第24話 逃げ出した栗鼠は陣の中
時々、創宇は、何処へとなく消える。伊織に全てを任せて、何処かへと去って行くが、それが、どこなのか、伊織には、教えてくれない。長い間、一人で、ここを守ってきた。創宇と初めて会った時は、衝突し、戦う羽目になった。が、伊織が叶う筈はなく、時間を超えた存在、時量師と知ったのは、後からだった。時折、ひどく老いて見える事があったり、その反対、若く見える事もあった。創宇は、謎の人だった。六芒星の守護者が、集まった時も、一人、創宇の雰囲気は、異なっていた。陣を編み上げた創始者の守護者と言う者もいたが、どうして、武将の守護者なのか、皆、首を傾げた。誰も、陣を編み上げた創始者が、咲夜姫だとは、知らなかったからだ。もちろん、伊織も知らない。創宇は、時折、時間の間に飲まれそうになる。むしろ、飲まれてしまいたい。そう、思っていた。どうして、自分だけ、時の流れh、避けていくのか・・・。一人、咲夜姫の棺の前で、自分に訪れた深い闇を見つめている。伊織は、創宇の留守の間、創宇が、抱えてきたキャリーバックの中にいる小さな生き物に、気を取られていた。
「どこからきたのだろう?」
栗鼠だと思った。小さく、クリーム色が混じった太い尻尾の生き物。バックの中を上や下へと動き回り、落ち着かない。鼻をひくつかせ、辺りを窺っている。
「そんなに、動き回っても出れないよ」
伊織。見た目は、強面だg、こう見えても、生き物には、優しい。動物達は、伊織にすぐ懐く。それが、わかってか、伊織も、この栗鼠が自分に、懐くのか、興味があった。
「可哀想に、あいつに捕まったのか?」
少し、この愛らしい動物の顔を覗いてみようか?伊織は、そう思った。バックの陰になり、顔がよく見えない。
「後、少しで、顔が見えるんだけどな」
伊織は、少しくらいならと思った。ほんの少し、そこにいる栗鼠の顔を見るだけ。キャリーバックの間から、除けば大丈夫。そう思い、バックの間を少し開けた。
「うわっ!」
ほんの少し、バックを1cm程度開けただけである。その隙間から、液体の様に栗鼠は、すり抜け、正体を現したのである。
「お前は?」
伊織は、身構えたが、創宇の能力の方が上だった。栗鼠の姿から、正体を表したのは、幼い子供の姿だった。
「お前に、私は、抑えられない」
生意気にも幼い子供は、伊織にそう言うと、急に向かってきた。
「さっきの男とは、全く力が違うな」
笑うと伊織の背中を駆け上がり、両肩を踏み台に、宙へと掛けがって行った。
「待て!」
栗鼠の様に、身軽な幼い子供は、宙へと消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます