第8話:回復食
「どう、美味しい、塩辛くない?」
「物凄く美味しい、お母さん作ってくれたラクレットの次に美味しい」
「うっふふふふふ、最高の誉め言葉よ」
お世辞抜きに本当に美味しい!
少し酸味が強くて硬いライ麦パンに、焼いて柔らかくなったハードタイプに山羊チーズの風味と塩味が凄く合っている!
前世もそうだったが、歯応えのある食べ物が大好きだ。
ライ麦パンがこんなに美味しとは思ってもいなかった。
これなら幾らでも食べ続けられる。
「さっき窓を開けて外を見させてもらったけど、結構高い場所だね」
「そうね、夏場だから放牧に上がっているのよ、冬前には谷の村の戻るんだけどね」
「村の方には教会が有るのかい?」
「いいえ、無いわよ、谷の村も小さいから、それに貧乏だし」
「やっぱり、貧乏な村に来るような聖職者がいないんだね」
「そうね、そう言えばそうだけど、それが普通じゃない。
聖職者の方々だって、豊かな暮らしをしたいわよ
それに、聖職者の方がどうあろうと、私が誓いを立てたのは唯一神だし」
サラは本当に優しい性格をしている、何としても腐れ外道から守ってあげたい。
僕も見た目は13歳だけど、実年齢は前世で90歳、通算したら103歳だから、サラは守ってあげたい曾孫や玄孫のような年齢になる。
「そうかもしれないけれど、それが行き過ぎるととんでもない事になる。
僕は行商をしているから、色んな噂を聞くんだ。
聖職者の中には、ミサや天与の儀式に来た少女を襲う者がいるらしい」
「エッエエエエ、そんな噂有るの、信じられない?」
「実際に見たわけではないから、絶対とは言わないけれど、気をつけた方が良い。
お父さんとお母さんに、近くの教会にいる聖職者の評判を聞いた方が良い」
「う~ん、その方が良いのかなぁ~
唯一神に約束したから、心配いらないと思うんだけどなぁ~」
「サラ、僕も唯一神と約束していたけれど、盗賊に襲われて死にかけた。
唯一神も人間の数が多過ぎて見損ねる事があるようだよ」
「ああ、なるほどね、確かに唯一神でも世界中の人間を見守るのは大変よね。
だからかぁ、それなら分かるわ、お父さんとお母さんに聞いてみる。
もう用事がないなら家の仕事をしたいんだけど?」
「ああ、ありがとう、もう大丈夫だよ」
サラは僕の看病だけでなく家の仕事もしているようだ。
牛を飼えずに山羊を飼っている事や、白パンでも黒パンでもなく、ライ麦パンを食べているのだから、貧乏だと言う話は本当なのだろう。
看病してくれたお礼に、たくさんの牛を渡しても良いのだが、サラの家が使える放牧地が荒れた狭い場所なら、現金で渡した方が良いし、悩むな。
それに、お礼を渡し過ぎると悪い奴に狙われる可能性もある、本当に悩む。
などと考えながら、魔力を増やす方法を色々と試す。
東洋医学の経絡と経穴を試して、物凄く魔力を増やすことができた。
インド医学、アーユルヴェーダのチャクラはほぼ経絡の督脈だ。
チャクラに魔力を貯める事も成功した。
8つのチャクラはライトノベルで読んだ魔力器官のように魔力を貯められる。
魔力を作るには元となる物が必要なようで、食べたばかりなのに物凄くお腹が空いてしまった。
もう少し考えてやればよかったと反省したが、今更どうしようもない。
あっ、そうだ、盗賊王スキルで地中から栄養を盗めないだろうか?
食料品の形では盗めなくても、僕が覚えている元素記号の状態ならできるか?
もしそれで、使う魔力よりも集めた栄養素で作れる魔力農法が多いなら、何も食べなくても魔力を増やしていける。
流石に身体を維持するのに必要な栄養素を全て集めるのは不可能だけど、元素記号を覚えている果糖、フルクトースC6H12O6なら集められそう。
「スティール・フルクトース」
「スティール・C6H12O6」
「スティール・ブドウ糖」
「スティール・グルコース」
「スティール・ C6H12O6」
あっという間に、サラが置いて行ってくれたコップ一杯にブドウ糖が溜まる。
それを飲んで低血糖症状から回復する。
色々と試したせいか、身体内部の恒常性、ホメオスターシスが手に取るように良く分かる。
フルクトースを食べた事で血糖値が上がっている。
魔力を作るのに使わなければ、脂肪に変えて肝臓に蓄えられるだけだ。
脂肪肝にはなりたくないから、余分な脂肪は全部魔力に変換する。
作ったフルクトースを全部魔力に変えてみて、無限に魔力を増やせるのか確かめてみたが……最高だ、魔力だけなら無限に増やせる!
不足している栄養素で元素記号を覚えているのは限られるが、何もしないよりは少しでもやった方がマシだ。
「スティール・ビタミンC」
「スティール・アスコルビン・アシド」
「スティール・C6H8O6」
「スティール・ビタミンA」
「スティール・レチノイン・アシド」
「スティール・ C20H28O2」
「スティール・ビタミンB1」
「スティール・サイアミン」
「スティール・ C12H17N4OS」
身体の恒常性を維持するのに必要な栄養素、ビタミンは補充できた。
カロリーも十分だし、魔力もどんどん蓄えられていく。
盗賊王スキルがもし僕の思っている通りなら、無敵の強さを手に入れた事になる。
確認するためには、何かを殺さないといけない。
あいつらなら無慈悲に殺せるが、他人の家畜を殺す事はできない。
害獣の狼なら殺しても心は痛まないが、万が一の事があるといけない。
僕を傷つける心配のない相手で確かめたい。
ちょうど良い大きさの虫がいればいいのだが、どこかにいないだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます