第7話『先代ボビーの墓参り』
やくもあやかし物語・2
007『先代ボビーの墓参り』
ネルが入って、うちの女子は8人になった。
あ、聴講生の詩(ことは)さんを入れると9人ね。
マシになったとはいえ、もともとコミュ障のわたしは全員とは仲良くなれていない。
ちなみに、女子のクラスメートは以下の通り。
アーデルハイド・クロイセン みんなからハイジと呼ばれてる活発な子。
アイン・シュタインベルグ アインシュタインとは関係ないらしいけど、頭は良さそう。
アンナ・ハーマスティン どんな? そんな? あんな? まだよく分からない。
オリビア・トンプソン 良家のお嬢さん まだよく分からない
コーネリア・ナサニエル ネル ノッポのルームメイト エルフ 気が合いそう
ベラ・グリフィス 天文台みたいな苗字 まだよく分からない
ヤクモ・コイズミ わたし
ロージー・エドワーズ バラみたいな名前 まだよく分からない
「ねえ、ボビーを見に行きません?」
言語学の授業が終わるとオリビアが声をかけてきた。
クラス一番の美人でお嬢のオリビアに声を掛けられて、ちょっとドギマギ。
「お、いくいく!」
わたしが返事する前にネルが割り込んできて、これにハイジが加わって四人で見に行くことになる。
言語学のあとはランチなので、いつもより早く食べて、ボビーの住家である衛兵詰所に向かう。
前にも言ったけど、学校は王宮の敷地の中にある。
宮殿と『王室管理』の札が掛かっていないところ、それから、森の奥と夜のヤマセン湖は立ち入り禁止。
衛兵詰所は、王宮正門脇の石造り。
「ちょっと入りにくいね」
鉄砲持った兵隊さんが等身大のフィギュアみたいに立っている。
「裏に周ってみましょう」
オリビアの意見で裏に周ると、ちょうどソフィー先生がボビーを引き連れて出てくるところだった。
「なんだ、お前たち?」
「えと……」
「「「ボビーを見に来ました!」」」
わたしが言い淀んでいると、三人が声を揃えて返事をする。
「そうか……ちょうどいい、これから先代ボビーの墓参りに行くところだ。ネルとオリビアは免許を持っていたな?」
「「ハイ」」
「お前たちは、向こうのカートに乗って付いてこい」
「「「「ハイ!」」」」
ウィーーン
あれ?
ソフィー先生のカートは回れ右して宮殿の方に進んで行く。
「いったん降りろ」
宮殿の前に付いて、下りるように言われる。
「アテーンション!」
いきなり号令を掛けられ、条件反射で気を付けする。
え?
なんと、宮殿の正面玄関から王女と聴講生の詩(ことは)さんが出てきた。
「あら、あなたたちも来てくれたんだ(^▽^)」
満面の笑顔で喜んでくださる王女さま。
詩さんは侍従さんに車いすを押してもらっていたんだけど、一言告げると侍従さんは、こちらに会釈して行ってしまった。
これは、代わりにお世話しろということだ。
ちょっと緊張して詩さんの方に足を向ける。
「「あ、大丈夫よ」」
王女と詩さんもハモって、みんなでクスクス笑う。
控え目だったけど、ソフィー先生が笑うところを始めて見たよ。
もう一台のカートにはリフトが付いていて、あっという間に準備が整う。
ワン!
ボビーが一声あげて、二台のカートはお墓参りに出発したよ。
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます