ガサガサガサガサッ


ゆっくりと近づいてくるような音から流架たちが走り出した瞬間、茂みに中をかき分けるように物凄いスピードで追いかけてくる。

「不味い! このままじゃ追いつかれるぞ!」

「もっと早く走れ!」

「無理です……もう……限界……」

走り続け、大人と子どもでは体力も違いすぎるもの。しのの体力が限界を迎え今にも足が止まりそうになる。

「仕方ない。ちょっと失礼」

そう言うと、走る速度を少し下げるとしのの身体をヒョイッと抱え肩に担ぎ上げた。

「ちょ! 何するんですか!?降ろしてください!」

「あのままじゃ追いつかれるだろ! 大人しく担がれてろ!」

出口まであと数キロの所まで近づいた途端、茂みから無数の赤黒い触手が飛び出してきた。

「流架! 後ろ!」

「ッ!?」


ヒュン


輝は腰から素早くナイフを取り出すと、触手に向かって投げ出す。


ボトッ


何かが空を切る音と共に地面に何かが落ちる音が聞こえ振り向くと、襲いかかってきた触手が地面に落ちていた。

「ナイスだ輝!」

「話はあとだ……来るぞ!!」

茂みから姿を現したのは、人間であれば下半身にあるはずの足は無数の触手が生えており、上半身は人間の女性の姿をしていたが、顔は彫刻のように無機質で白目は黒く染まり、血のように赤い瞳は焦点が合っていない。

「こいつは……まるで……」

「スキュラ……みたいですね……」

流架に担がれたまま化け物の姿を口にしたしのは触手の一部に何かが引っかかっている物が見え、よく目を凝らした。

「ひっ! あ、あれは……」

「嘘……だろ……あれ、人の首じゃ……」

しのの声に視線を向けた空は口を手て覆い、ひまりは顔を覆った。そこにあったのは触手に髪の毛を掴まれグラグラと揺れる投稿者の生首だった。


『愚カナ人間共ヨ。ココハ妾ノ縄張リジャ。ココヲ荒スノナラバ許シワセヌ。コノ者ノヨウニ喰イ殺シテクレルワ!!』


牙を剥き襲ってくる化け物を躱すと、空とひまりのもとへ行き、しのを降ろした。

「危ないから離れてろ」

流架は懐から札を出し化け物に向かって放つ。札が張り付くと、そこから炎が立ち上り、化け物は悲鳴を上げてのたうち回った。

「さっすが櫻木流架〜偉大な除霊師、櫻木流星の孫!」

「そりゃあ、どうも! 元暗殺者さんの五十鈴輝くん!」

「ジョレイシ? アンサツシャ? どういうこと?」と空は頭に?マーク浮かべていた。


『オノレオノレオノレオノレ!! 良クモヤッテクレタナァァァ!! 死ネェェェ!!』


暴れ狂う化け物にどんな攻撃も虚しく散ってゆき万事休すと思われたその時。


「危ない!!」

「これでも喰らえ!!」


突如響いた声にと共に閃光弾の光が流架と輝の横をすり抜け、化け物に命中する。後方を見れば、化け物に指を銃のように突き刺す少年と三人を守るように立っている少女がいた。

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