43話 レッツクッキング!

 というわけで、仲良く三人でお料理タイムです!


 お送りするのは王子、公爵令嬢、虎の獣人という異色のメンバーです!


「視聴者のみんな〜! 準備はいいかな!?


「……こやつは何を言っているのだ?」


「えへへ、クレス様はいつもこんな感じですの」


「なるほど、いつも頭が……うむ」


「自重しないで! 突っ込んでくれないと、ただの頭のおかしい奴になっちゃうから! ……そして、レナちゃんの俺に対する印象って……」


「ち、違うんですの!」


「うんうん、お兄さんは悲しいです」


 まあ、いっか。

 記憶を取り戻してから、真面目な姿なんて見せたことないし。

 気を取り直して、料理を進めていく。


「それで、何をどうするのだ?」


「まずはコカトリス出汁のスープ、砂糖、みりん、醤油を入れます。それを火にかけて、なるべく沸騰しないように気をつける」


「沸騰するとダメですの?」


「うん、折角の風味とか落ちちゃうし雑味が入るからね」


「ふんふん、そうなのですね」


 本当なら出汁の素とか、白出汁があれば楽だけど。

 でも、コカトリスの骨から黄金に透き通ったスープができた。

 多分、美味しくできるはず。

 ……というか、鳥出汁でラーメンとか作るのもありか。


「あっ、そういえば卵って生でもいけるのかな?」


「ふむ、まずは割ってみるといい。我々ならすぐにわかる」


「あっ、そういやそうだったね。獣人の嗅覚は凄かった」


 なにせ毒があるとか、生で食べられるとか、そういうのがわかる。

 それもあって人族に奴隷として扱われてた部分もあるとか。

 毒味役とか、探索で食べられる物を探せるように。

 ひとまず、大きなボールに卵を割って入れてみる。

 すると、ドバーッと黄金色の卵が溢れでる。


「おおっ!? 流石の量だね! これなら、全員分作っても足りるかな」


「はいですの。これが後、二個ありますから」


「それで、俺は何をすれば良い? お主には、他にすることがあるのだろう?」


「うん、そうだね。それじゃあ、これがあったまったら玉ねぎを入れてください。レナちゃんは、出汁のスープに余った切れ端の野菜とか入れて煮込んでくれる?」


「うむ、了解した」


「はいですの!」


「それじゃあ、お願い」


 その隙に、俺は簡単なアイスクリーム作りに入る。

 生クリームはまだないし、今回は初めてだからお試しの意味もある。

 鍋に牛乳を入れ、火にかける。

 その間に先ほどの卵から、卵黄部分だけをすくい、それを別のボールに入れる。

 あとは適量の砂糖を入れて、ひたすらに混ぜるだけだ。


「ウォォォォォォ! ……腕が疲れた!」


「……早すぎじゃないか?」


「いや、これ大変なんですよ」


「どれ、俺にやらせてみろ。今ちょうど、玉ねぎを入れたところだ」


「すみません、お願いします」


「………フヌゥ!」


「おおっ! 早い!」


 ものすごい勢いでかき混ぜられて行く。

 そして、あっという間に理想的な少し白い状態になる。


「ふぅ、こんなものか?」


「ありがとう! 流石は虎の獣人だね!」


「……これで流石と言われるのは複雑なのだが」


「まあまあ、いいじゃないですか。それじゃあ、続きをやっていきます。暖かい牛乳を入れていくので、ゆっくりと混ぜてください」


「わかった」


 少し沸々と沸騰してきた牛乳を、かき混ぜたボールに少しずつ足していく。

 それをゆっくり混ぜるだけで、お手軽アイスクリームの準備は整った。

 仕上げにボールを氷水につけて、常温に戻していく。


「よし、後はこれを冷やすだけだね」


「では、俺は鍋に戻るとしよう」


「俺も仕上げに入るかな」


 すると、厨房にアークとアスナがやってくる。


「おっ、いい匂いするな」


「ほんとね。クレス、マイルさんから伝言があるわ。今日は屋敷の中で食事会をするそうよ。一応、ドワーフ族とかの歓迎も兼ねて」


「えっ? そんなに人数入るかな?」


「だから食堂と、一階にあるパーティーボールを使うって」


「あっ、なるほど。それなら、まだ住民も少ないし入るかな。そしたら、そこに持っていけばいいってことね」


「ああ、運ぶのは俺達も手伝うぜ」


「というわけで、出来たら呼んでね」


「じゃあ、もう部屋の外で待っててくれる? すぐにできるし」


 二人が頷き、一度部屋から出る。

 そしたら、俺も仕上げに入ることにする。

 俺の周りに、料理人達に集まってもらう。


「さて、これから親子丼という物を作ります。これは一個ずつ作らないといけないので、皆さんも覚えてください。やり方さえ知っていれば、俺なんかより上手にできるはずです」


「それでは、わたしが進行を務めますの。まずは、何をすればいいですか?」


「レナちゃん、ありがとね。まずは、玉ねぎが入った出汁を小さいフライパンに少量入れます。それを火にかけたら、ぶつ切りにした鳥もも肉を入れていきます」


「煮る感じですの?」


「うん、そういう感じかな。このまま、火が通るまで待ちます」


 そのまま、二分ほど待ち……ひっくり返す。

 再び、二分ほど待てば準備は完了だ。


「火が通ってきたら、といだ卵をおたま一杯分すくって全体に回すように入れます。これでネギを散らしたら、後は蓋をして三十秒待ちます」


「クレス様、ご飯ですの」


「おっ、ありがとう。それじゃあ、蓋を開けて……半熟の状態がベストで、これを器にスライドさせるように——よっと」


「「「おおっー!!」」」


「わぁ……! お上手ですわ!」


「はは、照れますな……さて、これが親子丼です。後は、皆さんでどんどん作っていきましょう」


 料理人達が頷き、一斉に動き出す。

 後は任せておけば問題ない。

 スープの方にも溶き卵を入れて、卵スープの完成だ。


「では、俺は配膳に回るとしよう」


「うん、アーク達とお願い」


「クレス様はどうするのですか?」


「俺は仕上げのアイスクリームを作るよ。とりあえず、常温になったアイスの元をボールから器に移してっと……これでよし。この器達をあっちに持っていくから手伝ってくれる?


「はいですの!」


 レナちゃんと一緒に器を持って、邪魔にならないように厨房の端っこに行く。

 そこに用意していた木箱に、アイスの元が入った器を並べていく。


「さあ、今からアイスクリームを作ります」


「ど、ドキドキしますの」


「ふふ、では——氷の粒よ」


 ドワーフが用意してくれた遮断性が高い木箱に、氷を敷き詰めていく。

 ちなみに、かなり魔力を込めたのでそうそう溶けることはない。


「わぁ……綺麗ですの」


「そいつは良かった。よし、これで後は三十分に一回混ぜるだけだ」


 すると、俺達二人にもお呼びがかかる。


 どうやら、食べる準備が整ったらしい。


 お腹を空かせた俺達も、厨房から出ていくのだった。











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