ケルベロスが家に来た。
成田要
なぜに魔法陣?
中学生になり、塾に行くことになって、スマホを買ってもらった。
ケルベロスに。
ケルベロスとは、ギリシャ神話で冥府の入口を守る番犬である。見た目は、三つの頭と蛇の尾を持っていて、神話に出てくるということで、ご存知の方も多いだろう。だが、本当にいるのか?
答えを言おう。
いる。それはもうしっかりと、我が家に。しかも喋る。
ことの発端は、私の父のせいで、私が「犬を飼いたい」と言ったら、とんでもないことをした。ペットショップに行けばよかったのに、急に魔法陣を書き出し、ケルベロスを呼んだ。そして契約。以上!
それから色々大変だった。名前をつけようとしたら、「我に名前をつけるとは生意気な…」と言ってきたので、すべて無視し、簡単に「ケル」と名付けた。
こちらも契約しちまったもんは仕方ないので、大事に飼おう、という事になり、父はというと、母と親戚等にこっぴどく怒られた。
「魔法陣なんてこんな歳にもなって書くんじゃあない。」
と言われていたが、
(いやぁ…ツッコミそこ?)
と思った。
ケルが遊びすぎて怪我をして病院に行くときや、ケルが散歩をしたいといい、散歩に連れてったら周りの人にジロジロ見られたりすることはもう慣れたが、問題は大きさだ。今は車位の大きさになってしまい、食う量も、出るもんも大変だ。
そして、飼い続けて五年。私も中学生になった。
周りの子は、スマートフォンなるものを使いこなしており、塾に行くことを理由に親にねだった。母と共に、何故か魔法が使える父に向けて(今回は、魔法陣なんかで呼ぶなよ…。)と、無言の圧をかけ、明日、買いに行くことになった。それはそれは楽しみに私は眠った。そして朝、起きたらケルが呪文を唱えていた。嫌な予感がし、ケルの足元を見たら、魔法が分からない私でもゾワッとするほどの忌々しいオーラを出したスマートフォンが置かれていた。
ケルは、私に気づくと、
「お前が欲しがってたスマートフォンなるものだ!フフン。良い出来だろう?これがあれば世界を滅ぼすことも出来るし、魔王と通話することも可、、ぐわあああああ!!!!」
朝から私のジャーマンスープレックスとケルベロスの情けない悲鳴が響いた。
そして私の中で、二度と魔法関連に関わらないという意思が出来たのだ。
だが。
そんな私が、うっかり世界を滅ぼしそうになり、魔法学園と関わるというのはまた別のお話。
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