第3話
この虐待を終わらせたい。
家族と縁を切りたい。
一番簡単な方法は自分か家族を抹〇することである。
最終的に私が選んだのは自分の〇ではなかった。
私はまだ生きたかった。
誰一人知り合いのいない世の中でも、誰からも顧みられることがなくても、大手を振ってきれいな景色の中を歩いてみたかった。
一番行ってみたかったのは、緑のある公園のような場所だ。
砂場で遊んでみたかった。
ブランコに座ってそれを漕いでみたかった。
前と後ろに揺れる感覚はどんなものだろう。
鉄棒にぶら下がって逆上がりをやってみたい。
遊具で遊んでみたい。
胸を膨らませていた。
兄弟たちから性的ないたずらをされていたような存在なのだから、私が他の子どもたちと同じように笑ったりはしゃいだりするのを誰かが見たら、見苦しいと笑うかもしれない。家にいる時のように指をさされて「汚い」「こっちに来るな」と言われるだろう。
果たして私のように存在することで社会にとってマイナスな人間が公共の場で、普通の人のように楽しむことが許されるのかと躊躇われるが、もう、これが最後なので行くことにした。
誰もいない夜なら思い切り笑ったりはしゃぐこともできるだろう。
私の姿を見る人がいないし、顔が暗がりで見えないという安心感でより自由にいられると思う。
私はこの世で一番醜い姿をしているようだ。
それは多分、蠢いているウジ虫を見て人々が抱く感情に近い物だろうと思う。
私は計画した。
単純だが、家族を皆殺しにするという選択をしたのである。
一番愉快なのは両親を殺して子どもを生かしておくことである。
しかも、男にとって一番大事な部分を切り取って、それを縫合不能なようにお湯でゆでてしまうというのも面白い。
決行は深夜にした。
まず、一番最初に両親の部屋に行き、スマホを回収した。
そして、包丁で二人の寝首をかいてやった。
天井まで血が噴き出して、もがき苦しむ二人にすぐさま止めを刺した。
兄たちの部屋は離れているから、気付いていないだろうと思った。
まず、弟は両親と同じように◎害。
兄は頭部を殴打して気を失わせ性器を切り取った。台所でゆでてやりたかったが、時間がないのでトイレに流してやった。
私はシャワーを浴びて血を洗い流した。
そして、兄弟が子どもの頃に着ていた洋服を着た。
母親が思い出にと取っていたものである。
思い出ってなんだろうか。
それを懐かしむ張本人がなくなってしまったら、ただのガラクタに過ぎなくなる。
私はその一家を葬って高らかに笑った。
私は自由だ。
警察に捕まるまでのわずかな時間でもかまわない。
私は未成年だから刑務所でないところに行くだろう。
少なくとも死刑にはならない。
この家庭以上の地獄はない。
いや、私よりもっとひどい地獄を味わっている人がいるかもしれない。
もっと早く虐待で命を落とす子どももいる。
私はただ目の前の地獄を終わらせることには成功しただけだ。
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