探し戦
黒縁めがね
プロローグ:一つの願い、探し戦の始まり。
地割歴1236年、ライカード王国は、ミレス帝国に宣戦布告。
それと同時に攻撃をライカード側が仕掛けた事で、帝国側の国境沿いの地域・フェルムランは対応しきれず大打撃を受けることとなった。
草原を走り回るのはストロベリーブロンドの髪、エメラルドカラーの瞳の子供、デイビッド。
それを追いかける形で銀髪の子供が走っていた
デイビッドの幼馴染、メネだ。
「デイビッド!待って!」
「あはは!」
デイビッド達はどうなら鬼ごっこをしているようだ。
デイビッドにごろごろと走りながら倒れた。
「あはははは!」
「はあ、はあ、早いィ!手加減して、よぉ!もお!」
息をきらしながらメネは文句を垂れる。
ごめんごめんとデイビッドはメネに謝る。
「……いつまでこうして遊んでられるのかな。」
「さあ、わかんない。ずっとじゃないかな、いや、ずっとがいいな!」
「ふふ、じゃぁずっとだね!」
メネは予想外の問いの返しに笑って同意した。
「デイビッド!メネちゃん!帰っておいで!」
遠くからデイビッドの母親が2人を呼ぶ。
2人は二つ返事でデイビッド母の元へ走って行った。
(ずっと、ずっと、こうして2人で遊んでいられたらな、いいな!)
そう思うデイビッド。
〜〜〜
息が荒い。
手が、赤く濡れている。
デイビッドはお腹を赤く染めた母親の前でただ跪いていた。
「かあ…さん…?
大丈…夫……だよね?
言われた通り…男の人が出てくまで隠れてればお母さん大丈夫だって……」
「デイビッ…ド、お母さんは…大丈夫だから…
メネちゃんの所に………行って___ 」
そう言うと母はぐったりとして、動かなくなる。
「あれ?…なんで…動かないの?…あれ?
母さん……母さん…!?」
問いかけに母が応じることは無かった。
デイビッドはドアを開ける。
夜空が見えない。
夜なのに村が異様に明るい。
理由は火による物____火で家が燃えた明るさのせいだった。
剣を持った男達が、闊歩して、剣を逃げようとする人や抵抗する村の人にふるう。
デイビッドは目をつむるように、目を背けるようにメネの家の方角へ走って行った。
メネの家へ着いた。
メネの家は木こりで森の近く、村の外れにあるおかげか剣を持った男達は来ていなかった。
ドアを叩くと、ドアが開けられた。
「デイビッドぉ!」
そうメネは叫ぶとデイビッドに抱きつく。
「お父さんがね、お父さんがね!
帰ってこないの!お買い物に行くって言ってから帰ってこないの!」
半泣きになりながらデイビッドへ訴える。
「大丈夫、きっと大丈夫だよ…」
デイビッドはメネの手を引いてドアの中へ入る。
ドアをデイビッドは閉めた。
「デイビッド、村の人達は、どうなったの?」
「…男の人達、剣を持った男の人達がね…」
それ以上は話せなかった。
メネもそれを察したのか、デイビッドから視線を外す。
しばらくの沈黙。それを破いたのは2人では無かった。
「!」
「あぅ!」
ドアが一瞬にして燃え上がり、倒れる。
デイビッドはメネの手を引いて家の奥へと逃げようとした。
「メネ!メネってば!」
「あ…あぁ…」
メネは、地面にへこたれて歩けないようだ。
倒れたドアからは頭に羽の頭冠をつけた鎧を来た騎士が。
騎士はこちらを見ると、何かボソボソと粒いている。
「立って!立ってってば!」
「____-ーー_ーー。」
「うわぁっ!」
「…きゃあっあ!」
また何かボソボソとつぶやいたと思えば、騎士は兜の隙間から激しく燃え上がった。
そしてその炎は兜から胴体、腕、手___
上から下へと伸びいき、それは体だけではなく剣にも移っていた。
「/--〜____。」
「うふぇあっ」
また何かボソボソと呟くと、ものすごい熱波に襲われ、デイビッドは向かい側の壁まで吹き飛ばされた。
