第10話眞島さんとの話

「私…絶対に上から怒られるわね…」


「ご迷惑お掛けします…。僕に出来る事なら何でもしますから…」


「…今、何でもって言った!?」


「えっ…と、僕に出来る事なら…」


「ぐふっ…フフフフフッ」

「下品ですよ局長?」

「…局長…後で円香さんに報告しておきますね?後、顔が汚いです…」

「ちょっ!?それは駄目よ!?私が軽く死んでしまうからねそれは!?それと顔が汚いって何なわけぇ!?」


 早まった事言ったかな(汗)?と、少し後悔しつつも冴子さんと冴子さんの部下の女性2人と僕の計4人で警察署へと向かった。勿論彼女に、眞島さんに会う為に…。時刻はもう夜の20時を過ぎていた。警察署に着くとすぐに個室へと通して貰いそこで眞島さんに会う事を取り継いでもらったんだ。暫くすると警察の人数名と一緒に眞島さんが個室へとやって来た…。僕の顔を見て彼女は驚いているのが見てとれる。そしてそんな彼女の両手は手錠で繋がれていた…。


「…何しに来たの?こんな風に手錠に繋がれてる私を笑いに来たの?それとも捕まった私に直接文句でも言いたかったの?」


「…ここに来る前に調べて貰ったんだ…君の事…」

(そう…僕は彼女についてここに来る前に色々調べて貰った…)


「…なら、知ってるんでしょ?私には父と母が居た事も…アイツ等に襲われて…必死に抵抗して…アイツのアレを潰した事も…」


「…うん、知ってる」


 二年前の彼女の父親と母親の事はテレビや新聞にも取り上げられていた。流石に本人の同意なしにそんな事したら男性でも捕まるに決まってる。勿論母親もだ。なにしろ暴力迄振るって無理矢理しようとしていたのだから。新聞の見出しは[男性 娘を襲い潰される]と、デカデカと書かれていた。


「あれは眞島さんの正当防衛でしょ?」


「…周りはそう思わないよ?確かに両親は 捕まったけど…そうは思ってはくれなかった…。アイツは危険だ…とか、潰すなんて悪魔じゃないか?とか、色々言われたわよ?」


 眞島さんは淡々と話してはいるつもりだろうけど怒りや憎悪といった感情が表情や声に出ていた。


「…元はといえば全ての元凶は男でしょっ!アイツが居なければこんな事にならずに普通に生きていけたのにっ!…だから…だから私はアイツと同じ男であるあなたに!」


「逆恨み以外の何物でもないわね…。豊和君には全く関係ないのにあなたは罪もない1人の人間を傷付けたのよ?」


「……もういいでしょ?話す事って私達って元々ないよね?」


「あなた豊和君にあんな酷い事しておいてよくも!」

「冴子さん!落ち着いて…」


「…ふぅー…あなた分かっているのよね?この後どうなるか?」


「…っ!?………分かっているつもりです」


「一つだけ聞かせてくれない?」


「…何を?」


「靴に画鋲を入れたのは眞島さんだよね?」


「あなたそんな事まで!?」

「冴子さん?」

「分かったわよ…黙ってるわ。でも、後で問い詰めるからね?」


「だから…何?ああ…分かったよ。問い詰めたいんだよね?ついでに…ブルマも入れたのも私だよ…。これでいい?あなたの聞きたい事はこれだけよね?」


「うん…そうだね……そうだ。ゴメンだけど後一つ、後一つだけ良いかな?」


「…早く終わらせて」


「死ねとか机に刻まれていたけどあのまま犯人が分からなかったら僕の身に何か起こってた?」


「…っ!?そ、それは…あなたが家から1歩も出なかったら…」


「眞島さんってさあ…ジャージを切り刻んだりした犯人じゃないよね?もう1人いるよね?」


「「「「「「…えっ?」」」」」」


「庇ってるんだよね?手越先生を…」


「はぁーっ!?豊和君何言ってるの!?」


 個室に冴子さんの大きな声が響き渡り、眞島さんの目が大きく見開かれていた…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る