保健室におっさんは似合わない

高取和生

第1話 第一部序章 教員採用試験におっさんは似合わない

小論文テーマ「あなたが養護教諭として何が出来るかを、八百字以内で述べなさい。」


                            受験番号  009837 加藤 誠作


 文部科学省の資料によれば、現在の日本において、全国には約4万人の養護教諭がいるという。しかしながら、養護教諭すなわち「保健室の先生」というと、そのほとんどが女性である。男性の養護教諭は全体の0.12%であり、全国で70人に満たない人数である。

 かつて、看護師は看護婦 、保育士は保母と呼ばれ、それらは女性の仕事として認知されていた。2018年の厚生労働省資料によれば、男性看護師は全体の7.8%を占め、10年間で倍増したという。男性の保育士も全体の3%以上を占めるようになり、保育士全体の給与体系の見直しが進めば、今後男性保育士も更に増加することが予想される。


 しかし、男性養護教諭という存在は、看護師や保育士と同じ状況になっていない。それは何故だろうか。学校におけるジェンダーの壁は、医療現場や保育園よりも厚いからだろうか。


 私には仮説がある。男性養護教諭の進出を阻むものは、ずばり、アダルトビデオを中心とするエロコンテンツの存在だ。つまり、保健室で、白衣の隙間から豊かな乳を揺らせ、男子を誘惑する養護教諭は、絶対女性でなくてはならない。性教育の実践指導を行う養護教諭も、然りである。これが男性養護教諭であれば、どうなるか。小学校に勤務したら間違いなくロリ……(以下、採点者により削除)


 よって男性養護教諭の進出を速やかに行うため、私は主張する。


 第一にエロコンテンツにおいて、「保健室」「養護教諭」のキーワード設定、並びにそれらを彷彿とさせる内容を盛り込んだ場合、厳罰に処する法制化。


 第二に、学校における教諭、養護教諭の性別を意識させない白衣の作成。女性養護教諭には、スラックスタイプの白衣支給を行うのと同時に、男性養護教諭にはミニスカートタイプの可愛らしい白衣の支給。


 今後、男性養護教諭の活躍が広く認識され、より多くの男性養護教諭が児童生徒の健康問題を解決していくために、男女両性の視点での保健室経営は必須である。


 私は本県第一号の男性養護教諭となって、ジェンダーフリーの愛らしい白衣を纏い、子どもたちの健全な育成に助力を惜しまない。




 某県教育委員会人事採用担当による小論文採点

 五段階評価(Eマイナス)

 注:加藤誠作氏の教員採用試験において、今後、すべての教科の採点不要。


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