今宵、怪異をひとつ

恵喜どうこ

はじめに 

 現実ではありえないような不思議な話。


 それを人は怪異と言う。


 怪異と聞くと、大概の人が身の毛がよだつ怖いものを想像しがちだ。


 事実、私もそうだ。

 怪異と言えば怖い話。首筋がゾッとして、全身鳥肌。ぎゃー、怖い―! となるのが怪異。そうじゃなきゃ物足りない――などと不謹慎にも思ってしまうくらいにはホラーも怪談も大好きな人種である。


 そして、その好きが高じて今年はとうとう稲川淳二氏の怪談ナイトにも参加してきた。

 実に楽しかった。


 どう楽しかったかについては、またあらためて話すことにしても、なぜ楽しいと思えるかと言えば、それはあくまで対岸の火事だからこそである。

 自分には決して起こりえないものとして、ある意味、そういう世界を自分から切り離しているから楽しんでいられる。


 ただ、怪異を「現実ではありえない不思議な話」のこととして、怖い話だけにしぼらないのなら、そうも言っていられない。


 怪異はすぐそばで起こる。

 霊能力があろうとなかろうと、関係なく起こりうる。


 それをこれからお話していこう。


 ただ、これから話すことはあくまで「怪異」であって「怪談」ではない。

 身が凍るような「怖い話」を期待している方は、ここで回れ右をしてほしい。


 どうにも説明がつかない不可思議な話でしかないのだから。


 それでもいいと思った方は、どうぞこの先にお進みいただこう。


 それでは……今宵、怪異をひとつ。

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