第75話 レイさんによる解説

愛しのガンマン次元様を思い出し、もう拝見することは叶わない勇姿を思い浮かべていたら、皆に誤解されたおばあちゃん。


『あらあらまあまあ、皆さん、本当に大丈夫ですから』

居た堪れないから放っておいて~


〖そう?なんかあったら言ってね〗うるうる


『え、ええ。その時はお願いするわ』

ああ、主神様の純粋なキラキラうるうるの目が辛いわ⋯


〖まあ、なんだな⋯なんかあった時は言ってもらうとして〗こほん

『なんじゃ、武神様もその様に気を使えるのじゃな』びっくり

天界樹様、涙が引っ込んだとばかりの真ん丸な目ね


〖⋯うるせぇよ、天界樹〗ぶすっ

『それは、すまぬ』くすくす


『あらあらまあまあ』

天界樹様、武神様が赤くなってもあまり可愛くないからやめてあげて⋯


〖何気に酷いこと思わなかったか?レイ〗じと

『あらあらまあまあ、気のせいよ。おほほほ』

あら?するどいわね


じとぉ

〖⋯まぁいい。それより、さっきの武器は魔力なしでも簡単に使えちまうってことでいいのか?〗


『え?そうね。私たちの世界に魔法は無いから、必然的にそうなるわね。さっきの銃は、ざっくり言うと、引き金を引いてしまえば簡単に火薬入りの鉛の弾が高速で飛び出すのよ』


〖ふ~む⋯〗


な、何かしら?一転、深刻な雰囲気に?


〖レイ、さっきの武器は封印だ〗


『え?』

どういうこと?そもそも作り方までは知らないけど?


〖作り方は知らなくてもお前や源なら創造出来ちまうだろ〗じと~

『あ、なるほど?』

具現化ってことは、そういうことになるのね?


〖鉛に火薬って言ったよな?〗

『ええ。言いましたね』

それがどうしたのかしら?


〖この世界は魔法の世界。火薬の代わりに魔法を詰めたら?〗

武神様が質問をぶつけてきた。火薬の代わりに魔法を?


『ええと、便利になる?魔法を使えない人も色んな魔法を打てるし、自分が持たない魔法も打てるし?』

かなり自由になるわね?


〖そうだな。それなら、もう少しヒントだ。レイ、知ってるか?弓を引けば音がする。引く時に間も生まれる。そして、この世界のほとんどの者は魔法を使う時に詠唱を使うんだ。仮に無詠唱で魔法を発動しても多少の間が生まれる。普通なら・・・・、な〗


『普通なら⋯?』

なんかめちゃくちゃ強調されたのが気になるけど


〖たしかに、自分で身を守る手段を持たないもの達にはとてつもなく有用な物となるだろう。だが、力のある者に渡ったら?それがもし⋯〗

『あ⋯』サー

血の気が一気に引いた


〖気づいたか?その危うさに〗

『はい⋯。暗殺者とかに渡ったら、気づかれることなく⋯』

簡単に人を殺せる


〖その通りだ。そんな物騒なもん、広がらないに越したことはない。何も作り出さずに魔法を使うヒントにするぐらいならいいが、具現化はするな〗


『わ、分かったわ』

そうよね。うっかり異世界の物を作り出して、この世界に悪い影響を与える訳にはいかないものね。まして命に関わることになれば大変だわ。今の私の周りには良い人しかいないから危機感が薄れているわね。


『気をつけないと!』ぐっ

特にこれから地上に降りようとしてるんだから気をつけないと。可愛いエルフさんたちも一緒なんだから。何かあったらご両親に申し訳が立たないわ。そうだわ、悪者を見極める魔法とかないのかしら?


〖分かってくれたか。その位慎重になってもらわないとな〗うんうん


『⋯』ぶつぶつ


〖ん?〗

なんだ?


〖武神、途中まではかなり良かったんだけどね〗ぽん

〖何がきっかけなのか、また意識がどっか行ったみたいですよ?〗ぽん


〖はあ?〗

俺がせっかくっ


〖せっかく真面目にいいこと言ったのにね~〗ぽんぽん

〖日頃の行いでは?〗ぽんぽん


〖うぐぐ〗

こいつら、楽しんでやがるな


『まあまあ、妾は感心したぞえ?』

『だな。筋肉だけじゃなかったんだな。武神様』


〖おまえらまで〗ぐぬぬ

人のことをなんだと思ってんだ


『⋯小説なんかだと鑑定とかあるわよね?でも、人に使えなかったり自分よりレベルの高い人には使えなかったりとかあったかしら』ぶつぶつ


すっかり自分の世界のレイさん。


〖レイ、とにかく魔力操作を磨きなさい。そうすれば魔力も上がるし、何でもかんでも空想したものが具現化することもなくなるでしょ〗はぁぁ~

魔神様が悩めるレイさんに正論をぶつけると


『それもそうね。がんばるわ』ケロッ


ずるっ

『さっきまでの悩んでいた姿はなんじゃったのじゃ?』

『さあ?』


レイさん、どこまでもマイペース


『とにかく、力加減を覚えるのが大変ね。魔神様、私の的だけ弱く作ったなんてことは⋯』

〖あるわけないでしょ!?むしろどの的よりも丈夫に作ったわよ!〗くわっ!

『そ、そう』

そんな目くじら立てなくてもいいんじゃないかしら?


『さっきのエルフたちとレイの差はなんだったんだ?似て非なるものって感じだったよな?』

『ふむ。妾には形が微妙に違うようにも見えたがの?』

料理長と天界樹様が不思議がっていると


〖回転速度と質量も違うようでしたね〗

〖そうだな。レイの物は硬く圧縮されて、これでもかと凝縮されていたようだが、エルフたちのはそれに比べるとふんわり丸い感じに見えたな〗

〖ん~レイさんのとんがってない?〗

さすが、皆さんすごいわね。


〖ねぇ、エルフさんたちはどんな想像をしたのかしら?〗

魔神様が質問すると


『我々は多少耳がいいので、レイさんがぶつぶつ言っていたのを拾って真似をしてみたのです』

そう言って自分のとんがった耳をピンピンと弾いてみせる。

『小さくとか、かたくとか、圧縮、あとは聞いた事のない単語や、回転とか、聞こえてきた断片から、想像して打ってみました』

〖なるほど、それだと形までは分からないわね〗

『『はい』』


聞いたことない単語?

『あ、パチンコ玉とか銃の弾とかかしら?』

『そうです。どちらも知らない単語でしたので』

『ただ、玉ということから丸っぽいのかな?とは思ったのですが』

『なるほど』

そりゃそうよね。この世界にはないんだから。むしろそれだけでよくあれだけ出来たわね。すごいわ。


〖それでレイはどんな物を想像したわけ?〗じと

『あらあらまあまあ』

なぜ、そんなにジト目?エルフさんたちへの目とすごい違いじゃないかしら?

〖違って当然だと思うけど?〗じとぉ

『あらあらまあまあ⋯』

ひどいわ⋯しくしく


〖それで?〗

『私が想像したのはこんな感じ⋯魔神様、作っていいかしら?』

勝手に作ったらまた怒られるわよね?


〖まあ、今回はいいわ。でも、やばくなったら消してね〗じとー

『わ、わかったわ』

信用がない気がするわ。かなしいわね


『あれだけやらかしといて、図太いな』

『まあ、レイだからのぉ』

『なるほど』

ちょっと、ひどいわ。料理長と天界樹様まで


〖ひどくないわよ。で?〗

『で?ああ、形ね。パチンコ玉は真ん丸な鉄の玉で、直径一センチ位かしら』

〖エルフ達が打った感じね〗

『『そうですね』』

まあ、玉と聞いたら恐らく丸いものを想像するわよね。


『それで、銃弾はこう、円柱で先がこんな風に丸みを帯びた円錐型?まあ、先に行くほど細くなってるの』

〖愛し子が見せてくれた口紅みたいね〗

『ああ、あの子の宝箱に入ってる色つきのリップクリームね』

私の口紅とお揃いって嬉しそうに宝箱にしまってたわね。



「おばあちゃんちょ、おしょりょい~♪だいじ、ちまいまちょうにぇ~♪」

『あらあらまあまあ、使わないと意味ないのよ?』

「おばあちゃんちょ、おれかけちょきよ~♪」

『おでかけね。ふふ、そうね。おでかけの時につけましょうか』

「あ~い♪」



懐かしいわね~。一緒にお出かけしたいわね。


〖レイ?〗

気がつくと魔神様が心配そうに肩に触れていた。


『え?ああ、ごめんなさい。それでさすがに仕組みは分からないけれど引き金を引くとこれが勢いよく回転しながら飛んでいくのよ』


〖なるほど、反対側が平らだからな。この方が丸より押し出す力が強いか〗

〖先端が尖ってますから、風の抵抗は減るでしょうしね〗

〖武器なら弓矢の矢尻、魔法ならランス系の形に近いですね〗

武神様と工芸神様が分析してるわね


〖攻撃特化な形な訳ね。なら、手始めに手加減する時はその丸い形に、どうしてもの時はその弾の形に、とか使い分けたらどう?〗

〖魔神ちゃん、どれだけ圧縮するかも研究するといいんじゃないかな?そうすれば広範囲魔法にも、撃ち抜くような狙いを定めた攻撃にも色々応用できるんじゃない?〗

〖なるほど。当面はそれでいきましょうか〗

〖そうだね。あ、もちろん的だけじゃなく、周りも強化しないとね〗

〖それは当然よ!〗


『あらあらまあまあ⋯』

何だか根に持たれてる?とにかく、私の当面の課題は決まったみたいね。頑張らないと!


『『ほどほどに(の)な』』

『はい⋯』


あはは、信頼回復も頑張らないといけないかしらね


☆。.:*・゜☆。.:*・゜


お読みいただきありがとうございます。

お気に入り登録、感想、エールなどありがとうございます。

ルパンはやっぱり赤いジャケットが一番に浮かびます。次元様のこの帽子じゃないと撃てないんだよって、こだわりがあった回があった気がするんですよね~。素材に形に重さに⋯記憶違いかな~?


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