異世界の錬金術師 〜数百年後のゲームの世界で目覚めた僕は、最強の女の子として頑張ります〜

フユリカス

0.プロローグ

 『レベルが999になりました。すべてのレベルが上限に達したため、称号『無上の錬金術師』を獲得しました』


 ――やった、ついに僕はやり遂げたのだ!!


 すべてのレベルが限界値に達し、新しい称号を獲得したシステムメッセージを見て、僕はガッツポーズをした。

 僕が寝食を惜しんでハマっているゲームの名前――『アルケミスト・オンライン』、通称『AOL』と呼ばれるフルダイブ型のMMORPGだ。

 アルケミストっていうタイトル通り、このゲームは錬金術師にフォーカスしているので、プレイヤー全員が錬金術師となる。


 ――もちろん、僕も錬金術師だ。


 ゲームの錬金術師といえば、素材を調合したりして様々なものを創り出したりする生産職の1つだけど、AOLの場合はちょっと違う。

 錬金術師という大きな枠組みの中に、薬師、鍛冶師、服飾師など、多くのクラスがあるのだ。

 クラスには生産系だけでなく剣術や魔術などの戦闘系のものもあり、AOLではクラスが限定されないので、1つのキャラで剣術や魔術が使えたりするわけだ。

 これらクラスにはレベルが10まであり、そのレベルによってスキルを習得することができる。

 もちろんクラスレベルとは別に、キャラ自体の基本ステータスに関係するレベルもある。

 そして今ようやく、僕のキャラのレベルが上限の999になったのだ――。


「うおぉぉ……つ、ついにオールカンストしたぞ……!」


 素材採取をしながら出会ったモンスターを狩り初めて小一時間、長い長い時間と労力、それに大金ともいえる額のお金を掛けて、すべてのレベルがカンストとなったわけだ。

 感無量、僕の青春を捧げただけに感動もひとしおだ。

 ……あれ、青春ってなんだっけ?


「おめでとうございます! ミスト様!」


「ご主人様、おめでとうございますです!」


「主様、おめでとうございますわ!」


「……お館様、おめでとうございます」


「ありがとう、みんな!」


錬金術師アルケミスト』から取って、キャラに『ミスト』と名付けた僕に向かって祝ってくれる麗しい女性たち。

 彼女たちの名前はアンジェ、セラフィ、リリス、チヨメと言い、『サポーター』と呼ばれるいわゆるお手伝いキャラだ。

 このゲームは『ソロでも楽しめるように』というコンセプトなので、プレイヤーには彼女達のようなサポーターが、スタート時に必ず1人付いてくれる。


 ――そう、ぼっちにも安心なのだ!


 とはいっても、より強い敵と戦うにはサポーター1人では難しいので、僕のようにサポーターを増やして戦力を拡大しなきゃいけない。

 サポーターが増えれば『ホーム』という組織を結成することも可能だ。

 ゲームによっては、クランなんて呼ばれたりもする定番のアレね。


 ――でも、増やす方法はガチャのみなのが難点なんだよなぁ。


 無料でもポイントを貯めれば出来るけど、当然お金を掛けた方が手っ取り早いし。

 ただし彼女たちにはランクがあって、それが高いサポーターはドロップ率がエグいわけで……沼にハマるととんでもないことになっちゃうんだよね。

 まあ、そうやって手に入れたサポーターでパーティーを結成し、より強大なモンスターと戦っていくのがこのゲームの醍醐味なのだ。


 ――ま、あくまでこれはぼっち向けのやり方であって、別のプレイヤーと協力してやるっていう方が一般的な気がしないでもないけどさ……。


 ランクには、レアSRスーパーレアSSRダブルスーパーレアURウルトラレアEXRエクストラレアと5種類ある。

 ちなみに、アンジェはこのゲームを始めたときに一番最初に引くことの出来るガチャで運良く手に入れた、EXRエクストラレアのサポーターなのだ。

 その後もリアルマネーと時間を大いに費やした結果、セラフィ、リリス、チヨメといったEXRエクストラレアを筆頭に、多くの高ランクサポーターを仲間にすることが出来た。


 アンジェはバトルメイドといった見た目で、透けるような白く銀色に輝くボブカットが特徴的だ。

 空のように澄んだ蒼い瞳も綺麗で、メイド服に身を包んでいて、とても可愛い人族の女の子といった感じかな。


 セラフィは天使族という種族で、アンジェより背が低く、眩しくなるような金色に輝くツインテールをしている。

 瞳の色も金色に輝いていて活発そうに見えるし、まあ実際そんな感じの性格だね。


 リリスはアンジェの様な白い肌で白いロングヘア、赤く輝く瞳を持つ『真祖の吸血鬼』。

 種族的には魔族になるみたいだ。

 身長はアンジェと同じくらいあり、まるでグラビアモデルのようなスタイルをしていて、性格は少しおっとりした感じかな。


 チヨメは彼女達の中で最も小柄で、黒髪で少し茶色がかった瞳をしている。

 人族でくノ一っていう肩書からして、見た目完全に日本人っぽいから、僕からすると親しみやすい雰囲気だ。

 口数が少なくて大人しい性格で、あまり表に感情を出さないタイプだ。


 そして全員に共通するのは、見る者すべてが振り返るような容姿ということだ。


 ――うーん、素晴らしい……さすがEXRエクストラレアといったところか。


 もちろん僕自身の容姿も自信がある。

 種族は人間、金髪で身長も高く筋肉質というザ・主人公といってもいいほどの超イケメンだ。

 これなら彼女達の隣に並んでも見劣りはしないだろう、ふふん。


「なかなか長い道のりだったけど、これもみんなのサポートのお陰だね。ありがとう!」


「もったいないお言葉です。すべてはミスト様の努力によるものです!」


「えへへ、ご主人様が頑張ったおかげなのです!」


「はぅ……そのようなお言葉を頂けるなんて……! どうかお気になさらず……」


「……お館様が喜んでくれれば、それは私にとって至上の歓び。感謝など不要です」


 これまでみんなには本当に助けられてきた。

 EXRエクストラレアサポーターということもあって、ここまで来れたのも彼女達の力がなければ不可能だったと言っても過言ではない。


「おっと、称号と一緒に報酬のアイテムが結構あるな。どれどれ……」


 こんなぼっちの僕だけど、実はかなりの廃人ツワモノで、AOLではトッププレイヤーだと自負している。

 僕以上に攻略が進んでるプレイヤーはいないはずだし、オールカンストした人はまだ聞いたことがない。


「ほうほう、これはなかなか……むふふ」


 つまり、この称号も今確認してるアイテムも僕が初めてのはずだ。

 称号は雀の涙程度のステータスアップのお飾りだけど、報酬アイテムがヤバい。

 かなりレアな素材やらアイテムがいっぱいあるぞ。


「とりあえず確認したやつから『倉庫ちゃん』に送ってくか」


『倉庫ちゃん』とは、僕のサブキャラの『ソーコ』のことだ。

 プレイヤーが扱うキャラには 携帯収納インベントリというものが備わっていて、そこにアイテムや素材を保管する。

 でも、メインキャラだけでは容量が足りないから、大抵のプレイヤーはサブキャラを作って倉庫代わりにしているのだ。

 まあ、たまに気晴らしでサブキャラで遊んだりすることもあるけど、ほとんどはこうやってメインから送りつけるだけだね。


「えーと、これも送って、あとこれもー。あ、これが最後かな……んん?」


 ここまでほとんどソーコに送っていたけど、そのほとんどは知っているものだった。

 だけど、最後のアイテムは僕の知らないものだった。


「なになに、『所持しているキャラクターを新しい世界へと導きます』って説明に書いてあるけど……うん、イミフ」


 何なのかよく分からないけど、とりあえず今日は寝ることにした。

 気にはなるけど、明日からはレベリングもないし、ゆっくり調べてみよう。


 僕はそのアイテム――『転生玉』をソーコに送り、ログアウトボタンを押したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る