頭を打ったようで、意識が朦朧とする。
燃え始めた家、火は早く回ったようで息が苦しい。
炎の騎士は彼女を抱えて家を立ち去ろうとしていた。騎士の体の炎は人には燃え移らないのか眠ったように目を閉じているメネは無事のようだった。
「かえ…して…ぜんぶ、母さんも…村も、メネも…ッ」
そこまで言うと僕の意識は途切れたようだ。
〜〜〜
「おはようございます、トリュグさん!」
「おう、おはようさん。」
僕はトリュグさんに拾われた。里親の養子として、家に迎えられた。
トリュグさんが作ってくれたパンに溶けたチーズのかかったものや、レタスとトマトときゅうり、玉ねぎのサラダが2人分並べられていた。
「いただきまーす!」
「召し上がれ。」
デイビッドは朝食を食べていても、思い出してしまう、メネの事を。
(メネは無事かな…)
そう考えてしまう。
「…デイビッドは何か欲しい物はないのか?」
「え…あっと…」
デイビッドはあれからずっと探す方法を
考えていた。軍だ、志願兵でもなんでも、軍に入ればいい。
炎の騎士を探せば辿り着くんだ、メネに。
「…軍に、志願したい…です。
「…なっ…わかった、いいだろう。」
デイビッドはトリュグさんに言って、しまった
〜〜〜
私はデイビッドと言う子供を拾った。
戦争孤児らしい、この子は今年で17だ。
心の傷がおおきいのか、何一つ、何一つとして欲しい物をねだったりすることが無く、ただ
寂しい顔をしているばかりだった。
きっと家族を失ったショックなのだろう。
聞き出す事ができなかった。
「いただきまーす!」
「召し上がれ。」
そのくせ元気いっぱいに振る舞うものだから
無理をしているようで、純水にも見えるような笑顔はいつも風で飛んで行きそうだった。
実は私も親を失った事がある。
21年前。私が9歳の時、山賊が家へ押し入り
家族を殺された。
そんな自分とこの子を重ねてしまう。
ご飯を食べる時の寂しそうな表情や、物欲しそうな表情。
「…デイビッドは何か欲しい物はないのか?」
「え…あっと…」
聞いてしまった。
いけないのに、この子の心に土足で踏み入ってしまった。
だがデイビッドは何一つ嫌な顔をせず
「…軍に…志願したい…です…」
「なっ…」
驚いた、何も願わなかったこの子のことだからきっとぬいぐるみやペットの一つでも欲しがるんじゃないかと…私は1人になってしまうのだろうか、そう思うと少し怖かった。
だけど、だけどこの子の願った事だから、叶えてあげたかった。
自分の願ったことだから。
「…わかった、いいだろう。」
押してしまった、背中を。
〜〜〜
玄関に立った僕はトリュグさんに言う。
「それじゃあ、行ってきます。」
「…デイビッド、頼む死なないでくれよ。」
トリュグさんは肩を掴んでそう言った。
デイビッドの肩を掴んだ手を見る。
震えている。
死ぬのが怖いのか、帰ってこないのが怖いのか
両方の恐怖が入り混じった不安。
それを感じていたのは僕だけじゃなかった。
(こんなに大切にされているんだ、いつか返さないと。この恩を)
そう決心したデイビッド笑顔をトリュグさんに
向けると、振り返りドアを開けた。
きっと絶望や恐怖が待っているんだろうな、戦場には。
だけど、戦わなくちゃ、また2人で遊べるように。
こんどは、トリュグさんも混ぜて遊びたいな。
人を殺すんだろうな。
だけど、前に進まなくちゃ、殺さなくちゃ。
帰って来れなくても、またお互いの笑顔に
見えるその時まで。
腹を、決めろ。
_______________________________________
はじめまして、黒縁めがねともうします。
これが初投稿になります。何卒よろしくお願いします。
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