プロローグ
君がいなくなる夢をみた。
場所はよくわからないけど、多分、日本のどこかだと思う。
誰もがいつかは必ず死ぬ……。後悔はしたくない……。
ネガティブなことばかり考えてしまう。
限られた時間の中で、何を重視すればいいのだろうか。
自分の目標や価値観に基づいて、本当に大切なことに時間を優先すればいい。
頭では分かっているけど、行動できない自分が嫌いでしょうがなかった——。
僕の名前は
自分の生き方に自信が持てない。
同調圧力に負けて、やりたいことができない日々が続いていた。
いつの日か、夢をみて現実逃避をするようになった。
また、同じ夢を見ていた。
君がいなくなる夢だ。
夢の中で、君は微笑んでいて、僕の心を温めてくれた。
しかし、次の瞬間——。時空が変わるのを体で感じた。
「ここはどこ……⁉」
見慣れた光景から一変して、真夏のジャングルの中にいた。
多分、海外だろう。何の根拠もないけど、確信した。
僕の数メートル先には憧れの人がいて、カメラを片手に動画を撮っていた。
「孝之くん、何してるの? 早くこっち来て。一緒に動画撮ろうよ!」
茂みに隠れながら「こっちこっち」と手招きしていた。
僕は慌てて、移動した。
「今回の旅、ハプニングだらけだったけど、やっぱり来て良かったね。あの目の前にいる生物。有名な珍獣だよ。動画で撮ろう。こりゃ、バズるな」
憧れの人は子供のようにはしゃぎながらカメラのレンズを珍獣に向けて、録画ボタンを押した。
この人は子供心を忘れていない。目がキラキラ宝石のように輝いている。
「最高ですね。この瞬間」
「ああ、最高だよ‼ 孝之と一緒に来て良かった……」
カメラの液晶モニターを見ていると、胸が熱くなり大粒の涙がこぼれた。そうだ……。努力をすれば、必ず夢は叶うんだ。どんな未来が待っていても、どんなに困難な道だとしても、この瞬間を感じるために僕は生まれてきたんだ。
彼と過ごす日々は、僕の人生の中で一番幸せな時間だった——。
余韻に浸りながら、二回瞬きをした。次の瞬間、現実の世界に戻された。
カーテンを開けて外を見ると、街は明るくなっていた。
「夢だったのか……」
重たい体にムチを打ちながら洗面所に向かい、顔を洗う。タオルで顔の水滴をとって、目の前にある鏡をみた。そこには『何者』にもなれていない自分がいた。
夢の中で、僕は日本を代表する動画クリエイターになっていた——。
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