世界の修正者は世界を守らない
零元天魔
レヴェント編
プロローグ 異世界?
――すまないが、少し俺の話を聞いてくれないか?
俺は名前は
現在は
俺は修正者、あるいは
因みに修正者ってのは、〝世界の維持〟を目的とした別次元、別世界に存在している大きな組織の構成員のことである。
修正者の役目は色々あって基本的に定まったものはないのだが、強いて上げるとするなら〝荒ぶる神を殺す〟ことやら、〝悪神へ成り得る存在の排除〟が上げられる。
それ以外の役目も色々とあるんだが、上げていてはキリがないからここでは省かせてもらう。
さっき話した通り、俺はそんな修正者の一人。まあ、といっても俺はあくまで臨時担当者、本来の修正者ではなく、代理人である。
正直なところ、なんでこんなことさせられてるのか、俺自身わかっていない。
俺は修正者臨時担当になる以前の記憶がない。
いわゆる――〝記憶喪失〟というやつなのである。それ故、助けてくれた? 女神様とやらに無理やり任されたこの仕事をしている。
女神曰く、記憶を取り戻すために必要な行為だそうだが……本当なのかは知らない。
記憶のない俺はわけがわからないながらも、なんとかこの使命を全うしている。
ハッキリ言って生きているのが不思議なくらいな目に何度も遭った。素直な気持ちを言えば、修正者を辞めたいと思っている。
というか、二回死んだし……――
修正者、というより俺限定の話だが、俺は〝転生〟という形で他の世界に行き来している。
話によるとこれは俺だけの例外処置らしく、他の修正者は基本的に転生という行為はしないらしい。
俺が修正者臨時担当を始めて既に三回の転生を繰り返した。だが、未だにこの修正者というのが何なのか? 指令を出す女神が何者なのか? なぜこんなことをしているのか? 全然わからない。
そもそも、自分自身が誰なのかさえも、不確かだ……分からないことが、多すぎる。
しかし、とりあえずは命の恩人? である女神の命令は甘んじて聞き入れる事にしている。
自分自身でも不思議なのだが、彼女の命令は果たさなくてはいけない、という気持ちにさせられる。辞めたい辞めたいと言っている修正者を未だに続けているのは、それが一つの理由である。
もしかしてそういう能力なのだろうか? 女神パワー的な?
そんなことを思いつつも、一様なんとか修正者臨時担当として活動している。
―――俺が今まで往った世界は計三つ。
一回目は現代の日本。
この世界に関しては、転生して往ったというよりふと気づいたらその世界にいた。いわゆる〝迷い人〟とやらに近い感じだろうか? 一様は女神の力でそうしたらしいのだが、転生ではなく召喚に近い形だ。
次の世界はザ・ファンタジーな場所だった。その世界ではちゃんと転生して、幼児から大人に成るまですくすくと成長させてもらいましたよ。
そして、三回目は少し近未来な日本に転生した。
でもその世界は既に人類が滅亡しかけているという絶望的な世界。機械生命体やらに侵略され、明日を生きる希望すら持たない人間が多くいた。
因みにさっき少し話した転生についてだが、女神の話だと記憶保持での転生ってのは、修正者でも基本的には禁止されていることらしい。
記憶保持での転生は魂魄、魂が損傷し易いから本来は禁止。だが、なぜか俺は例外的にその記憶保持での転生が許されている。
つまり、俺の魂は壊れても問題ないってことなのね。
まさか消耗品宣言を堂々とされると思っていなかった――と思ったが、どうやら違うらしい。
話によると俺の魂、魂魄、
そんなわけで俺は現在、無事に四回目の転生ができたわけですよ。
四回目の転生先は再び現代の日本、見慣れた風景過ぎて最初は少し泣けてきたよ。(赤ん坊の姿で号泣していた)
そして俺は今回の転生では、完璧な立ち回りをするために前準備を一生懸命していた。
情報収集、武装収拾、肉体強化、各組織との交流。あらゆる状況に対応できるように、これでもかってくらい用意周到に準備を行った。
来る日も来る日も、地道な鍛錬を行い、本当に地道に地道に成果を上げていく。
自身にできることが少ないと分かって尚、自身に出来る範囲を可能な限り上げようと努力した。ただ愚直に努力を続けた。
因みに、俺がこのようなことしているかというと――転生を繰り返すたび、死にかけるのが嫌だからだ。
毎度毎度、化け物みたいな奴に瀕死の状態に追い込まれて、何とかギリギリのところで競り勝つの繰り返し。命が幾つあっても足りない。
さっきも言ったが、俺はもう二回死んだからな……?
