第9章 俺、お隣さんとキャンプ

第45話 俺、彼女と買い物に行く


「岡本クーン、キャンプ行こうよ〜」


 今朝から駄々をこねる音奏。たしかに、L級挑戦がバズりすぎて全く配信をしてなかったなぁ。ちょっと落ち着いたし、新しいキャンプ用品でも見にいって久々にキャンプするか。


「そうだな。じゃあ後でキャンプ用分を買いにいって……」


「新しいの買うの?」


「あぁ、ファイヤースタンドと燻製器が欲しかったんだ。それに、音奏の分の寝袋やマットも買ってテントも少し広いやつにしよう」


「えぇ、一緒の寝袋でねようよ〜」


「一応ダンジョンの中なんだから流石にそれはなぁ」


「ちぇっ〜」


「音奏仕事の予定は?」


「しばらく広告は入れてないよ〜、ほら最近バタバタしてたし。それに彼氏との時間もゆっくりとりたいし?」


 と彼女がぎゅっと腕を組んでくる。可愛い……。仕事もしなくていい上に可愛い彼女が毎日家に来るなんて幸せの極みだ。なんというか、配信者ってすごいんだな。まじで。


「じゃあ、買い物行きますか。シバ〜」


「あいよ、なぁ英介。俺もキャンプの時新しい皿ほしい」


「了解、燻製器買うからジャーキーも美味しいの作れるぞ」


「ほんとか? やった!」



***


 キャンプ用品専門店、久々の来店だがやっぱりテンションが上がる。しかも、前まではボーナス後でもなかなか手が伸びなかったちょっといい用具だって買えてしまうのだ。


「いらっしゃいませ〜、ワンちゃんはカートにお願いしますね〜」


「はい」


 音奏がシバを抱き上げてカートに乗せた。シバはちょこんと座るとシバスマイルを店員さんに向ける。やりおるな……。


「えっと、寝袋は……ここか」


 ピンからキリまであるが、音奏のいいやつを買おう。一応、女の子だし。


「ねぇ、岡本くん。私これがいい」


 音奏は一目散にあるコーナーに駆け寄って指差した。



<2人用 寝袋>


「まじ?」


「おおまじだよ! これならキャンプでも一緒に寝れるし〜! ねっ? いいでしょ? これにしよ。ってことはマットもダブルのやつじゃないとダメだね〜。あ、これかっ」


 2人用の寝袋とマット、テントも新しいものに新調しさらにはダッチオーブンにスキレット、キャンプ用の燻製器とチップも買った。ついでにペットショップにも寄ってシバのお皿も新しいものに。


「いや〜、買った買った」


「新しいグッズでキャンプするの楽しみだね〜! お料理も楽しみ!」


「そうだ、美味しい卵がとれるダンジョンにしようか。ふわふわ卵のせカレーに燻製卵、絶品たまごかけご飯……」


「いきます! いきます!」


「ははは、じゃあ決まりだな」


「そうだ、岡本くん。ドラストよってもいい?」


「いいけど、何か足りなかったっけ?」


「う……うん。そのシャンプーとかそういうの置いておいてもいい?」


 突然彼女が照れるもんで俺も恥ずかしくなる。確かに、ほとんど入り浸ってるしデカめのやつがおいてあった方が便利だよなぁ。


「了解。シバ、ドラストは入れないから車で留守番頼むぞ」


「ん、わかった」


 シバを残して俺たちはドラッグストアへと入店する。安心するこの安さ……ちょっとお菓子も買っちゃおうかな。


「俺この辺でカップ麺見てるわ」


「じゃあメイク落としとか探してくるね!」


 しばらく袋麺やらカップ麺やらおかしやらを眺めていると音奏が両手いっぱいに日用品を抱えて戻ってきた。カートにばさっと入れると「ふぅ」と息をつく。


「女の子は大変だな」


「まぁ、一応女の子の配信者だし? 見た目には気を遣わないとね〜?」


「じゃあ、レジ行くか」


「あのさ、岡本くんちょっと待って」


「え? 他に買い残しか?」


「こっち」


 彼女に引っ張られて俺は食品売り場から随分戻って、小さな通路に入った。俺の手を引く音奏の耳が真っ赤になっているのはそういう理由だったのね。


「ほら、カップルだけど……大事じゃん?」


「そ、そうだね」


「わ、私どれがいいとかほらわかんなくて。岡本くんってどれ使ってる……?」


 使ってるも何も、普段はお店にある避妊具を使ってますなんて口が裂けても言えないし……一旦サイズが合ってればいいか。


「ははは、うちにあるやつはこれ、かな?」


「おっけぃ。覚えた。切らさないようになくなったら買い足すね……!」


 といいつつ彼女は俺が指差した箱を5箱ほどカートに入れた。1箱に1個だと思っているんだろうか……それとも??


「ははは、じゃあレジ行こうか」


「う、うん!」


 もしかしたら俺はあんまりゆっくりできない未来なのかもしれない……(嬉しいけど!)






 

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