罪の花と運命の糸
律
最強刀術と最弱糸術
この世には頂点に君臨したものに”最強”の称号を与える習わしがある。
その例の一つとして最強と称された刀術があった。
その刀術を見たものは皆、口をそろえて同じことを言う。
「花が咲いた」
と。
その刀術は“生”を操ることができる。花が咲き、枯れるまで。その様子を刀に生き写すことで技の一つ一つに生気という名の力を内包することができる。
この世には底辺に這いつくばるものに”最弱”の称号を与える悪癖がある。
その例の一つとして最弱と称された糸術があった。
その糸術を見たものは皆、口を開けずとも同じ考えを持つ。
「糸が切れた」
と。
その糸術は”運命”を導くことができる。過去から未来へ流れ過ぎるまで。その様子を糸に編み込むことで時間という事象に触れることができる。
この力は聞くと強大な力だが、この糸術には欠点があった。
そんな二つの術。それぞれを扱う術士が対決した場合、どちらが勝つかは分かりきったことであった。
だが、それを覆すことでこの物語は幕を開ける。
「どうしてっ!」
「どうしてって。君こそどうした?」
「こ、こんなことが」
最強の刀術士が最弱の糸術士の前で倒れ伏せている。
理屈から考えればありえない構図。それでもこれが”運命”なのだ。
彼女と彼が初めて互いを認識した瞬間。罪の花に運命の糸が絡まり始める。
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