ジェロブ・ルネッサンス〜少年耽美主義〜
幻想歴史資料館@ナマオ
プロローグ-幸福と絶望の狭間で
ヘンリクさえ幸せならそれでいい――そう自分に言い聞かせてきた。
ヘンリクにたくさん友達ができて、二人だけの時間が減ったことも受け入れられた。むしろ成長を喜ばしく思っていた。
求められても、どれだけ可愛くても、あくまでもオレは先生として接してきた。オレはヘンリクの親ではないから、それは仕方ない。ヘンリクに「好き」と言ってもらえただけでも十分幸せだと、自分を納得させてきた。
でも、それで平気なわけがなかった。
オレはいつまでヘンリクといられる……?
最近、別れを意識するようになって、不意に辛くなることがある。
家に帰ったあと、帰り道でも、酷い時は仕事中にも突然涙が出てしまうことがある。
ヘンリクの成長を見守ることも、世界一可愛いあの顔を拝むことも、声を聴くことも、もうできなくなってしまうのだろうか……
今まで生きてきた中で、ヘンリクと過ごしたこの三年間が一番幸せだった。それももう終わりなのか……
今まで何十人と子供たちとの別れを経験してきたけれど、全然平気だった。学生時代の別れも、大好きだった母と離れ離れになった時も、泣きはしなかった。なのに――ヘンリクとの別れだけは、耐えられる自信がない。
これほど誰かから求められたことも今までなかったし、これほど魅力的な人に出会ったことも今までになかった。
ともに過ごした時間も、子供たちの中で一番長い。
きっとオレは、ヘンリクとともに幸せになりたかったんだ。先生としてではなく――
でもそれは、今の時代では許されないことだ。
この想いを打ち明けることさえ憚られる世の中だ。
この想いを抱いてしまった時点で、オレには絶望の道しか残されていない。
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