第26話 もう一人の獣人の守人

六芒星のそれぞれは、寺社仏閣が多く、それらが陣を守る役割を保っていた。そこには、必ず、守人がいたが、創宇や伊織の様に、人型ばかりではなかった。陸鳳や陸羽、看護師の使い魔、陽葵の様な、獣神も、中には居た。獣神と人型。衝突する事は、多いのに、陣を作り上げた咲夜姫は、相反する者達に、陣を守らせていた。その獣神の一人、創宇や伊織の真逆の封地であり、例の図書・美術館の隣に、黒衣の鳥人、菱王が居た。突然、現れた桂華達を、彼は、快く思っていなかった。しかも、得体の知れない呪いを背負っているではないか。

「この地ではない・・・が、全く、この地に縁がない訳でない」

時折、この女性2人組は、この図書館に現れているが、それまでは、何の違和感もなかった。

「妙な縁を連れてきたな」

菱王は、よく回るその首で、止まった鳥居の上から、見下ろしていた。視力は、六神の中で、最も良く、桂華が背負ってる赤い影がよく見える。海外から連れ帰った者が、何なのか、わからないが、この陣に、みすみす入れる訳には、行かない。

「ただの人間の女性の様だが・・」

菱王は、翼を広げ、鳥居の下に降りると、その翼に中から、何枚かの羽を、息を吹き掛けた。

「しゅわ!」

一瞬、青白い炎が上がると、一枚一枚の羽は、燃え上がり姿を変えていく。五本指で地を這う、手首の妖が、蜘蛛の様に地を這い出した。

「まずは、様子を見なければならん」

そう言い、放った妖と共に、桂華達の元へと飛び立ったのだが、とんでもない邪魔が入った。片目の獣神、陸羽だった。

「ほう・・・まだ、陣の外にも、獣神が残っているのだな」

昨今、獣神は、地上を捨てたと聞いていた。六芒星の守護神を除いて、出会った獣神は、今までいない。

「珍しい。様子を見させてもらうよ」

陸羽の動きが気になったが、接触は避ける事にしていた。だが、直接、陸羽と対峙する時がやってきた。それは、陸羽が気にする桂華達が、行方不明になった皇子を探す為、創宇と伊織が守護する寺社を訪れた時だった。そこは、陸羽が目指す陸鳳の医院の延長線上にあった。桂華の赤い呪いは、彼らから、よく見える。

「どこに皇子がいるのか、わかるの?」

桂華は、突然、友人を人質に取られ、焦っていた。皇子を見つけないと、大変なことになると脅されていたからだ。

「そう簡単に、何かが、起きる訳ではないと思うけど」

過去に、山神達に救われた事は、何故か、忘れていた。それでも、何となく、心強い者がいた気がした。

「名前は、何だった?」

思い出せそうで、思い出せない。その姿は、どうだったのか・・。

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