第15話 考えても仕方がない

「レオン様がなぜ?」


 私は一人テラスで考え込んでいた。その悩みは先ほど言われた言葉の意味について。『今度は死なせない』そうレオン様は言った。それに時戻りをした、とも。かなりの確率でレオン様によって今に至っていることは確かだろう。時戻りの謎について誰がという点については解決したが、何故かが全くわからない。レオン様にとって私がそれほど重要な人間であったとも考えられないし。


「今考えても、仕方がない、かぁ」


 理由なんてそうやった本人しか知らないのだし私は考えるのをやめた。





 私はテラスの手すりに寄りかかりながら持ってきたグラスの中を飲み干した。考えるのを諦めようとしたけれど、やっぱり衝撃的すぎて頭の中ではレオン様の言葉がぐるぐる渦を巻いている。もう少し、ゆっくりしていたいところだけれど、あまり長い時間テラスに滞在しているときっとアルが心配してしまうだろう。 


「戻ろう。でもこのコート着たままだとやっぱり怪しまれるよね」


 会場に戻る前に私はコートを魔法で作り出した空間に収納した。これは時戻り前にレオン様が作って私に教えてくれた魔法だ。レオン様は本当にすごい方で今までなかった魔法を次々と生み出した。その中の一つが私が先ほど使った収納魔法だ。空間を操りそこに物を収納する、といったものなのだがかなりセンスを求められるものらしく片手で数えられるほどしかその魔法を使える人はいなかった。多くもの時間を費やし、習得した魔法。きっと褒めてくださると思って習得した魔法。やっぱり、お父様たちは誉めてはくださらなかったのだけど。あぁ、嫌な記憶を思い出した。パーティーなんだから楽しまなければね。


「リュシー」


 テラスを出るとすぐ横にアルがいた。なんだかすごい怒っているようだった。ど、どうしたのだろうか。


「アル、戻りました。なにかありましたか」


 とりあえず戻ったことを伝え、なぜアルが怒っているようなのか聞いてみた。少し間が空いたと思ったがアルは口を開いた。


「テラスで誰かに会いましたか?」

「ブルーゲンベルク公爵家のご子息に会いました」


 なんだろう。浮気調査されてるみたい。すごくいけないことをしたみたいだ。いや、実際いけないことはされたのか。婚約者がいるのに誰かと抱擁を交わしたのだから。でもそれ以上にやましいことはないのだからちゃんと話そう。


「私を誰かと見間違えたみたいで軽く抱きつかれました」

「は?」 


 あれ、やらかした。どうやら私は言葉選びを間違えてしまったみたいだ。アルは先ほどよりももっと怒った表情をしている。それに心なしか冷たい風が吹いているような?えっと、どうしようか。

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