第4話 魔法

魔法学院の試験までもう時間があまりない。




 魔法に関してはテイラさんに教えてもらった。


 習ったことをもう一度復習しようと思う。




 まず魔法には二種類存在する。


 通常魔法と固有魔法。




 単に『魔法』と言われる時は、通常魔法のことを指す場合と、通常魔法と固有魔法の両方を指す場合がある。 


 通常魔法とは適正があれば誰でも使える魔法だ。 


 火、水、木など様々な属性が存在し、複数の属性を操れる者もいるという。 


 


 次に固有魔法。 


 固有魔法とは名前のとおり、その人固有の魔法だ。 


 他人には使えない、自分だけの魔法。  


 生まれつき、固有魔法を使える人もいれば、後天的に使えるようになる人もいるそうだ。 


 


 固有魔法を使えないから、といった理由で差別を受けることはない。 


 過去に、固有魔法を扱えなかった者が王国騎士団団長(国内最強)にまで上り詰めた例がある。 


 その人の功績が認められてか、魔法による差別は昔と比べて極めて少なくなっていた。 


  


 固有魔法を使えるに越したことはない。 


 俺はまだ使えないがいつかできるようになると信じている。


 


 


 どうやら今の王国騎士団団長は最強の固有魔法を持っているとか。 


 最年少で団長に昇格し、なんでも歴代最強だとか。 


 才能というものは恐ろしい。  


 


 


 


 まださきの進路は決めていないが、ゆくゆくは俺も王国騎士団に入るかもしれない。


 俺も負けていられないな。 


  


 そんなことを考えていたら、いつものトレーニング場所に着いた。 


 


 時刻は午後二時。 


 今日は午前中はテイラさんに勉強を教えてもらっていた。 


 午後からはトレーニングをする。 


 そして夜からはワイルドボアの討伐に参加させてもらう。


  


 それまで今日は魔法の訓練をしようと考えていた。 


 前にも魔法の練習をしたことはあるが、成功しなかった。 


  


 


 それでも今日再び挑戦しようと思った理由は、やはり魔法はかっこいいからだ。 


 俺も炎とか、竜巻とかおこしてみたい!


 試験前でもっと他にすべきことはあるけれど、あふれ出る好奇心を抑えきれなかった。 


 


 と、いうわけで。 


 


 俺は家から持ってきた一冊の本をカバンから取り出した。 


 


 タイトル『魔法入門~猿でも魔法が使えるようになる最強の一冊~』 


  


 新しく買ってきた。


 なんか胡散臭いタイトルだが、村の本屋にはこれくらいしかまともな本がなかった。 


 田舎だと本の種類も少ない。 


 しかし思ったより中身はちゃんとしていた。 


 


 「ええっと、そもそも魔法を使用するには魔力がいるっと」 


 


 通常魔法にも固有魔法にも使用するには魔力がいる。 


 成長やトレーニングにより自分の最大魔力量は変化するらしい。 


 自分の魔力量を測定する道具はないようだ。 


 


 魔力に関しての知識はこれくらいでいいか。 


 


 早く魔法を使いたい! 


 数ページとばして、項目『魔法の使い方 実践編』というページを開く。 


  


 --- 


 


 『魔法の使い方 実践編』 


 まず、体内に流れる魔力を感じ取ります。 


 ゆっくり呼吸を整えることがポイントです。 


  


 次に利き腕を前に伸ばします。 


 感じ取った魔力の流れを制御し、手に集中させます。 


 この時、手に集まった魔力を逃がさないように注意してください。 


 


 そして頭の中に魔法をイメージします。 


 初めは、基礎的な魔法であるウォーターボールを使用してみましょう。 


 水の弾を想像してみましょう。 


 脳の信号を頭から腕に送ってください。 


 すると次第に水弾が形成されて行きます。


  


 最後にそれを前方に向けて放ちます。 


 すると、あら不思議。 


 あなたの前には大きな水たまりが出来ているではありませんか。 


 


 これであなたも立派な魔法使いですね!!


 


 ---


 


 うん。  


 この本いい加減だな。 


 時折、語り口調になるのが妙にいらだたせる。


  


 とりあえずやってみるか。 


 当たって砕けろだ。 


 


 


 目をつむり意識を集中させる。 


 全身に血液とは別の、何かの流れが感じ取れる。 


 おそらくこれが魔力なのだろう。


  


 次は流れをコントロールする。 


 これは難しいな。


 


 ある程度魔力が溜まったら、すぐに全身に戻ってしまう。


  


 最初だし込める魔力は少しでいいか。 


 


 次は魔法を想像してみる。 


 頭のなかで水の流れをイメージし、徐々に水弾を形作っていく。 


 水、水、水、水、水、水……。


 体から魔力が吸い取られていくのを感じた。


 


  


 パッと目を開いた。


 


 「うおぉぉ」


 


 手のひらには大きいスイカのような水弾が……


 


 なかった。


 


 


 「あれ……」


 


 直径15mmほどのビー玉みたいな、飴玉みたいな小さい水弾が、ぽつんと手のひらに浮いているだけだった。


 


 


 思ったより小さいな。 


 


 落胆し、集中が切れた瞬間、


  


 「あ」


 


 水弾はバチャリと落ちて、地面を濡らした。


 


 ふぅ。


 最初はみなこんなもんなのか、俺に才能がないのか。


 だが、魔力不足による疲れは感じなかった。


 自分の魔力量はそこそこあるのだろうか。 


  


 


 考えても始まらない。


 毎日練習していこう。


 


 目の前の課題は魔力の流れの制御だ。 


 日々のルーティンに加えよう。


 


 


 ふと腕時計見た。


 時刻は午後4時過ぎ。


  


 夜はギルフさんと魔物討伐に行く予定だ。 


 あまり体力を使いすぎるのもよくないな。


 そろそろ帰って夜の準備でもするか。


 


 少し早いが今日はこれで切り上げた。

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