第42話頼まれ事

「好きだよ…ずっと…」


「ほ…本当に?」


「こんな時に嘘なんて、言うわけないだろ?」


「私だけ…私だけ…好きなんだと思ってた…」


「態度で…分かるだろ普通?」


「…言葉じゃないと伝わらない事もあるんだからね?」


「…そう…だな…」

「そうなんだよ…ふふっ…」


『カッ──トッ!!いいよいいよ2人共!表情が2人共凄く良い!(じゅるり…)』



 蒲島君の件から時は経ち、中学ももうすぐ卒業。学校のみんな…というより僕と関わりがある人はみんな僕に対して耐性が出来た様で普通に接してくれるようになった。まだ僕は誰とも付き合ってはいない。早い話童貞だ。童貞といっても毎日の様に搾られているのは察して欲しい…。みんなだよ!みんな!しかも2人まとめて来たり、隙あらば…この先は言わなくてもいいか…。とにかくそんな感じの楽しい毎日を過ごしているしみんなの気持ちは嬉しい…。みんなに対して申し訳ない気持ちはあるのだけれど、待ってもらっている。僕が煮え切らないのは記憶に関係しているのかも知れない。あれからもう1人の僕にも会ってないしね…。


 そしてそんな僕が今、何をしているのかというとドラマの撮影に参加している…。可憐に頼まれたからだ。名字でさん付けで呼んでいたんだけどあれよこれよと名前呼びに変わった。耐性が付いた女子は強いよね。で、可憐と出るドラマは特別ドラマで二時間枠の物

。タイトルは『幼馴染みではもういられない!』。早い話、恋愛物。


 撮影するにあたり、スタッフ1人1人に男性管理局の人間が付いている。現場には柚希、凛、雫が護衛もかねて付き添いで付いて来てくれている。柚希はどうしてもドラマ撮影現場を見たかったから。凛はいつもの通り護衛として。


 そしてなんと、雫も護衛として付いて来てくれている。雫は僕の為に色々習っていたらしい。兄さんを守るのは私です!と、僕の護衛に志願したらしい。得意なものはなんと銃を2丁も使った射撃。狙った的は外さないみたい。銃といっても弾はゴムで出来ているが、人間を気絶、動けなくするには十分過ぎる威力があるみたい。


 ─で、話は戻るんだけどセットは幼馴染みの彼女の家の彼女の部屋という設定通りの可愛い造りになっている。そんなセットの中で可憐と役を演じているんだ。今演じていたのはようやくお互いの想いを伝えあった場面だったんだ。なんとか監督からもオッケーが出て一安心。


「後はラストシーンの撮影だけだね/////」


「え~と…そうだね…」


 可憐が照れているのには訳がある…。残す撮影はラブシーンがあるから…。


「…ドラマの話があった時…どうしても豊君と演じたかったの/////」


「え~と…アイドルの可憐からそんな事言われると光栄です」


「何で敬語なの!?」


 それは僕も照れているし緊張してるから。ラブシーンが過激なんだよね…。可憐はいいのかな?


「ねぇ、可憐?」


「ん?」


「これからラブシーンの撮影なわけなんだけど…」


「う、うん/////」


「ラブシーン演じていいの?しかも相手は僕で?」


「…豊君だからだよ…」


「えっ…」


「私…豊君の配信見た時から豊君が好きで…この役来た時…豊君が引き受けてくれなかったら断ってたし…」


「…可憐」


「私も柚希ちゃん達と同じで豊君以外考えられないから……好きだよ…豊君/////」


「…っ/////!?」


「だから役の上が最初になるけど…私のファーストキス…受け取ってね?」


 普通の世の中で現役アイドルからこんなこと言われたら尊死するよ!?しかも周り見て、周り!?みんなニヤニヤしてるし、鼻血出してる人もいるんだけど!?公開告白じゃん!?



「…今の撮ってるか?」

「バッチリ撮れてます!」

「これ映像ディスクのオマケに入れたら良いんじゃねぇ?」

「流石監督!!」

「空前絶後の大ヒットになるぞ…」

「ホントそれですね…」


 いや、流石にそれは…


「監督是非!」


「可憐!?」


「私の一生に一回の告白だったんだよ?映像に残ったら宝物でしょっ!」


そう来たか…流石だね…。


「私も今度豊和君と映像に残そうかな…」

「アリ…ね」

「兄さん…私も…」


 そこは至らない考えを起こさない様に!



 ─そして、そうこうしているうちにいよいよ撮影が始まった…。



「…キスしていいか?」


「うぇっ!?い、いきなり!?」


「いきなりって…いうわけじゃないだろ?ずっと…好きだったんだから…」


「そ、それは…私だって…」


 ベットに腰掛ける可憐の傍に寄り添う様に腰掛け…


「…好きだよ」

「私も…」


 可憐が目を閉じると同時に2人の距離は縮まり唇が触れ合う…。そしてそのままベットに可憐を押し倒し………………………………

カットは!?ここでカットじゃあなかったっけ!?もう少し演じるのか?可憐の唇を何度も啄む様にしているうちに可憐の顔が蕩けてきてるんだけど!?


「…………かかかかかかカッートォォ!」


 ようやくそこで監督の声…。ヤバかったからね?主に僕の理性が…。監督はどうやらキスした所で興奮し過ぎて気絶したらしい。周りが止めなかったのは場の雰囲気が止めてはいけない気がしたからだって…。そこはちゃんと止めようね?そして可憐…。そろそろ離れようか?こら、そんなに押し付けて来たらヤバいから!!!撮影終わってるから!!!キスしたら駄目だって!?



 と、とにかく、最後は大変だったけど、そうして出来たドラマは瞬間最高視聴率、円盤の売り上げ等、好評を博した…。


 そして、中学も卒業間近という所でようやくもう1人の僕に会ったんだ…。その切っ掛けは間違いなくドラマ…。全てを思い出す時が来たのだと思った…。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る