忘れた事を忘れる認知症の爺さんは、面白い?

蘇 陶華

第1話 死んで本望

僕、桜庭 優太。中学2年生。多感な年齢。運動よりもパソコンが好き。ゲームとかアニメも好きな、オタクな中学生。本当は、学校なんて行かないで、一日中、パソコンと向かい合っていたいけど、公務員の親父が五月蝿いので、人並みに学校に行って、苦手な運動に精を出している。部活。渋々、行っている。これは、棒の仮の姿。得意ではない運動だけど、運動部に属していた方が、進学にいいという親父の持論で、バドミントン部に属している。レギュラーにはなれず、当然だよな。補欠止まり。バドミントンのラケットは、少し、良いものを買ってもらっていただけに、肩身が狭い。

「いいよなー優太は」

親友の翔太が、よく言う。僕から見たら、翔太の方が、運動神経もいいし、学力も、僕より上なんだから、僕の何が、いいのか、わからないけど、口癖の様に言う。

「なんでだよ」

僕が言うと、決まって

「親父さんが公務員だろ」

そう言う。自営業の翔太の家の方が、羨ましいと思う事が、多くあるのに、僕の事を羨むのは、翔太くらいだ。

「知ってて、言うなよ」

人が、羨むようないい環境なのか?僕の家は?

「爺さんがいるし」

僕が意味深に言うと、翔太が笑う。

「楽しい爺さんじゃないか?」

「どこがだよ」

僕は言い返した。うちの爺さん。昔は、ものすごーく厳しい人だった。親父と同じ公務員で、最終的には、かなり上まで、上り詰めた人なんだけど、定年を迎えたあたりから、壊れてしまった。世間で言う認知症になってしまったのだ。認定は、介護2。厳しくて、怖かった人は、なんとも、楽しい人になってしまった。

「穏やかだから、笑えるんだよ」

他人事だと、思って、翔太あ、言う。

「どこがだよ」

何もかもわからなくなった爺様は、真夏にも、ダウン着て出かけようとする。

「保育園行くぞ」

僕をみるとそう声をかける。爺様の頭の中は、僕が保育園の時のまま、止まっている。

「死んで本望」

真夏にダウン着て、出かける爺様に、婆様が、そう言う。

「いつか、熱中症で死んじゃうよ」

親愛する叔母に婆さんは、そう答える。

「好きな事やって、死ねるなら本望」

婆さんは、そう言うけど。毎日、いろんな不思議な事をしでかす爺様に呆れてそう言うんだな。これは、僕の爺様が、神様に近くなっていくまでの、日記である。

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