第12話 確かにそう聞きましたけどねぇ?


 同日 12:27


「これは終売商品で私が持っているのはこの空いている物とストック分2本です」

「じゃあこれ2本と…」

「次は期間限定品数量限定商品でしたがコストパフォーマンスがとても良い…」

「それも1本」

「これは昨日購入した角形瓶の白で───」

「これ2本」

「昨日購入した角形品の復刻モデルでアルコール度数が」

「あっ、それも1本」

 ………良いけどさぁ…私が言いだした訳ですし。

 でも、自分のストックがゴリゴリ減っていくのは悲しい…悲しい…

 市販はもうないからネットオークションを巡回してちょっと多めに補充しよう…保存問題もあるから酒屋さん系のアカウントもしくはケース売り中心に調べますかね。

 私はため息をつきながら箱にそれらを詰め込み、アキナさんに手渡した。

 おつまみに関しては…戸棚にしまっていたおつまみ類を全部持って行かれましたよ…ブ◯ボンさん、本当にありがとう!

「確かに。ではこれを受け取れ」

 そう言ってアキナさんが渡してきたのはワンショルダーバッグ?片方だけの肩掛け鞄だった。

「車3台分程度のものが入る鞄だ。受け取った時点で所有者登録は完了しているから問題はないぞ」

「ありがとうございます。これは…鞄の部分と紐の部分は分けられるようですね…成程、そうすれば自身で紐を調節できると」

「中々良い発想だろ?」

「これ、自分で長さを調節するのもそうですけど魔法の力で自動調節とかできないのでしょうか」

「んんっ?…できはするが…自分で調節した方が早くないか?」

 ファンタジー側に真顔で突っ込まれてしまった!?



 さて、龍神族の方々はとりあえず今日の所はお引き取り願い、我々は当初の予定通り買い出しに出た。

 酒屋さんや倉庫型店舗で飲食品などをまとめ買いです。

 まずは倉庫型店舗へ。

 いやぁ…あの災害があったのでみなさん買いに来ていますねぇ…申し訳ありませんが私もそこに混ざって買う事ができますよ。

 冷凍食品系や保存可能な物を買い込むのと同時にお酒も大量に購入する。

 4リッターウイスキーを16本とか普通ですよ、普通。

 4本で1ケースですし。

 …出る前に自分の物とは別にネットでも注文してありますが、ここでも買うんですか…まあ良いですが。

 どでかいカート2台、2往復して食料品や衣服を購入して次のお店へGo!

 妖精さん方にはお菓子を対価に移動時に自宅の方へ購入した物を転送してもらう。

 そうすれば色々と手間が省けますからね!


 …なお、最初の1店舗目で既に25万円は突破しています。

 4リットルウイスキーが1本平均7〜8000円としても、その横にお高めのものもあるから仕方ないですよね!買っちゃいますよね!

 ……って感じでアキナさんがドカドカ購入。

 後先考えず買っていると、制限かかっちゃいますよ?

 まあ現在金額ベースでおよそ1%程度ですが。

 妖精さん達は、考えるのをやめましょう。億単位ですし。

 さあ、次は酒屋さんのハシゴですよ!日本酒買いましょう!日本酒を!



 8月4日(同日) 12:51


 彼方は深夜だというのに先程からやけに攻撃的な発言が目立つ。

「私も一方的に言われたので分からないのです…はい。日本国内に契約者がいる可能性はありますが………っ!?それをした場合真偽を見抜く妖精達が此方に対して敵対行為を…」

 電話の向こうの一言に岸は固まった。

 とても呑める要求ではなかったからだ。

 おそらく日本国内に居るであろう契約者の引き渡し要求。

 犯罪者のような扱いでその契約者を拘束した場合彼女らがどう動くのか…

 恐怖しかなかった。

 しかし力関係のハッキリとした形だけの同盟国からの要求である。

 断るわけには…

 ふと、最悪の想定が岸の脳裏をよぎった。

「万が一、契約者引渡しの行動を開始し、妖精だけではなくドラゴンらが敵対行動を起こした際、合衆国側は責任を負ってくれますか?あちらはこちらの言い分は一切聞きませんよ?」

