第5章―少女と着物―
彼は私をチラッと見てきた。男性の人は、奥のカウンターに向かうと、さっきの店員の人と話していた。男の人は店員の人に何かを見せていた。紫色の包みを両手でほどくと、中から見慣れない服を取り出していた。
私は不意にその光景を眺めた。男の人は店員の人に首を横に振られると、肩を落として入り口の方へと再び戻ってきた。私は何気なく、その人に話しかけた。
「ねぇ、おじ様。今の綺麗な服は何?」
「おや……? もしかしてお嬢ちゃんは、日本人かい?」
「わからないわ。でも、日本人だと思う……」
「お嬢ちゃんは日本語がわかるのか?」
「ええ、そうよ。私は日本語も英語も話せるの。でも、難しい日本語はよくわからないわ」
「そりゃあ、たまげたな。お嬢ちゃん見たいな子は珍しいね?」
「そ、そうなの……?」
「ああ、ここでは日本人のハーフの子供は滅多に見ないから、そりゃあ珍しいさ」
「私も久しぶりに日本の方と話せて嬉しいわ」
私はついつい周りの目も気にせずに、おじさんと日本語で会話をした。それはちょっと不思議な気分だった。でも、何だか話していると親近感を感じてしまった。そこで他愛もない話をしていると、おじさんが不意に紫色の包みに入った服を私に見せてくれた。
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