俺が相手をするのは、〝神の残骸から生まれた新たな神〟や〝神に成り得る生命体〟といった規格外の化け物みたいのばっかりだ。
まあ、修正者はそういうのを相手にする職業だから仕方ないのだが……。
言っておく。自慢じゃないが俺の能力は全て平均値、平々凡々な一般人、正真正銘ただの凡人だ。他より優れていることなんて……ないことはないが、それは別に褒められるようなものじゃない。
―――俺という人間は本当にすっぺらい、何もないに等しい空白だらけの人間だ―――
そんな俺がなんの準備なしに化け物と戦って勝つなんて、奇跡でも起きない限り不可能。というか現に、その奇跡が起きたおかげで三回の転生を乗り切っている。
死にはしたけど……
というわけ経緯で俺は、前準備の大切さをこれでもかと理解しているのだ。
……あ、因みに言っておくけど、俺は女神に特殊能力の類の力は貰ってないからな?
チート能力で無双的な展開、俺にあると思うなよ? そんな展開があったならこんな愚痴零してねぇんだよッ!
…………いや、別にアンタらにあたることじゃないんだが……。まあ、マジで女神からそういう感じの能力は貰ってないからね? ガチで。マジマジ、大マジ。
転生系のテンプレ的にチート能力を与えられるのが一般的だと思うのだが、俺の知っている女神様はそんなに優しくない。転生以外は全て自力である。
女神曰く――
『チート能力? そんなの必要ないでしょ。それにあなたに変に能力渡したら後で怒られるもの……――』
――いやッ! 俺が戦わなきゃいけない相手を考えたら普通は必要だろうがッ!? と、当時は思ってたね。
なぜ頑なに、能力等々をくれないのか知らないが、ないものねだりしても仕方ないということで、そこらへんのことはもう忘れることにした。最初からその存在を知らなかった、と考えた方が気が楽でいい。
そういうわけで俺は他の世界(前世)の記憶、それとそこで培った技術を受け継ぐという転生システムの副産物的能力を除けば、個人では何の力も持たないただの一般ピーポーである。
あ。一つ、いや二つだけ例外はあるか……。
ふと、例外を思い出したが、それはまた今度にしよう。正直、一つは危険過ぎて思わず思考から外していたことだ、今はどうでもいいだろう。
さて――ここで本題だ。
先程説明した通り、俺は今回の転生では完璧な状況、完璧なコンディションで事に対応する準備を整えていた。今までのお粗末な準備で挑んでいた俺とは比べものにならない。素晴らしい仕上がりだ、と思わず頷くほどだ。
気づけば季節が何度も過ぎ、転生してから十六年の年月が経ち高校生となった。
安穏な日々、俺はただひたすら事が起きるまで気を張っていた過ごしていた。準備はできている、ドンと来い! そんな事を考える日々の中、突如として俺にとっての最悪が訪れた。
努力の崩壊、その言葉が一番適しているだろう。
――感の良い者なら何となく分かるだろう?
今現在、俺がこんな独り言を内心で吐露し、修正者になってからの最悪な日々に対しての愚痴を零しているのにはわけがある。
異世界転生ものと同等に存在するアレが俺の身に起きたのだ。
まあ、同じくらいというか、系統的にはかなり近しいものだ。なろうでは定番の種類だろうし、この役職についていれば、一度は経験するのではないか?
現に俺はこれが一回目それに該当するだろう。(いや、ないか……転生できるの俺だけだし)
逆にスゴイね、って感じになるほど気分が悪い。最悪だ……。
俺の身に起きたことが〝最悪〟と表現されるのは、俺が既に転生して十六年もの時を過ごし――全ての準備を済ませていることであろう。
つまり、自身の肉体や身に着けている物以外は全てリセットされる事と同意義である。それはもうびっくりするくらいスッキリと
十六年という月日と苦労は全て無意味に、泡のように呆気なく消えてしまったのだ……。
そう、俺は今まさに――異世界に召喚されたのだ。
「転生先で召喚された?――笑えねぇ……笑えない。マジで、全然……う、嘘だぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
崩れ落ちるように、その場に膝を着けた俺は周囲の目など気にせず純粋に叫んだ。それはもう、恥も外聞もなくただ純粋な心の叫びだ。
だって十六年だぜ? もう笑えてくるほど残酷な仕打ちだ。
不幸体質――周囲の人間に比べダントツで運が悪いことは自覚しているが、それにしてもこれはあんまりだと思う。
「はぁ……全く以て、最悪だ……――」
俺こと天無――現在名、敬也は全ての苦労の破砕と共に新たな世界を生きることになる。
これは―――神を討つ物語―――
何も知らぬ少年はただ一人、赤く染まりつつある空白の世界を歩く。
始まりと終わりは巡り巡って舞い戻る……今は、そう……ただ始まるだけの話――
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