冤罪で全てを失った男子高校生、美少女幼馴染によって救われる〜無実の罪が発覚し、クラスメイトが手のひらを返してきたが今更もう遅い〜
taki
第1話
俺、東雲透の高校生活は順風満帆とはいかないもののそれなりに幸せな日々だった。
サッカー部に所属しながら勉強に精を出す日々。
運動神経はあまり良くなく、部活では常に補欠で滅多に試合には出なかったが、勉強の方は学年で一桁の順位を取れるほどに出来た。
スポーツは出来ないが、真面目でかなり勉強ができる気さくなやつ。
それが俺の得ていた周囲からの評価だった。
彼女はいない。
小学校、中学校と一度も付き合ったことがなく、高校2年になった現在でも一度も異性と付き合った経験はなかった。
もちろん俺も思春期の男なので、そういうことに興味はあったのだが、とにかく部活と勉強で忙しく、自分から異性にアピールをしたり、告白したりする余裕はなかった。
そんな中、俺はある日突然、一人の女子から告白を受けた。
名前は如月姫花。
学年で一、二を争うほどに可愛いと言われている女子であり、正直告白された時は、何かの間違いだと思った。
「ずっと前から東雲くんが好きだったの…私と付き合ってくれないかな?」
「ど、どうして俺と…?」
放課後の屋上で思いを告げられた時、挙動不審になる俺に如月は照れくさそうに言った。
「私、東雲くんみたいに勉強とかスポーツとか一生懸命頑張ってる真面目な人が好きなの……いつも定期テストで10番以内に入っててすごいなって……だから、私と付き合ってください」
如月にそんなことを言われ、俺は今までの自分の努力が報われたような気がした。
俺は如月と付き合った。
如月とはそれまであまり話したこともなかったのだが、如月みたいな可愛い女子の告白を断るなんて当時の俺からしたら考えられなかった。
俺の周りの友人たちも俺たちのことを祝福してくれた。
「お、おめでとう……透…よかったね如月さんと付き合えて…」
「ああ、ありがとう理沙」
「ずっと彼女が欲しいって言ってたもんね……お似合いの二人だと思う。お幸せにね……あはは」
「ああ。理沙もいい彼氏が見つかるといいな」
「…っ」
「理沙?」
「私は……その……うん、そうだね…」
「…?」
そんな感じで幼馴染の七瀬理沙は俺と如月のことを祝福してくれて、二人でお幸せにと言ってくれた。
「おめでとう、透。如月さんと付き合ったんだって?羨ましいな」
「ありがとう、隼人。なんで俺が如月さんと付き合えたのかわからないけど、ふさわしい彼氏になれるように頑張るさ」
「肩の力ぬけよ。透は優しいし勉強もできるいいやつだよ。本当にお似合いカップルだ」
「お前にそう言ってもらえると自信になるよ」
理沙と同じで幼稚園からの幼馴染の日比谷隼人も俺たちのことをお似合いだと言ってくれた。
そんな感じで俺は周囲の後押しもあり、如月と付き合って、しばらくの間幸せな学生生活を送っていた。
「東雲のやつ……如月さんと付き合ってるらしいぜ」
「マジか?あいつうまくやったな」
「釣り合わなくね…?どうして如月さんはあんなやつを…」
もちろん楽しいことだけじゃなかった。
如月みたいな人気者と付き合えば、当然嫉妬する連中も出てくる。
何度か、俺の悪口を誰かが言っているという噂が俺の耳に届いたこともあった。
けれど俺はそんなことは気にしないようにしていた。
「気にしないで、東雲くん。私が大好きなのは東雲くんだけだから……周りのいうことなんて無視しよ?」
「おう。そうだな」
当の本人である如月が俺にこう言ってくれていたし……
「何かあれば俺らに相談しろよ」
「透。何か悩み事あったらいつでも私に言ってね、相談に乗るからね」
幼馴染の二人も、そんな感じで助け舟を出してくれた。
なので俺はたとえ周囲から多少嫉妬されたり悪口を言われたりしても、落ち込まず、如月との学生生活を楽しんでいた。
昼ごはんを一緒に食べたり、放課後一緒に買い物に行ったりする時間は、まさに俺にとって夢のようなひとときだった。
だが、そんな幸せな日々は唐突に終わりを告げた。
ある日、俺は放課後、如月に自宅に来ないかと誘われた。
「ねぇ…東雲くん…今日ね、私の家、両親いないから…」
「え…それって…」
もじもじして顔を赤らめながら誘ってきた如月の意図を理解できないほど俺は鈍感ではなかった。
俺はごくりと唾を飲み、如月に動揺を悟られまいとしながら頷いた。
「わ、わかった…遊びに行っていいかな?」
「うん」
そうして俺は如月の家にお邪魔することになった。
如月の家は、一軒家だったが、正直に言ってあまり綺麗な場所だとは言えなかった。
庭にはぼうぼうと雑草が茂っていて、家の壁も黒ずんでいたり、ところどころ朽ちて穴が空いたりしていた。
だが、その時の俺にはそんなことどうでもよかった。
「散らかってるけどどうぞ」
「お、おう」
俺は家の中に入り、2階にある如月の自室へと招かれた。
如月の部屋は、驚くほどに女の子っぽさがない、無機質な部屋で、ベッドと勉強机、洋服ダンス以外に無駄なものは全くなかった。
「それじゃあ…恥ずかしいけど…早速しちゃおっか……東雲くん、わかるよね?」
俺を部屋に招き入れた如月はそんなことを言って服を脱ぎ始めた。
そしてあっさりと俺の前で裸体を晒した。
「東雲くん……ここまできて逃げるなんてなしだよ?私に恥をかかせないで?」
そんなことを言いながら抱きついてきた如月に俺は我慢ができなかった。
結局俺はその日、如月と最後までした。
行為が終わり、二人でベッドに寝転がっている時、不意に如月が立ち上がった。
「如月?」
「…」
名前を呼んだ俺の呼びかけに答えず、如月は不意に自室の部屋と窓を開き、近所に響き渡るような大きな声で言った。
「きゃああああああ!!!誰か助けて!!!!」
「…!?」
「この人に、レイプされました!!!犯されました!!!誰か助けて!!!」
「如月!?何言ってんだ!?」
俺は飛び上がって驚いた。
行為は無理やりなどではなかった。
明らかに如月の方から誘ってきていた。
なのに如月は突然レイプなどと言い張って、近所に聞こえるような声で悲鳴をあげた。
「如月…?一体何を…?」
混乱して如月を見る俺に、如月はニヤリと笑った。
「姫花!!!大丈夫か!?」
間も無く階段をどんどんと駆け上がる音がして、男が部屋に入ってきた。
「お父さん助けて!!この人に犯された!!レイプされたの!!」
「なんだと!?」
部屋に入ってきたのは如月の父親だった。
如月が父親にレイプされた、犯されたと訴えると、彼は鬼のような形相で俺に近づいてきた。
「なにしやがんだてめぇ!!!」
そして俺の話を聞かずに、いきなり顔面を殴
ってきた。
「ぶっ!?」
「俺の娘をレイプしただと!?許せねぇ!!この犯罪者が!!」
俺は如月の父親から殴る蹴るの暴行を受けた。
俺が地面に倒れて如月の父親に暴力を振るわれている最中、如月は俺のことを見下ろして笑っていた。
その後、俺は如月の父親に服や荷物と一緒に裸のまま家の外へ放り出された。
近所の人が何事かと見物にやってくる中、俺は泣きながら着替えて走ってその場を後にした。
家に帰って如月に何度も電話して、どういうことかと問い詰めようかと思ったが、何度かけても如月に繋がらなかった。
「透!?その怪我大丈夫なの!?」
「お兄ちゃんどうしたの!?血が出てるよ!?」
家族は、ところどころに打撲や切り傷がある俺を心配したが、俺はちょっと喧嘩をしただけだと嘘をついた。
とても本当のことを誰かに正直に話せるような状態じゃなかった。
俺自身が、何が起こったのか整理がつかずに混乱していた。
「なんのつもりなんだあいつ…自分から誘ってきたくせに……どういうつもりか問い詰めてやる…」
そして、翌日。
俺が昨日のことはなんのつもりかと如月を問い詰める覚悟で学校にきてみたら、俺が如月をレイプしようとしたという噂が学校中に広まっていた。
「うわ、みて…犯罪者がいる…」
「東雲のやつ…如月をレイプしたらしいぞ…」
「最低だな東雲。いくら彼女だからって無理やりはないだろ…」
「如月さん可哀想……付き合ってても同意なしは男として最低だよね…」
「ち、ちが……」
俺は必死にレイプなんかしていないことを訴えた。
だが、如月は教室にいる間ずっと泣いていて皆にしたくなかったのに無理やりされたと訴えていた。
こういう時、世間が信じるのは決まって女の方だ。
男の主張など完璧に無視されるのだ。
「最低」
「如月さんに謝れ」
「土下座しろ東雲」
「警察に通報されないだけでもありがたいと思え」
結局俺は、犯罪者のレッテルを貼られ、完全に信用を失った。
皆が俺のことを避けるようになり、誰も俺と話してくれなくなった。
「ひぐ…えぐ…」
「泣いたふりやめろよ…!如月!お前どういうつもりでこんなことを……!」
俺は如月本人に何がしたいのか、話を聞こうと思ったが、周囲がそれを許さなかった。
「ちょっと、如月ちゃんに近づかないで!!」
「犯罪者!!如月ちゃんにこれ以上何かするなら警察に通報するよ!!!」
女子たちは常に如月の周りに陣取って、俺から如月を守るようにして決して近づけさせなかった。
結局、俺と如月はそのまま関係解消となり、俺は犯罪者のレッテルを貼られ、如月は被害者として皆に同情され庇われながら学校生活を送ることになった。
「透…お前をそんな子に育てたつもりはないぞ…」
「嘘でしょ透…私の息子が…レイプだなんて…」
「信じられないお兄ちゃん…ショックだよ。力の弱い女の子に無理やりするとか…」
「ち、ちがっ…聞いてくれ…俺は…」
如月が俺に着せた冤罪の噂は、どんどん広まり、PTAを通して家族にまで伝わった。
家族も学校の連中と同様に俺を犯罪者だと思い込み、腫れ物のように扱うようになった。
俺が必死に説得しようとしても全く聞く耳を持たなかった。
「なんでだよ…どうして誰も俺のことを信じてくれないんだよ…」
学校にも、家庭にも、味方はいなかった。
皆が俺のことを、女の子を同意なしに無理やりレイプした犯罪者だと思うようになった。
こうして順風満帆だった俺の人生は一気にどん底まで転げ落ちた。
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