⑥
「そうか……てか何でそんなに事件について詳しいんだ?」
「え? それは……」
「それは、私が教えたから詳しいのは当然だ」
しのが流架の問いに答えようとした時、聞き慣れない男性の声が飛ぶ。その場にいた全員は声のした方へ目を向けるとそこには、スクエア型のメガネ、山には似つかわしくないスーツを着た、中年の男性が現れた。
「驚かせて申し訳ない。櫻鈴相談所の皆さん……でいいのかな? 櫻木流架さんに五十鈴輝さん、そして、枢くん」
「はい。俺が櫻木流架です」
「なるほど、櫻木流架か……かつて凄腕除霊師として活躍していた櫻木流星さんのお孫さんのひとり……であってるかい?」
「その通り。どうも初めまして」
「もうひとり……可愛らしいお嬢さんがいたのでは?」
「随分、お詳しくて? 誰から聞いているのか」
輝が問いかける。
「あ、いやいや……気を悪くなったなら、申し訳ない」
「いえ大丈夫です。確かに、ウチにはもうひとり、従業員がおります。ですが、あいにく、別行動で」
「なるほど。そろそろ私も名乗る必要がありますね。
蝶野晴彦と名乗る男は、警察手帳を三人に見せる。その手帳には確かに『警視庁 特殊犯罪捜査班 警視』と記載されていた。
「おい、ちょうの……って」
「私の父です」
「しのさんのお父さん……!?」
枢は目を丸くし、晴彦をまじまじと見る。
「なるほど、こいつは驚いたなぁ。しかも警察、警視とは」
娘であるしのから色々聞いたり個人的に調べていたってわけか……と輝が納得していると、晴彦はコホンと咳払いをする。
「娘がお世話になっています。まさかここで流星さんの後継者に会えるとは」
「じいちゃんのこと知っているのですか?」
「もちろん。私は昔彼に命救われたからね」
晴彦は懐かしそうに目を細めた。
「流星さんは確か足怪我したから引退したと聞いたけど大丈夫なのでしょうか?」
「えぇ、おかげさまで。あの後元気に喫茶店の仕事しておりますよ」
晴彦は流架の問いに、にこりと笑って答えた。
「それは良かった」
「では、そろそろ私は仕事に戻ります」晴彦は軽く会釈をするとその場を後にした。
「お父様、お仕事頑張って」
しのは晴彦の後ろ姿に手を振った。
「さて、俺達もそろそろコテージに戻ろうぜ」
輝の呼びかけに流架は頷くと、コテージへと足を進めた。
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