第96話 義人とショッピング

※ナイショの王子様、PV数が1000を突破しました! こんなに長いお話をずっと読み続けている方も、ちょっとだけ読んだって方も、ありがとうございます。嬉しいです(*^^*)

これからもよろしくお願い致します!




 義人の買い物を終えたので、次は悠の番だった。義人にお金を渡しているので、お手伝いしてもらうことも忘れてはいない。


「義人。お姉ちゃんの好きなお店、わかる?」


 グライという店が好きなのは知っているが、他にも候補が欲しかった。


 義人は休みの日に紗奈と行くお店を思い浮かべると、指差しで案内してくれる。


「あっち! 三階のお店、好き」


 教えてもらったお店は雑貨屋だ。キャラ物やファンシーな物が多く、可愛らしい。


「ここが好きなんだ?」

「うん。よく猫のぬいぐるみ見てる」

「ぬいぐるみ……」


 ぬいぐるみを持つ紗奈は可愛いだろう。手のひらサイズのぬいぐるみを抱きしめる紗奈の姿を想像して、ほんわかと和んでしまった。


「この鞄は? 紗奈が好きそう」


 白の皮で出来ていて、薄いピンクのリボンがあしらわれている可愛らしいショルダーバッグだった。


「ねーねの鞄はいつもあそこ!」


 義人が、今度は違う店を指さした。レディースバッグ専門店だ。少し値は張るが、確かにここの物よりは丈夫だし、種類も多いだろう。


「見に行ってもいい?」

「うん! にーには鞄のプレゼント?」

「どうかな? まだ決めてはないんだけど……」


 母がセンスを褒めてくれたので、候補として考えてみた。紗奈がガーリー系の物を好むのは分かっているし、悠としても、可愛らしい服や鞄で自分を飾る紗奈を見るのが大好きだ。


「これ…似合いそうだな」


 ハンドバッグだが、中に肩紐が入っているのでショルダーバッグとしても使えるだろう。


 最近の紗奈は、大人っぽい服装をして出かける事も多いので、フリルや大きなリボンではなく、シンプルな皮製の白い鞄に、白いリボンチャームの付いたバッグを選んでみた。そのリボンの結び目部分にはハートの宝石がちょこんと小さくあしらわれていて、そこもまた可愛かった。


「ねーねが好きそう」

「だよな?」

「にーにも好き?」

「うん。紗奈が喜んでくれるなら、好き」


 ふわっと悠が笑えば、声をかけようか迷っていた店員がぽっと頬を染めて、鞄の良さをアピールしてくれる。


「これにします。プレゼント用なので、包んで頂けますか?」

「はい! かしこまりました!」


 思ったよりも早くにプレゼントを買い終えたので、かなり時間が余った。折角なので四時頃までは義人と遊んでいてもいいだろう。と思い、悠はフードコートにある店の、ソフトクリームを食べに誘う。


「アイスー!」

「よし。食べるか」

「あのね、僕はチョコとバニラのミックスが好きなの。ねーねはストロベリーミックスが好きで、いつも交換してるんだよ!」

「ふふ。義人はねーねと仲良しだな」

「うん! にーには何が好き?」

「俺はバニラが好き。でも、ストロベリーミックスにしようかな」


 悠はそう言って、ソフトクリームを二つ頼んだ。


「義人。俺とも交換こする?」

「うん! する!」


 二人でソフトクリームを食べる様子は、本当の兄弟のようだった。周囲の席に座っている人がチラチラと見てくるのは、悠だけではなく、義人が幼いながらに将来有望な、整った顔立ちをしているせいだろう。


 ソフトクリームを食べた後は、ゲームセンターに行った。


「にーに、あれ知ってる?」

「ん? あー……今やってる戦隊モノのキャラクターか」


 日曜日の朝にやっている戦隊ヒーローのリーダー。「プリンスレッド」。様々な架空の国が危機に陥り、その危機を解決する為に、様々な国から集まった王子達が変身して戦う。という設定の戦隊ヒーローだ。


 そのぬいぐるみが、たくさんクレーンゲームの中に入っている。


 小さい子どもに人気があるので、義人も例外なく、この戦隊ヒーローが好きだった。物欲しそうな目で悠を見上げた。


「欲しいの?」

「うん」

「じゃあ、もう一個、後で俺の買い物のお手伝いしてくれる?」

「うん! いいよ! 何買うの?」

「ふふ、お手紙。紗奈には内緒だよ」

「わかった」


 義人はこくんと頷くと、内緒ということで口を両手で押さえた。悠はそれを見てくすっと笑を零し、クレーンゲーム機にお金を投入する。


「にーに、凄い!」


 一発で取ってしまったので、義人はキラキラとした瞳で悠を見上げ、お礼を言う。


「どういたしまして。大事にしろよ?」

「うん!」


 ギュウッとヒーローを抱きしめ、義人は嬉しそうに笑う。


 その後は、約束通り紗奈に手紙を書くための便箋を買いに行って、義人に紗奈が好きそうな柄を選んでもらった。


「やっぱりお花が可愛いかな?」

「ねーね、お花好きだよ。お部屋にもたまに飾ってるの」


 花を贈ろうかと一度は悩んだ悠は、それを聞いてほっとした。既に部屋に置いてあるのなら、選ばなくてよかった。と思ったのだ。


 時間はあっという間にすぎて、五時少し前にマンションの前に着いた。


「上まで送っていこうか?」

「ううん! いつも一人で帰れるもん!」

「気をつけるんだぞ? ちゃんと前を見て歩いて?」

「はーい! にーに、またね!」

「うん、またね。今日はありがとう。義人」

「はい!」


 大きく手を振って、義人はマンションに入っていく。今度は前を向いているので、悠は見えなくなるまで義人を見送ると、小さく笑って帰路に着く。本当に弟ができたみたいで、今日は悠にとっても充実した土曜日になった。




※新章に入ってから全く紗奈(主人公)が出てきてませんね(汗) 次回は出ます!

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