共有型経済の導入を阻む壁
今ある資本主義から、共有型経済に移行する。そのためには、3つのハードルをクリアしなければならない。その3つとは、政治的ハードル、社会的ハードル、技術的ハードルを指す。では、それぞれのハードルについて説明する。
まず、政治的ハードル。これに関しては、大体の想像がつくだろう。政治という
もし、難しいようなら、地元議員への相談という形で、さりげなく話してみることから始めてみるのも良いかもしれない。そんなことして、何の意味があるのと思う人もいるに違いない。だが、共有型経済の実現を強く願う政治家が、1人でも多くいた方が心強いし、実現可能性もグッと高まるはずだ。
次に、社会的ハードル。言い換えるなら、全ての社会階層に受け入れられるための社会的な問題だ。そのためには、あらゆる階層の人々に対して、積極的な働きかけを行い、理解を得なければならない。そうして、人々の属する社会階層によっても、理解の得やすさは違う。当然、最も理解を得やすい社会階層は、貧困層ではないかだろうか。貧困層は、常にギリギリの生活を送っているため、新しい経済システムになっても失うものが少ない。それゆえ、恩恵の方が大きいのでは考える貧困層が、今ある貧困から脱するために、共有型経済に賛成する確率は低くはない。
逆に、最も理解を得にくいのは、資本主義で得た既得権益で生活しているような富裕層だ。彼らは、新しい経済システムである共有型経済に反対し、自身の影響力を駆使して、そのデメリットを多くの人々に知ってもらおうとする。では、なぜ富裕層が共有型経済に反対してくることが予想されるのか。その理由は恐れだ。豊かな生活を送ってきたがために、共有型経済に移行したら、それまでの生活を維持できなくなってしまう。
確かに一理ある。だが、共有型経済には、その心配を払拭できるくらいのメリットもあることを忘れないでほしい。それは、モノの大量共有だ。共有型経済は、一部のモノを除いた私有財産を全面的に禁止する代わりに、共有という手段により、どんなものでも決められた期間だけ、限定的に所有することが出来る。したがって、限定所有している間に、経済活動を行い、その分の見返りをお金ではなく、共有ポイントという形でもらうことで、より多くのモノを共有し、それまでとあまり変わらない生活を過ごすことが、最終的には可能になると私は考えている。
そして、貧困層と富裕層の中間に位置する社会階層が、中間層であることは誰もが知っている事実だが、この中間層は、私からみて最も予想がしづらい。おそらく、いや、もしかしたらという曖昧な推測になってしまうが、無関心、どちらでもいい、現状維持などの、賛成とも反対とも言えないような反応を中間層は取ってきそうな気がしてならない。
最後に、技術的ハードル。これは、返済ポイントのほか、共有ポイントという仕組みや、運用の在り方を社会全体で統一し、時には、本人情報の照会を行うこともあるため、ハードルを無くすには、かなりの労力がいる。まず、共有型経済では、取引をしたかどうかの言い合いを防止するため、ポイントを使った共有取引は、全て、個人を特定できるようなIDを使って行われる。
このIDというのも、どういうものにするのか幾つか候補はあるが、有力なものに絞れば、身体内蔵デバイス型、持ち運べるカード型、アクセス便利なアプリ/オンライン型の3つになると思う。加えて、紛失しない、盗みづらい等の点を考慮すれば、やはりとでもいうべきなのか、身体内蔵デバイス型が最有力になる。
もちろん、内臓場所を考えるなら、現実的には、手のひら、手の甲、手首辺りで調整することになりそうだが、問題は、生まれつき腕が無い人や、金属アレルギーのある人たちだ。彼らに対しては、身体内蔵デバイスをつけたくてもつけることが出来ない。いや、生まれつき腕が無い人であれば、義手次第で何とか解決する希望が見えてくると信じたい。
しかし、金属アレルギーの場合には、持ち運べるカード型を配るしかない。紛失を避けるために、カードは大きい方が良いだろう。極論、文庫本や、タブレットくらい大きくてもいい。後は、厚みも丈夫さも兼ね備えなければ、折れるなどしてすぐに使えなくなる。それでもなお、何度も無くすようであれば、本人の自己責任ということで、何らかの罰則付きでカードを再発行する手段も、当然、検討されなければならない。
また、共有型経済における共有取引は、全て電子上で決算・取引されるため、今までの紙幣や硬貨は不要になる。理由は、そうでなければ、逆に、誰がどんなモノを幾つ、どれくらいの期間、限定所有という形で共有しているのか、正確に把握することが出来ないからだ。だが、その共有という手段の裏を掻いて、取引の不正を試みる人間も少なからず存在する。だからこそ、共有型経済下で実行された共有取引を、オンライン上で誰でも閲覧できる仕組みを導入したい。
残念ではあるが、こうした仕組みがあっても、エラーやハッキング、不正により、実際の共有取引とは異なる内容が記録される確率もわずかにある。そこで、私は、その対策のために、国、非営利組織、地元クラブ(地元民たちによる、共有取引の記録のために作られる小さな団体)という3つの組織に、共有取引が整理した瞬間に、取引情報を同時発信し、同時に記録させることを提案する。というのも、相互的利益関係のない、3つの異なる場所に記録させれば、どこか1つの場所で問題が起きても、残り2つの場所で記録された取引情報を元に、修正を行うことが出来るからである。ちなみに、このようなことが起こった際は、修正があったことが確認できるように、修正前の取引情報を残すことが望ましく思われる。
では、身体内蔵デバイスで問題が起こったら?それも想定するべき重要な懸念事項ではあるが、具体的な解決方法は浮かばない。事前的な回避策として、予備コンピュータを入れておき、メインのコンピュータが制御不能になったとき、自動的に切り替えがなされるよう、プログラムしておくくらいか。
以上、3つのハードルについて、出来る限りの説明を行った。そのつもりではあるが、説明が上手く伝わっているか分からない上、共有型経済を導入する際のハードルがこれだけであるという確かな根拠も持ち合わせていない。どう頑張っても、正確に説明できないであろう金銭的ハードル以外で、他のハードルを挙げられる読者がいたら、ぜひ教えて欲しい。
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