカレナ。君を倒してその魔石を頂く者よ。と、言いたいところだけど、君の額の
問うたところで相手は魔石獣の幼体。人の言語を理解するはずもない。
私を敵と認識しているヘイエイは咆哮を上げた。三又の尾に付いている魔石が光り新たな魔獣が出現する。
これらをすべて倒さなければヘイエイは倒せない。
長丁場になるかな。私はサリーから渡された鞄に入っている銃弾の残数を考えると無駄撃ちは出来ない。
一応、騎士団から借りてきた剣はあるけれど、剣術の腕は並みだ。
「うーん、魔石獣の幼体の討伐報酬独り占めしたいから常々一人で討伐したいと思っていたけど、前は師匠と協力してだったから楽勝だって感じていたんだなぁ」
師匠の背中を思い出した私は苦笑する。今は一人で戦うと意気込んだんだからやれるところまではやる。私は魔獣の群れを見据えて銃を構えた。
魔獣を全て倒し終える頃、ヘイエイの尾に付いている魔石の色が薄くなっていることに気づいた。
ため込んだ魔力を使って魔獣を呼び出しているのだから魔力は次第に減っていく。
魔獣が打ち止めになれば本体であるヘイエイに攻撃が出来るようになるけれど、私の銃弾は残り三発になってしまった。
魔獣を倒した時に落ちた魔石を拾っても銃弾用に加工する時間は当然ない。
ヘイエイが魔獣を呼び出す魔力を使い切ったら体当たりしてくる可能性だってある。こんなことならもっと銃弾作っておくんだった。後悔しても遅い。
もう一つ手はあるのだけれど、それは師匠から止められているから最近試していない。銃弾の代わりにアフェレーシスを応用して魔力を直接銃に流し込んで使う方法がある。
でも、
「撤退……って手もあるんだけど、今の状態の君を残すのは嫌なんだよね」
人工魔石が埋め込まれているせいで我を忘れているヘイエイを放置するわけにはいかない。
もう一人誰かいれば残りの弾と剣でなんとか動きを封じて倒せそうなのだけれど。
「そう都合よく誰かが来るわけない、か」
そう呟いている間にヘイエイが最後の魔力を振り絞り魔獣を三体出した。残りの弾でギリギリ。
銃を構えて走ろうとした私は足に痛みを感じて動きを止めた。
「痛っ、なに?」
足を見ると裸足で戦闘していて気付かなかったが、
そういえば靴擦れが痛いからといって脱いだんだった。
今までは興奮状態で傷の痛みなんて気にならなかっただけで、限界を超えたから痛みが襲ってきたのか。
アリスの魔石があったから靴脱いできたけど、全部騎士団の治療に渡したこと忘れてた。
痛みはもう少し待ってほしい。せめてヘイエイを倒してからならいくらでも痛みは耐えるから。
動きが鈍って魔獣から意識を逸らしたせいですぐ近くに迫っていることに反応が遅れた。
まずい。
このままだと避けきれない。
人間、痛みを覚悟した時には咄嗟に目を瞑るのだろう。
私はきつく目を閉じて魔獣からの攻撃に備えた。
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