 今、我々にダモクレスの剣が突き立てられようとしている。

 そしてその最悪の想定を───

「へぇ、本当にそういう事をしてくるのね」

「!?」

 岸の背後で声がした。

「どこの国?私たちの契約者を害そうというのは。今電話しているんでしょ?」

 心臓が早鐘を打ち、耳の奥で血ゴウゴウと血管内を流れる音が聞こえる。

 極度の緊張で喉が渇き、脂汗が止まらない。

 電話の向こうでは大統領が怒鳴っているが、申し訳ない。

 貴方よりも此方が優先順位が高いのですよ…下手をすると日本が物理的に終わる可能性もある。

「言っておくけど、貴方達が喧嘩を売ったのよ?私達の契約者は竜族とも契約締結をしたの。つまり…その契約者を害するという事は竜族も敵に回すという事よ?あと、このやりとりは動画で撮っているから言い逃れできないわよ」

 やはりか!と思ったと同時に大統領側で悲鳴が上がった。

「彼方にも行ったみたいね。王城を落とすのが戦のセオリーだし、どうしようかしら?どうしたら良いと思う?竜族に対して核兵器…だっけ?あれが効くと思う?そしてソレを大人しく受けると思う?」

 震えが、止まらない。

 通話が途切れた。

「あらら、彼方は慌てて通話を切ったみたい。良かったわね?頷かなくて。彼方は説得が必要かもしれないけど、こちらは大丈夫よね?」

「…基本、こちらに危害を加えなければ、我々は君たちを害するつもりはない」

 なんとか絞り出すようにそう答えると妖精はニコリと笑う。

「結構。あなた方の法は私たちを守らないけれども私達を束縛できない。ソレがわかっていたら十分よ。余計なことをしたらどうなるか…分かるはずだし」

 それだけ言うと妖精は姿を消した。



 同日 15:17


 散財が過ぎやしませんかねぇ?

 業務食品のスーパーにも行き、酒屋にて最後の買物を終えたのですが…

 空にしてもらったトランクルームと後部座席にお酒がギッチリですわ。

 ついでにその酒屋さんに樽酒の注文をお願いしましたし。

 ニコニコ現金払いだったので相手はニコニコ。

 こちらは大出費でシオシオである。

「何かイベントでも行うんですか?」

 これだけの買物をした訳なのでお店の人もそんな風に聞いて来た。

「ええ、慰労懇親会を2回に分けて行うのですが、最終日は外部の方々を呼ぶので樽酒を使おうと思いまして…あっ、柄杓ってどこで売っていますか?」

 (私の)慰労と(妖精&竜族+αの)懇親会。

 間違ってはいないですよ?

「竹柄杓ですね。1本であればサービスいたしますよ!本荷樽酒の納期は2週間後になりますが宜しいでしょうか?」

「ええ。構いません。お店に届き次第電話いただければ幸いです」

 まあ、合計60万円分買ったらそらニコニコでしょうて。

 洋酒37万円、日本酒6万円、樽酒(予約)12万円、焼酎3万円分、おつまみ2万円分だ。

 そのうち洋酒22万円分おつまみ1万4千円分が自分の分なんだからそりゃあアキナさんニッコニコだよ…今日一日で竜族側は合計40万円分は購入していますしね…

 日本酒の半分は妖精の皆さん用ですけど。

 酒屋の人に見送られながら車を出す。

「これで里の連中にも少しは行き渡るよ」

 助手席を少し倒し、苦笑しながら言うアキナさん。

 …まあ、確かに。

 どれだけの人数がいるのか分かりませんけど、数百人いた場合は一人1本と考えると…ねぇ?

 おつまみも全然足りないでしょうし。

 そう考えたら妖精さん達も…ですね。

 まあ、所詮いち個人が出来る事はそう多くありません。

 今はこうして幾つかのお店をハシゴして大量買いを誤魔化していますが…そう遠くないタイミングでバレてしまうでしょう。

 それまでにはある程度の態勢は整えておきたいですが…

 ───一応、それぞれの人数を確認しておいた方が良いかもしれませんね。


 車を十数分走らせて自宅に着き、一息吐く。

「あっ、おかえりー」

「ただいま戻りました」

 ストッカーを開けてアイスを取り出しながら彼女が出迎えてくれた。

「あっ、そういえば別の国のお偉いさんがおじさんを捕まえるようにって言ってきてたから私は竜族とも契約していることを教えてあげたよ!

 まさか本当にそんな事言ってくるなんて思わなかったわ」

 私は、ですか…

「ありがとうございます。これで暫くは問題ありませんね」

 そう答えながらストッカーの中を見ると…魔法の鞄デッグ・ダンクが入っていた。


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