第22話生きた証
今回の本番配信は僕にとっても…それを見た人達全てにとっても忘れられない配信になった。
いつもの様に当選者は3人だった。そこまではいつも通り。ただ一点を除いては…。
******
「…本当に良いのですか?」
「はい。私にはもう、身寄りも何も…それこそ私の家系は私だけですので…」
「言いにくいのですが…もしかしたら本番中に…」
「覚悟の上です…。それに…」
「それに?」
「必ず授かった生命は…この世に産んでみせます…それまで死ぬつもりはありませんのでどうか…」
「………」
******
いつもなら冴子さんが面接した後そのまま本番を迎えるのだけれど、今回は僕に事前に話があった…。何で事前に話があったのかというとそれは彼女の年齢にある。82歳なのだ。そんな彼女の名前は
そんな彼女が配信に応募した理由は生きた証を残したい。血筋を残したい。そして何より好きな人との子を産みたい。そう聞いた。若い頃に一度人工授精を考えたそうなんだけど結局出た結論は好きでもない男性の子供は妊娠したくなかったそうだ…。
そして彼女の強い要望と気持ちを受け取った僕は本番に望む事にした。お医者さんが念の為に近くで待機。色々な医療機械も運び込まれている。
「ごめんなさいね…こんな年寄りを相手にさせて…」
「いえ…ただ…本当に良いのですか?」
「ええ…お願いします」
彼女の目には強い光が宿っていた。それを見て僕もいつもよりも繊細に優しく相手を気がけて本番を行った。
******
ミトさんは妊娠した後、特に健康に気を使い出来るだけ体力をつける事に重点をおいた。そして、見事日本の出産最高齢を塗り替えて出産…。ミトさんの血筋を失くさせないかの様に産まれて来た子供は男の子だった。
ミトさんはしっかり子育てもこなした。子供が保育園に行けば行事にもちゃんと参加。それは子供がまた大きくなり小学生になっても出れる行事には進んで参加していた。
そんなミトさんだったけど子供が小学生を卒業して中学生の入学式を見届けた後、天国へと旅立った…。
ミトさんは言っていた。子供が産まれて来てくれたお陰でとても幸せな人生になったと。子供は生き甲斐だったと…。そしてこんな私の元に産まれて来てくれてありがとうと言っていた。
そんなミトさんと僕の息子のトトは元気に賢く良い子に育っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます